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2年目になると彼も要領を学ぶ


剣は2発程度、上手に時間内にあたる。1年で彼は大分成長した。あまり剣をとって来なかったのか、最初は慌てている様子であったが、最近は私の踏み込むタイミングをよく見てる。目がついてくる。体がついてくる。そして、切られる時は、急所を外し、かする程度。しかし、確実に相手に切ったと思わせれるようにしていた。

もともと頭のいい子であったのだろう。ほとんど切られてないということを私にバレないように努めていた。その方が関係がうまくいくからと。

「今日は疲れたわ。これで休憩しましょ」

……そして、私もそれを知ってる事をバレないように努めていた。その方が…関係がうまくいくからと、私も思っていたから。



勉強にも貪欲だ。

私がいない時は自らも学んでいる時があった。何が彼を突き動かしたのかよくわからないが、彼は意欲的に知識を増やしていく。去年は少し教養がある程度に思っていなかったが、その判断は少し見謝っていたと思う。頭のいい子というのもあったし、彼は言われた事、学んだ事は忘れない子だった。

知識としては、いろいろあったんだろう。その知識を点と点であるまま放置していた。

そう気づいた私は、家庭教師との話では、点と点を思考という線で結ぶ、その方法を彼にもわかるように言葉に出したつもりだ。

そのためか、その力が徐々に身に付いてきている。たまに「ふーん。それであんな解答を…」という声が聞こえてくる。

あと5年くらいすれば、私の能力にも追い付くだろう。

彼の成長に、何故か自分の心も弾んだ。



ある日、彼の様子を見に行くと机に頭を突っ伏すして小さな寝息を立てていた。疲れたのであろう。この私に付き合ってるのだから、無理もない。

寝ている彼が、あまりにも無防備で、ほんのすこし、本当に少しだけ、触れてみたいと思った。

深紅の透けるような赤い髪。触ってみると柔らかい。そのままずっと触れていると彼の心に触れれるような気がしてくる。

つい、本音がこぼれる。ずっと思っていた事が溢れてしまった。

「いいわね……お前。きれいで……美しいわ……。私とお前とは何もかもが違う。……性別が違う。目の色も違う。髪の色も違う。背の高さも、生きた環境も違う。この体に……流れている血も。何より心のあり方が違う。

私はお前が眩しい。その心がうらやましい。こんな醜く汚れた環境で、どんなに傷つき虐げられたとしても、綺麗で穢れる事なく……ずっと澄んだ心を持っている。ほんとうに眩しくて……尊い。」

軽い布をゼラニウムにかけると、少し眉間にしわがよった。悪夢を見ているのだろうか。現実も悪夢、夢でも悪夢。かわいそうな子だ。


「ごめんなさい……私のせいで……。お前ばかりに、負担をかけてしまうわね。」本当はお前にこんなものを背負わせていいものかとも思う。

でも、こんな世はあってはならない。

私たちがお前たちを苦しめる……家畜が人を縛るなどあってはならないこと……



「………………私はうまく、終わらせれるかしら……」

いや、終わらせなければならない。どんな犠牲をしてでも。どれだけ自分の心を潰しても……例え後の身を差し出しても。



ーーー現状より最悪な当主などないのだからーーー




ふと、気づくと、いつからか、彼が起きはじめたのではないかと思われた。聞かれたのだろうか。しかし、反応はない。


「お前こそ、嘘……下手じゃない」

いつだったか言われた言葉を返し、その部屋を出る。


寝たふり。聞こえないふり、私の心に気づかないふりをするならその方がいい。ありがたい。

彼は私の感情を見つけないように努めている。必要以上にこちらに入ってこない。

頭のいい子。万が一私に嫌悪以外を向けたら自分がどうなるか、よくわかっている。彼は彼の目的のために、生きている。

私は私の目的のために彼を利用している。だからこのままでいい。


寂しくなんて、ない。味方なんて、いない。それが私。

アンジェリカ・マリーゴールド・レミリア。誰よりも孤独で、身勝手で、高慢な王女様。





………………そう納得したかった。

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