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当然宿泊するのはあの古びたホテルと言うことになる。
少し気がかりはあったが、前回二日間泊まって何もなかったので、強い警戒心は私の中にはなかった。
現場で製品の不備を調べて改善策を見つけるだけなので、当初の予定では一泊だけの出張だった。
ところが問題点はほどなくして見つかったのだが、それを修正する手立てがすぐにはわからなかった。
わが社の製品は大型機械の一部なので、それだけ持ち帰っても不備の細かいところはわからない。
実際に機械に取り付けた状態で稼動させた上で見極める必要がある。
――一泊ですむのだろうか?
そう考えながらもう暗くなりつつある空を見ながら私はホテルに向かった。
泊まったが、前回と同じく何事もなかった。
次の日、まる一日かけてある程度は把握したが、ちゃんとした改善方法は見つからなかった。
私はもう一泊した。
食事をすませ風呂に入り、ビールを一杯飲んだ後に、私はベッドに入った。眠りつくまではすぐだった。
ふと目覚めた。
ベッドわきのスタンドをつけて時計を見ると、午前三時だった。
――どうしたんだろう?
不思議だった。
私は一度眠りにつくと、目覚ましが鳴るよりも前に起きるということが、皆無と言っていいからだ。
それなのにはっきりと目を覚ました。
とりあえずもう一度目を閉じて眠りにつこうとしたときに、聞こえてきた。
「く・る・し・い」