33.帰ってきた仲間達。(竜の諸島より、ただいま)
とても久々主人公視点。最近影が薄すぎた。
自分でもアレ、主人公と疑問に思うくらい、構っていなかった。
それでもやっぱり、リンネが主人公です。
少ない人材を何とかやりくりしつつ、『人間』の包囲を切り抜けた、あの日。
あれから半年くらい、経っただろうか?
私達はあの日からずっと、疲れている。
絶え間なくというには間断に、偶にというには頻繁すぎる。
そんな中途半端で、しつこい『人間』達の襲撃を私達は何回も受けた。
その度に、最後に『人間』達が迎える結末は同じだったのだけれど。
毎回毎回、多くの『人間』が私達を押さえつけようと兵を向ける。
そしてその度に、彼等が迎える『死』というもの。
あまりに頻繁なそれが、私には無駄で意味がない様に思えた。
彼等だって生きていて、私達に敵対しているとはいえ、他種族とはいえ、『人』だ。
それが無駄に死んでいく様は、あまりにも虚しかった。
まあ、殺している側の私達が言えたことではないのだけれど。
この様な感傷こそ、無駄かもしれない。
私達が『人間』と敵対し、やって来た所業は『人間』にとっては悪夢だろう。
今更、私達が儚く思える義理ではない。
それでもあまりに多くの無駄死には、時に似合わない感傷をもたらすものだから。
なけなしの罪悪感と、敵にかけてやる持ち合わせのない筈の情けが疼く。
だからつまり、何が言いたいのかというと…
私達は、あまりに懲りない、厭きない、学習しない『人間』達の襲撃模様に、
本当に、心底、うんざりしていたのだ。
ある、晴れた日だった。
伝令からの連絡で、私達は今か今かと待っている。
疲れ切った私達が、心からの喜びを以て待っている者。
それは私達の仲間達。
地下妖精の元へ行っていた仲間達と、竜族の元へ行っていた仲間達の帰り。
それが偶然同じ日となり、私達の喜びも一入だ。
こんな時、アイツの存在を有難く思う。
アイツが浮かれまくっているお陰で、天気に心配せずに済む。
アイツは昔から、ここぞという時に晴れとかち合う晴れ男だった。
「あ、見えてきた!」
嬉しそうな、アイツの声。
指差す先は、何故か空の上。
--空の、上?
私はアイツが指差す先に視線をやり…叫んでいた。
「なんて帰り方してるの、あの人達!!」
先に帰ってきたのは、竜人族の諸島へ行っていた方達。
…非常識には定評のある、規格外三人組の内、二人が率いる一団だ。
彼等には私達に助力している竜人族も同行していたのだけれど…
竜人族は、龍の姿と人の姿の二つを持ち、使い分けて生活している。
そして彼等は今、遙かなる空の上。
……………。
とても、壮大な光景だった。
圧倒的上位の存在、龍。
それを取り巻くのは、薄く棚引く雲。
まるで羽衣の様に龍は纏い、ひらり、ひらりと風に靡く。
伝説の一節を見ている様な、そんな気分になってくる。
不思議で、大きくて、魅入られる光景。
その、龍だけだったなら。
(私は聞いたこともないし、知りもしないことなのだけど。)
(私の知らないどこかの世界、どこかの国の人々はアレを見ると連想するだろう。)
(でんでん太鼓とか、坊やとか、子守唄とか、日本昔話とか。)
(--そんな、感じだった。)
龍の姿にも個人差がある。
恐らく彼等の内で、最も大きな姿を持つ竜人族が変じたのだろう。
山を巻かんとする程の、大きな威容。
大きな大きな龍の背に、見慣れた仲間の姿があった。
その手に何故、でんでん太鼓を持っているのか。
それは私には分からないことだった。
取り敢えず、あまりの光景に何故か馬鹿らしくなって…
疲れ切っていた私は力が抜けて、ぐしゃりと潰れる様に倒れてしまった。
後にそれは羽根の人の悪ふざけだったと知るが、その意図は不明。
彼が何を知っているのか、それは私には知り得ないことだった。
今回、少しだけ悪ふざけしました。
後悔はしていません。




