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35.風を切る音

 しかし、その時だった。


『ーーーいたぞ、聖女とその子供だ』


『やはり、噂通りーー』


『五感強化』をしている俺にだけ聞き取れる、微かな「聖女」「子供」という言葉。


はっと息を飲み辺りを見回すも、すぐに鼓笛隊の太鼓の音に声はかき消されてしまった。


(あの口ぶりは、聖女様とレオをどこからか見ている!)


一気に血の気の引いた俺は、すぐさまルイズ様の元へと駆け寄った。


「どこかから見られております、すぐに室内へ!」


「え、え?」


急な俺の剣幕に事態が飲み込めないのか、困惑するルイズ様。


「やーあ」


まだ外を見ていたいと気持ちがあるのか、近づいた俺の前髪をレオが握り引っ張る。


「いいから早くーー」


そこまで言った時、背後に殺意のある『音』が聞こえた。



ーーーーブンッ。



重さのある鋭利なものが、勢いよくこちらに飛んでくる時の音。


『五感強化』のおかげで騎士団長まで上り詰めた俺は、戦場や索敵中に何度も聞いてきた。


ナイフの投擲音だ。


「ーー危ない!」


伏せろとか、しゃがめとか、指示している暇はなかった。


ナイフは風を切って一直線にレオの頭に向かって飛んできていたのを、視界の端にとらえた時には、身を挺して守る他なかった。


ドスっ、と激しい振動が俺の左肩に走り、その後激痛が全身を駆け抜ける。


「ぐっ……!」


ナイフの刃は俺の肩にめり込み、溢れるように血が出て、地面に赤い痕を残す。


「きゃああぁ!!」


ルイズ様は驚いて叫び声を上げるが、敵からの追撃があるかもしれない俺は、


「早く……室内に……!」


と血濡れの手でレオとルイズ様を部屋の中へと引き込んだ。


窓を閉め、カーテンを引く。


「はあ……はあ……!」


 傷跡はドクドクと脈打ち、左肩が痛む。


 刺さっているのは狩猟用のベンズナイフだ。研がれた刃が、真っ直ぐに体に刺さっている。


「アーサーさん、すぐに治癒魔法をしますから……!」


「いえ、まずはここから逃げるのが先決です……」


 離宮の奥の部屋に、聖女と赤子がいるということまでばれてしまった今、この部屋に居続けることが危険だ。


(くそ、感謝祭で皇帝の護衛のために騎士団が出払っている、王宮の人出が手薄な日を狙ったか……!)


 離宮の周りには常に警備が敷かれているし、簡単に部屋には入ることはできない。


 しかし、年に一度の感謝祭は、城下町でのパレードのために人も出払っている。


 敵勢力は、聖女と皇帝の間に子供がいることに勘付き、離宮で匿っていることも視野に入れ、感謝祭のどさくさに紛れてレオを討とうとしていたとは。

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