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彼とであって最初の一年目は彼にとって最悪だったかもしれない。

自分とはこういう人間だ。この国(ここ)は腐っている。と私も印象付ける事に必死だった。


「5日が限界ね」と笑い。かって気ままを演じて食事を抜いた事もある。

侍女がこそっと彼にごはんを渡しいていたようだが、咎める必要はないだろう。むしろ他人に取り入る力を身につけているようにも思えた。彼はずる賢い人間であった。


商人が下らない剣を私に進めれば、楽しそうに、稽古と言って彼を切りつけた。

どの剣のパターンは同じよ。覚えなさい。

そう何回も思いないがら、一度切り込んで距離をとる。その繰り返しをする。いつか彼と私がお互いに剣を向ける時、体が私を覚えていれるよに。瞬時に反応できるように。


勉学については文字から教えるつもりだったが、彼は文字を知っていた。言葉遣いはあれだが、少しは教養のある家の子供だったのだろう。むち打ちか食事抜きか、脅せば私の課題をやる。

課題はできるだけ国の情勢がわかる物を選んだ。

知ってほしかった。この国の今を、改善の場所を。自分が王位を継ぐ頃に、この国を私は終わらせるつもりでいる。新しい国を早く作れるように、その時民の負担を減らせるように。今は学んで欲しかった。どうやら彼は最初は課題が好きではなかったようで、

「いやなら、家庭教師を誘惑して課題なくさせろよ…」とこぼした事もあった。


「ばかね」

お前のためよーー。とは言えずに

「私がやったと思う家庭教師を滑稽だと笑うためよ」と適当に理由をいった。




人間関係に明るかった彼だが、『私の玩具』というポジションを羨ましがる人はどうしてもいた。権力に弱く、媚を売る。卑しい…豚。

私が不在のときにたまにその豚どものストレス発散に付き合わされる事があった。

「ゼラニウム……お前。これどうしたの?」


「別に…」

と、目を反らす。男の矜持というやつか、それとも豚かばっているのか。馬鹿馬鹿し事ね。


「ふぅん。付き合いが下手ね」

打ち明ければ…いいのに。つい、訳なもなく思ってしまう。


「は、どこかの誰かににてんじゃねぇのか?」

「って!何すんだよ!!」


「口のきき方に気を付けたらどうかしら?ゼラニウム?」

一瞬現れた自分の感情に蓋をする事に徹していつものように、鞭を片手に笑う。


豚どもには早々に話をつけた。鞭を振るえば簡単に顔色を恐怖に染める。

やはり、彼とは、ゼラニウムとは違う。こちらに向ける目も、非難の(すなおな)声も。


「俺を守ったのか?」と、聞かれたときは、驚いた。すぐに目をそらし


「気のせいじゃないかしら?」と言った。

でも本当にそう。守った訳じゃない。守るなんておこがましい。こんな私は何も守れない。げんに何も解決していない。暴力で、言葉で、恐怖で私のものにてを出すなとつたえただけ。


「嘘…下手だな…」

嘘なんかじゃない。守ってなんか……これはそう、高慢な王女様の高慢な贔屓。

気がつくと。彼の落とした言葉に勝手に言い訳していた。





時には彼の地雷を早々に踏み抜く事もある。

どうにも、その一見以来、彼が私の中に尊敬すべき所を見つけたらしく。たまにじっと見つめるところがあった。

このままでは前と同じ、彼には私に絶望して欲しいーー。

何を話せば恨んでくれる?

彼にとって大事なものは?


それが彼にとって家族の事であった。


「お前のその態度、似ているわね。私たちに歯向かい、おめおめ殺されていった。お前の家族たちに。逃げ延びた長男は捕まって私の所にいるなんて、死んだ家族も浮かばれないわね」

家畜に支配される世の中を、勇敢にも正しくしようとした家族。しかし、家畜の数があまりにも多すぎ、喰われてしまうという末路を彼の家族はたどっていた。


「ーーっつーー」

彼の瞳の色が一瞬濁る

「てめぇにはわかんねぇだろうなっ。愛されもしねぇ、守ってもらえらもしねぇ!なんのために俺がここで生きてるか。どれだけ屈辱でも、あいつらに守ってもらった物を簡単に捨てられるかよ!」

「お前とは背負ってるものがちげぇんだよ!」



「………………そうね。全然違うわ。貴方と私。嬉しいくらに」つい、笑ってしまった。

愛されて育って来たんだろう。守られて育ってきたんだろう。誰に支えられて生きていたのか、だから今、誰のために生きているのか、しっかりわかっている人間。そう感じられた。

もしかしたら、彼が最後に抱くのは復讐ではないかもしれない。彼の心の眩しさを、私1人の闇では包みきれないかもしれない。

でもきっと、彼は、正しくこの国を変えてくれるだろう。



「は。やっぱりあんたはそういう人間なんだよな」


「なんの事かしら?」


「本当はいいやつじゃあないかなって思った事もある」


「幻想を抱いちゃって。ばかね」

本当ばか。私は、この道しか、この方法しか知らない。そんな私に好意を向けるなんて間違ってる。


「そうだよな。あんたは父親そっくりだよ。高慢で、人の気持ちを何一つ考えられない。腐った世の頂点だ」


「ゼラニウム、お前よっぽど私の鞭が好きらしいわね」


父親そっくり……あぁなんだかそう言われるのにも慣れてしまった。自嘲ぎみに笑い。鞭をふるった。


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