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7つ星  作者: 水嶋
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ポラリス

あれ?野原さんって…?

「お前、全然上達しないなあ…」


「明日花の教え方が下手なんだろ…」


俺はハアハア息を切らしていた。

元々運動は得意で無い。


成り行きで決まった卓球弟子入りは続いていて毎週土曜日は明日香と遊んで…特訓を受けている。

まあ良い気晴らしと運動になっている。

ピンポン玉を追いかけてると色々忘れられる。



「私はプレイヤーだからなあ。教えるのは本来向いてない。」


「自覚あるんだな…」


「こうなったら意地でもユーキが私に一勝出来るようにするぞ。」


「目標を立てるのは良い事だね…」



目標…佳奈ちゃんもアトラクションのキャストになる目標持って頑張ってたなあ…


そのせいで…



「でもなあ、明日花。目標の為に無茶して自分を壊すなよ。」


「うーん、よく分からんが、分かった。」



つい明日花に佳奈ちゃんに言えなかった言葉を口に出していた。



「ユーキはまだ良い事は無いのか?」


「そうだなあ…まだこれと言って無いなあ」


「そうか…」



早く返して欲しいのかなあ?

まあ別に返しても良いんだけど、卓球も楽しくなって来てるし、もう少し持っとくか。






「さんねんめぇーのうわきぐらぁいーおおめにみぃーろぉーよぉー」


「慰謝料いくら請求来てるのかしらねー倉ちゃん。養育費はちゃんと払うのよ。」


ママは現実的だ。



今日も楽しい月1のスナック定例議会だ。




「相変わらず不倫ソングばっかですね倉ちゃん」


「そうねえ…私は一途だからよく分からないわ」


「へえ!野原さんは倉ちゃんとは対極ですねえ。」


「そうよー」



確か野原さんも離婚して独り身だった筈だ。


「この間倉ちゃんの恋愛遍歴武勇伝聞きました。」


「あはは。どこまで本当かしらねえあれ。」


「やっぱり野原さんも疑ってます?」


「流石に現実離れし過ぎよねえ」


「ですよねぇ。でも…」


「なあに?」


「ちょっと羨ましかったかなって。俺は過去の恋愛から抜け出せてないから。次ってスパッと切り替えられない。倉ちゃんにはウダウダ悩めって言われたけどさ。」


「そうねえ。私も切り替えは出来ないわね。多分一生別れた人を思い続けるわ」


「へー!野原さんは一途なんですねえ」


「そうよー!」


「でも…野原さんの別れた人は生きてるんですよね?」


「そうね。生きてると思うわ」


「俺は…死んじゃってるから…会いたくても会えない…」


「そうかあ。でもね。」


「?」


「好きでも会えない、会っちゃいけない人もいるのよ。私みたいに」


「どういう事だろ?不倫とか?」



野原さんは声を潜めて話し出した。


「そうじゃないの。悩めるユーキくんにはこっそり教えてあげるけど、誰にも言っちゃダメよ?」


「はい…?」


俺も小声になった。



「私はね、本当は野原じゃないの。」


「?」


「名前とか戸籍とか色々全部変えてるの」


「それって…何か指名手配されてるとかヤバい奴ですか?」


「私が何か犯罪を犯したとかじゃ無いの。」


「ふむ」


「元夫のね、職業は言えないんだけど…ちょっとヘマしちゃってね。家族の命を狙われる可能性があったから私と別れて私の戸籍を全部変えて別人になってるの」


「マジですか?」


「だからね、相手がいくら生きていてもね遭遇しても声もかけられないし、他人のフリをしなくちゃいけないの。いくら愛してる人でもね…」



倉ちゃんといい、野原さんといい…

一体何処までが本当なんだろう…

こんな特殊な人が集まる職場って…


「だからね、多分ユーキくんより私の方が辛いかも知れないわね。諦められないもの。多分一生この先誰も好きになれないと思う…」


「本当に好きだったんですね…」


「うふふ、そうよ。ドジでバカな夫だったけど…長生きはして欲しいわ」


「…」


「ユーキくんは今は辛くて悲しいかも知れない。でも私と違って愛した人はもう居ないの。いつかこの先素敵な人に出会って付き合っても何も気後れもしなくて良いし何も悪く無いのよ?」


「そうですか…」




まるで…



野原さんは北極星のように明るく力強く輝いていて俺の行くべき道を示してくれているようだった…


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