表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不器用な爆炎使い~当たれは嘘。見てが本音。恋心で暴走する攻撃魔法~  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

第一話 不器用な爆炎使いは、今日も盾役を焦がす

「――『フレア・キャノン』!」


 ルナの叫びと共に、青白い炎の塊が唸りを上げて放たれた。巨大な魔物の右肩を狙ったはずの炎は、まるで磁石に引き寄せられるようにわずかに逸れ、前線で盾を構えていたアインの、腰のすぐ横の地面に着弾した。


 ドォンッ!


 土煙が舞い上がり、熱風がアインの黒髪を乱す。アインは体勢を崩したが、すぐに立ち直った。盾には少し焦げ跡がつき、腰のあたりから軽い熱気が立ち上っている。


(リーシャの心内: はい、本日二回目の「恋焦がれボム」いただきました。今回はターゲットから逸れ角が過去最小。さすがルナ、アインへの情熱が上がると精度が上がるわね )


「またかよ、ルナ!」


 アインが呆れたように叫ぶ。


 ルナは顔を真っ赤にして、杖を強く握りしめた。


「ご、ごめんなさい! アイン! 手が滑ったの! 熱いって言ったらごめんなさい!」


(ザックの心内: 「手が滑った」って、アインを撫でる時の言い訳かよ。ていうか、いつもは魔物に向かって「爆殺しろ!」とか言うくせに、アインに当たると途端に語尾が弱くなるの、ホントにわかりやすいんだよな、鈍ちんルナちゃん )


 魔物を退け、戦闘が一段落つくと、アインは焦げた盾を地面に立てかけた。


「はぁ……。お前の魔法、威力は十分すぎるほどあるんだから、せめてこっちには当てるなよな。さすがに全身焦げ臭い」


「う……。弁償する! 新しい盾を買うまで、私のパンをあげるから!」


 ルナはそう言って顔を俯かせた。


(アルクの心内: いや、ルナ。アインはパンじゃなくて、お前の素直な好意を待っているんだがな。そしてアイン、盾よりもその天然な頭をどうにかしろ。お前も大概だぞ )


「いや、いいよ。どうせまた当たるし」


 アインはそう言うと、ルナの前にしゃがみ込み、地面に落ちた杖を拾い上げた。


「……でもさ、ルナ」


 アインがふいに真面目な声を出した。


「なんで俺ら、お前を責めないんだと思う?」


「それは……私が必死に謝るから……?」


(ザックの心内: そうそう。謝罪が可愛いから許される……ってわけねーだろ! 違う! )


「それもあるけどさ」


 アインは少し笑いながら、杖の持ち手をルナに差し出した。


「お前の魔法、俺に当たる時だけ、ちょっとだけ威力が落ちてる気がするんだよな」


 ルナはハッとして顔を上げた。


(リーシャの心内: 「ちょっとだけ威力が落ちてる」じゃないわよ、アイン。あの爆炎、周囲の熱量を一瞬で愛の力で中和してるわよ。解析結果から言えば、あれは一種の特殊なバリアよ )


「だから、お前が俺に魔法を向ける時、本当の殺意を込めてないって、皆知ってるんだ」


(アルクの心内: 本当の殺意どころか、お前への好意が溢れて制御不能になっているだけなんだ。ああ、早く気づいてやれ、この鈍ちん二人組め )


 ルナはついに、アインの目を見ることができなくなり、叫んだ。


「だ、だまれ! ばか! そんなわけないでしょ! 私はあんたを! あんたのその鈍い頭を! 焼き尽くしてやりたいのよ!」


 ルナの全身から、今度は本物の怒りのような、しかしどこか甘いオレンジ色の炎が立ち上った。そして、手に持った杖を、魔物とは逆方向の空に向けて一閃した。


 炎の塊は遥か上空で爆発し、まるで巨大な花火のように散っていった。


 アインは爆音を聞きながら、その大きな花火を見上げ、そしてニヤリと笑った。


「ほらな。今日も俺には当たらなかった」


(ザックの心内: そうそう、花火だ、花火。夜空に打ち上がる「アイン大好き」花火だ。綺麗だね、ルナ )


(リーシャの心内: あの花火、いつもアインの頭上で爆発するのよね。……ルナの脳内では、アインの頭が魔物の代わりなのかしら )


 ルナは口をきつく結び、アインから顔を背けた。その心の中では、爆発した炎よりも激しい「好き」という熱がくすぶっていた。


 パーティーの誰もが、この不器用な爆炎使いが、盾役の彼を特別な目で見ており、誤射が制御不能な恋心の現れであることを知っている。そして、彼らがこの甘くて熱い痴話げんかを見るのが、遠征のささやかな楽しみであることを。


(――次こそは、ちゃんと魔物に当てるんだから……!)


 ルナはそう心に誓うが、次に魔物と対峙した際、ルナの攻撃魔法は、またしてもアインの足元を焦がすことになるのだった。そして、パーティーメンバーの心内ツッコミも、また再開されるのだった。



(一応、完)


※つづきも見たい方はこのままどうぞ!



ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ