食べさせたい人ですね
「あ、そろそろいいみたいです!」
と、喜んでいる場合じゃありません。香ばしい美味しそうな匂いがしてきました。焦げてしまわないうちにクルミを何とかしないといけません。
「冷めるまで少し待ちましょう。あの、その間、他に何が食べられるのか教えてもらってもいいですか?」
「ああ、そうだな。他にはこのあたりの森では聞かないな。違うところではあるかもしれないが」
え?
嘘でしょう?
動物とクルミだけとか……。
「あ、あの、栗は?栗はないですか?こういうとげとげのやつに入っているこういう」
メモ用紙に栗の絵を描きます。
「ああ、あるが食っては駄目だ。皮膚病になる」
え?
……あ。聞いたことがあります。クルミは生でも食べてもいいけれど、栗は生で食べると皮膚病の一種「かさをかく」らしいと。あくまでも、生で食べすぎるとっていう話……だと思うんですが。
あ。もしかして、本物の栗を1つ食べると、いくらでも魔石で栗が出せるようになるから、栗ばかり食べる生活とかが簡単にできちゃうってことでしょうか。季節を問わず栗が出せて食べ放題。そりゃ、食べすぎに簡単になりそうです。……ずいぶん皮膚病になった人もいたのかもしれません。
とすると、栗は皮膚病になる毒のある食べ物だ認定されても仕方がないのかもしれません……。違うんですよっ!
クルミは、割るのが大変なので食べすぎると言うことが少なかったとか?食べすぎるとクルミだって駄目ですよね?
「あ、だいぶ冷めたみたいですね」
煎った……ローストしたクルミを一つ手にとり口に入れます。
カリサクっとした食感に変わっています。
うまくローストできているみたいです。
「あ、そうでした」
米粒魔石を取り出し塩にします。
塩をまぶすともっと美味しいおつまみに……こほん。おやつになると思います。
塩をふりかけて軽くフライパンを振ります。
「どうぞ、グレイルさん」
グレイルさんがフライパンからクルミを一粒つまんで口に入れた。
その瞬間、グレイルさんの顔が恍惚と輝きます。
うわー、色気が駄々洩れです。美味しい物食べただけで、無駄に漏れてますっ。危険です、やっぱり追放案件なイケメンですっ。おまわりさーん、ここです、ここにいますっ。
って、馬鹿なことを考えないと、心臓撃ち抜かれて帰ってこれなくなりそうです。
「す……好きだ……」
突然の愛の告白ですっ。心臓ズッキューンなのです。
「俺、生で食べるより、こうして食べる方が好きだ」
……はい。分かっています。そうですそうです、クルミの話ですね。
「ローストして塩をかけると美味しいですよね……私も生で食べるよりも甘みも増すし香ばしくなるし、食感も軽くサクッとした感じがして好きです」
グレイルさんの手が止まりません。クルミをどんどん口に入れていきます。
「あっ」
すっかりフライパンに残ったクルミはあと2かけら。
「おっと、すまん。あまりうまくてな。ほら、食べろ」
グレイルさんがまたつまんだクルミを私の口元に持ってきました。
だーかーらー。グレイルさん、その行為がどれだけ私の心をもてあそぶか分かっていないですよね。ダメです。イケメンがしちゃだめです。好きでもない女の子にしちゃダメな奴です。その気がないって分かっていても、落ちちゃうやつです。
……無意識タラシ怖いです。ううう。た、食べますけども。
パクリ。
あー、美味しい。
グレイルさんがフライパンに残った最後のクルミをちらりと見ました。
注*栗も実は生で食べられるそうなのですが、食べ過ぎるとお腹壊したり肌に異常が出たりすることもあるのと、虫や虫の卵が入っている可能性があるらしく生食はしない方がよいそうです。あと、天津甘栗用の栗は日本で売ってる栗ご飯とかのあの栗じゃない品種だそうです。まじかー。ポップコーンのトウモロコシが爆裂種類という普通のトウモロコシと違うみたいな感じなのか……知らんかった……




