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正しい道の選び方

名称不明のダンジョン二階層。

階段を降りるとすぐにゴブリンの大群がいた。

「グャアアア!」

「ギャオオオ!」

「ちょっと多すぎ…『バーニングフレア』!」

「ナイスマコト!せいっ!」

自分の魔法で怯んだゴブリン達をナギサとマリがなぎ倒す。

数秒後にはゴブリンの死体の山ができる。

「今の出待ちじゃないか…?」

階段を降りた瞬間集まってきたが偶然にしては不自然だ。

しかもゴブリンの配置が整っていた。

前線には近接武器を持ったゴブリンとその後ろから弓ゴブリンが矢を撃ってくるといった配置だった。

ゴブリンにそんな知能があるのか…?

「マコトー?どうしたの考え事?」

「え?あ、ごめん。何でもないよ」

まぁ、今考えてもわからないことだしね。頭の隅に置いとく程度でいいか。


ダンジョンの構造は変わっているが休憩ポイント…つまりセーフゾーンの所は変わっていなかったので、そこで休憩することになった。

「…マコト。ちょっといい?」

マリが自分のことを呼んでいる。

「なに?」

「マコトの武器は…?」

「ああ武器はね…」

昨日リトと練習で武器は使えるけど、あの後少し話し合ってやっぱり武器は持たずにその場で調達した方がいいことにしたことをマリに説明したが。

「ううん…マコトの本来の武器は?ってこと」

「本来の武器?」

つまり妖術師に合う武器のこと?

「うーんわからないかな。っていうかその合った武器を持つと何か効果があるの?」

「うん。その職業に合った武器を装備すると本来の威力より威力が上がったりすることがある」

得意武器ってことかな?

「…でもそんなことが今の所ないんだよ」

「もしかして杖じゃない?」

そう。魔法使いでは常識の杖や魔導本など装備しても表示される分しか上がらない。

つまり得意武器ではないということだ。

「そう…でもその得意武器を装備するしないでかなり威力も変わるから」

「なるほど…ありがとう。今度もう少し探してみるよ…でもなんでこんなことを?」

「…マコトは獣人嫌い?」

「え?嫌いじゃないよ」

むしろ守ってあげたいくらい好きだよ!

「なら大丈夫かな……」

「?」

マリは被っていた帽子を脱ぐ。

「……!?まさかマリ…」

マリの頭に黄色の耳。


「獣人だったの…!?」


「うん。正確には狐の獣人」

衝撃の事実!!

マリは獣人だった!

しかも狐の獣人ときた!

「ってあれ?尻尾は?」

狐はモフモフ尻尾があるはずだが、マリには無い。

「…取られたの。差別の影響で」

「えっ……?」

取られた?差別の影響?

「本来獣人の尻尾は魔力の蓄積源でもある…でも私は取られたから魔法が使えないの」

「………」

自分は唖然とした。

獣人の尻尾が魔力の貯蔵庫ということは知らなかった。

でもそれを知っている獣人がこんな小さな女の子の尻尾を奪い、この世界で生きていくのを難しくしたのだ。

同じ種族である獣人の手によって。

「だから私は欠陥品…この力も私の力じゃなくて銃の━」

「そんなこと…ない」

思わず声が出た。でもこれだけは言わないといけない。

「欠陥品なのは自分だってそうだよ」

「マコトも…?」

これはもう言った方がいいか。

「実は…自分、元々この世界の住人じゃ無かったんだよ」

マリは驚いた顔をした。

「世界が…違う?」

「うん。自分は元々別の世界で生きてたんだ。死んじゃったけどね」

「………」

マリは静かに自分を見ている。自分は見られていると口が回らないが今は大丈夫だった。

「自分は前の世界ではこんな異常な力を持っていない。むしろ何もできないただの人間だった」

そう。ただの人間。獣人のように運動神経も良くないし、頭も悪かった。

その結果、自分は事故によって死亡した。

あの時、もう少し周りを見れば死なずに済んだかもしれない。

致命傷で済んだかもしれない。

でもそれはできなかった。

「あの世界では自分も欠陥品だと思っていた。でもマリはそうじゃない。現に今、マリの力はすごいんだ」

「すごい…?私の力が?」

「もしマリが自分だったら尻尾を取られた時点で自殺とか身を投げたりするけどマリはそんなことをしない」

自分の心は弱い。でもマリは強い。

取られても生きる道を選んだ。それが一番と判断した。

自分にはできない選択を。マリにしかできない選択を。

自分はマリを無意識に抱きしめる。


「マリは欠陥品じゃない。そんなこという奴は見る目がないだけ。気にしないで自分の道を進むんだ。正しいと思った道を」


「…………」

……って自分は何言ってるんだ!?

恥ずかしい!かなーり恥ずかしい!

後半もう何言ったか覚えてないよ!

「ん…ありがとうマコト。元気でた」

「え?あ、そう…良かった」

マリは帽子を被り直して、笑顔で二人の元に戻っていった。

「獣人の差別化…か」

一体誰がそんなことをしたのだろう…?

差化したって何も無いはずなのに。

いや戦争とかしないよ?めんどくなりそうだし。

「…あと本来の武器か」

妖術師には何が合うんだろう?

杖が駄目なら…メイス?いや近接は多分違うだろ…

「マコトさん!そろそろ行きましょうか!」

「わかったすぐ行く!」

とりあえず得意武器も保留。

まだ武器無くても余裕だしね!



「ギャオオオ!」

「またこいつら…しつこい!」

この先段々と敵の襲撃が多くなってきた。

といっても全部ゴブリンだが。

「ちっ…広範囲魔法がつかえればな…」

ここは洞窟でしかも狭い道なので広範囲魔法を撃ってもそこまで殲滅はできない。

しかもナギサやマリに当たる可能性だってある。

「ああ!もどかしい!ナギサ!マリ!『マジックジャベリン』! 」

自分の手中に魔力の槍が出現する。

何時ぞやの森で使った魔法ですね。

リロード時間が終わったのでもう一度使えるようになる。

ナギサとマリが下がったことを確認すると自分はすぐに槍を投げつける。

「くらえっ!」

閃光のように真っ直ぐ飛ぶ槍の魔法は、前方にいたゴブリン達を一網打尽にした。

でも時間が経つとまたゴブリンが湧いてでる。

このままじゃキリがない!

「このまま走っていこう!」

「ええ!わかったわ!」

自分を先頭に全員で走った。

新たにゴブリンが現れる。

「邪魔…『アサルトショット』!」

マリが連射できる技を使って現れたゴブリンを一掃する。

「…!マコトさん前!」

前を見ると何も無い。

でもこの感じは分かる。

「トラップだ!全員止まって!」

おそらくまたあの槍が出てくるトラップだろう。

自分はすぐにそこらの石を拾い投げる。

キュイィィィン

しかし発動したのは槍が飛び出るトラップではなく魔法陣が広範囲に展開するトラップだった。

「……!?魔法陣!?」

「大変!転移トラップです!」

「なっ!?ワープトラップ!?」

やばい!ギリギリ自分だけ魔法陣の中にいる!

急いで魔法陣の外に出ようとするが間に合わない!

まずい…!飛ばされ…

「…マコト!」

「…マリ一体何を!?」

自分の手を掴み、引いて自分と入違いをしてしまった。

「マリ!」

「マリさん!?」

次の瞬間マリの姿は消えた。

そしてその場に落ちるマリの銃とナイフ。

あれ?マリ…?

「グャオオオ!!」

「…うるさい黙れ!『インフェルノフレイム』!」

後ろから向かってきたゴブリン達を巨大な爆発で吹き飛ばす。

自分はすぐに落ちたものを拾う。

「この銃とナイフはマリの…」

「武器が解除されてしまう転移トラップです…!」

じゃマリは今丸腰で転移されたってことか!?

くそ!転移されるのが自分だったら良かったのに…!

もし転移先が魔物だらけだったら…

「マコトさん落ち着いて下さい!いくらマリさんでもすぐには死にません!」

そうだ。落ち着くんだ。焦ってはいけない。

まだマリは生きている!なら探すまで!

「気配探知…」

集中するんだ。探すんだマリの気配を。ゴブリンなどの魔物の気配とは違う気配を…!

数分後、全方位に範囲を展開して探すと一つだけ魔物とは違う気配を感じ取った。

「……………見つけた!」

場所は下の方!ってことは…

「第三層にマリさんがいます!」

「急ごう!『クイックステップ』!」

俊敏力を上げる魔法を使い、全力で走った。

マリのレベルは高いが武器がないと流石に無理だ。

しかもただでさえこのダンジョンは変わっている。

もしかしたら三層にはゴブリンとは別の強力な魔物がいるかもしれない!しかもマリは魔法が使えない!

マリ…生きててくれ━━!




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