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第二次ソロモン海戦2

 戦艦扶桑からのオブジェクトと交戦開始の報告は平文でソロモン海を駆け抜けた。

 これまでの経験から、オブジェクトは各国艦艇や航空機の無線内容に関しこれを傍受していたとしても内容を理解していないと結論付けたため、暗号の使用を取りやめを、各国軍が情報を共有できるようにという配慮の下に、各国南太平洋派遣軍で履行することになったのだ。

 当然、ガダルカナルに居る南十字義勇軍でもリアルタイムでこの状況が把握されていた。

 ドイツ製の大型無線機が居並んだ義勇軍の通信指令室にロンメルとパットン、そしてハンナとテオドールが詰めていた。

「日本海軍は戦艦を餌にしてあれを釣る気なのか」

 パットンが驚いたという表情で言った。

「この戦法は地上戦のそれに近い。誘引し孤立させた敵を包囲する、初歩的だが確実な戦法だ」

 ロンメルが言った。

「でも、これは相手の火力を考慮すると、とんでもなく危険な作戦ね…」

 ハンナが呟いた直後だった。

「日本戦艦扶桑からの通信量が増えました。どうやら過剰に被弾し、速度が低下してきている模様です」

 一分も経たぬうちに次の報告が上がる。

「日本軍は扶桑の放棄と乗員脱出を艦長に指示し、次の戦艦日向にオブジェクトへの威嚇攻撃を命じました」

 四人は顔を見合わせ眉間にしわ寄せた。

「会敵から十五分足らずで、戦艦が一隻戦力外か…、化け物どもめ」

 パットンが忌々しそうに見えぬ空を見上げ吐き捨てる。

「港に居る高速輸送船に救助のための出撃を命じてください」

 ハンナがロンメルに要請した。

 ロンメルは頷く。

「わかった、まず一隻目を出動させる。残り二隻はこの先、別海域への出動の機会があると思われるので待機させるぞ」

「ええ、戦場はかなり広範になります。国際連盟側も救助船を用意しているでしょうが、おそらく私たちの船が今一番戦場に至近にある非武装船でしょう」

「ハンナさん、オブジェクトが非武装船を攻撃しないという話は信じていいのでしょうか」

 テオドールが不安そうに言った。

「わからない。でも、前回の海戦の後、クレーメンス社の測量船は上空を飛ぶオブジェクトを目撃してるのよ。彼らは救助を妨害しなかった。これに賭けるしか、犠牲を減らす方法は思いつかないわ」

 パットンが大きな手でハンナの肩を握って言った。

「やはり、君は司令官向きの性格だ。大胆だが、可能性で物事を判断し、指示を出せる。君の部下は、恵まれていると言えるな」

 すっと如何にも貴族的に一礼しながらハンナが答えた。

「ありがとうパットンさん」

「ジョージで構わんよ、私もハンナさんと呼ばせてもらう」

「じゃあ改めて、ジョージここは貴方とロンメル司令官に任せますわ。私とテオドールは行きます」

 ロンメルが、二人を振り返り怪訝そうに聞いた。

「行く? 何処へかね」

 ハンナは答えた。

「戦場を覗きにです」

 ロンメルとパットンは目を丸くして二人を見たが、テオドールが肩を竦めながら言った。

「言い出したら引きませんので、この人」

 そのまま二人は飛行場ではなく、船着き場の方に向かっていった。


 扶桑は合計二十ヶ所以上に被弾をし、そのうちの何か所かが船底まで貫通し浸水を起こした。

 戦艦の装甲は全部の面が均一ではない。重要な箇所だけが分厚いのが普通だ。そしてその装甲は、概ね真上からの攻撃には対応しきれていない。

 主砲や艦橋周辺、そして機関上部などは相応に厚い装甲を持っているが、改装で側部甲板に増設された空砲座群は、その直下が乗員船室という重要度の低い箇所なこともあり、水平装甲が薄かったのだ。

 威嚇攻撃を順次行っていった対空機関砲座が攻撃を受けると、対空砲座自身が防盾一枚の無蓋なこともあり一気に光線は艦内を貫き、吃水下の船底まで達してしまったのだ。

 防護隔壁を閉める為の乗員は数が不足していた。実は作戦に先立ち、戦闘に影響のない主計科などを中心に三百名ほどの乗員が下船していたのだ。

 決死隊であるから、戦闘による喪失を前提に乗員の数を絞ったのだ。

 だが、それが仇となり浸水は予想以上に早く艦の運命を決めてしまった。

「日向の対空砲が威嚇を開始しました」

 扶桑から一海里まで接近してきた二番手の誘導役である戦艦日向が、扶桑上空の三機のオブジェクトに向け発砲を開始したのが、傾いてきた艦橋からも確認できた。

「副長現在傾斜は?」

 岸に問われ副長は傾斜系を見た。

「左舷に十八度。限界にはまだ少し余裕ありますが、浸水防御は間に合いそうもありません」

 岸は頷くと、静かに命じた。

「機関に注水、沈没後の水蒸気爆発を避ける処置を行い、手すきの者から順次退艦を開始。救命艇を全部降ろせ」

 岸は戦艦扶桑の戦闘艦橋を囲む分厚い装甲板を平手で撫でながら呟いた。

「老体に鞭打ちがんばってくれたな、お別れだ扶桑よ」

 戦艦扶桑が沈没したのはそれからおよそ三十分後のことだった。


 戦艦日向は、扶桑が傾斜していくのを望見しながら対空戦闘、いや正確には対空威嚇を開始した。

「やはりあの光線の威力はとんでもないようだな」

 日向の艦長西村祥治大佐は、表情を強張らせながら言った。

「その光線、どうやらこっちに来るようです。構えてくださいよ艦長」

 砲術長の本間が西村に言った。

 先ほどの威嚇で、三機のオブジェクトは順次こちらに進路を変えてきており、そのうちの一機がかなり先行し接近していた。

 これまでの戦いで感覚的にオブジェクトが精密攻撃を仕掛けてくる間合いだと本間は判断したのだ。

 そして、一撃目が日向の甲板を襲った。

 基本戦術は扶桑の岸艦長がやったのと同じだったが、日向ではこれに一工夫加えていた。

 砲術長な指示で敵の反撃が予想される瞬間、僅かながら航海長が転舵を行っているのだ。

 でかい船である機敏な動きはできない、だが扶桑同様に速度を上げているので舵がわずかに動くと、舳先は数秒でもかなり動く。そのブレが、光線の命中箇所を数十センチだがずらさせた。

 高角砲の防盾は貫かれたが、砲自身は無傷であった。

 これを確認した一番高角砲の砲塔長が怒鳴った。

「もう一撃行けます!」

 この一発は大きな意味を持った。

 高角砲座は相応に防御力が高い。光線は艦内まで貫通していなかった。

 西村が大きく頷き時計を睨んだ。

「あと三十分頑張れば、航空隊の作戦が始動する。せいぜい足掻くぞ!」

 西村は指揮席のアームレストをがしっと掴み更に吠えた。

「機敏に動け! あの怪物どもに日本海軍の操艦術を見せつけてやれ!」

 西村の指揮の下、戦艦日向は勇戦した。

 しかし、オブジェクトによる被弾は避けようもなく、被害は確実に増えていく。

 だが、その犠牲の間に、日英両軍の飛行隊はその作戦準備を完成させていた。


「日向通信室よりヒ一番へ、間もなく誘引を霧島に受け継ぐ、送れ」

 上空を進む飛龍戦闘機隊指揮官機に戦艦日向からの無線が届いた。

「ヒ一番了解、奮戦に感謝する。将兵各位の無事を祈る」

 この通信は、間もなく日向も戦力外になると言う報告だ。

 西村は頑張った。扶桑よりも艦齢が新しかったことも粘れた原因かもしれなかったが、日向は三十五分間対オブジェクト誘導を続け、三機のオブジェクトをきっちり予定海域に運んで見せたのだ。

 敵は今、飛龍戦闘機隊からかなり近い位置にあった。

「戦闘機隊各位、これより分離作戦を開始する。目標は最右翼の一機、九番より順次攻撃を開始、誘導を始める」

 三井の指示が飛び、それまで組んでいた編隊がその陣形を組み替えた。

 三機の小隊単位だった編隊は、一機を残しぐっと高度を上げ、そこでほぼ横列になった。

 この時、遥か眼下では戦艦日向が右に大傾斜を始めていた。艦がもう沈没必至なのは確かだった。

 戦闘機隊のパイロットたちは無言で敬礼を送り、彼らの奮戦を讃えた。

「九番西沢、判っているな、霧島の攻撃開始が絶好の機会だぞ」

 三井の指示に一機先行していく九番機の西沢二飛曹は音声ではなくバンクで答えた。

 単独で接近した西沢の九六式艦戦は、オブジェクトの動きを観察し、その不規則な転進に惑わされないよう、ある程度の予測を頭の中で反芻し記憶していった。これは実戦経験のある西沢には、さほど難しいものではなかった。

 どちらに転進するかは運任せだが、オブジェクトがその飛行進路を変えるタイミング自体は一定の法則性を見つけ掴みつつあった。

 眼下の前方に戦艦霧島の姿が見えてきた。沈みつつある日向に比して小型だが、金剛型戦艦は速度が速い。この時霧島は実に二十九ノットもの速度で驀進してきていた。

 無線で西沢の耳に霧島の発砲開始の命令が届いた。

 瞬間的に西沢はスロットルを全開にして、オブジェクトに急接近を図った。

 曳光弾が西沢が狙ったオブジェクトから離れた二機の中間付近を駆け抜けた時、西沢機の機銃は一気に弾丸を撃ち出し始めていた。

 必中は最初から期していない。オブジェクトの飛行方向を変えさせるのが目的の射撃だ。

 機銃弾は、他の二機から目標を離れさせるためコントロールされていた。そして、この目論見にはまり目標のオブジェクトは一気に進路を九〇度曲げ、他の二機と逆方向に動いた。

「まだまだ!」

 西沢は機敏に機体をひねり、オブジェクトの尻に向け追撃の一弾を放つ。

 オブジェクトは更に退避行動をし、他の二機との距離は更に開いた。

「八番頼みます!」

 西沢の掛け声と同時に、上空から一機の九六式艦戦がダイブしてきた。誘導二番手を担う恩田一飛曹の機体だ。

 恩田機は巧みな旋回で、西沢機とオブジェクトの間に割り込み、そのままオブジェクトを追い立てるように短い射撃を何度か繰り返した。

 機銃弾をよける為、オブジェクトは細かく進路を変えるが、その行方はなんとか飛龍航空隊の意図した方角へと向かっていた。

 しかし、オブジェクトも攻撃されるがままではなかった。

 三番手に交代寸前に、恩田機は光線の直撃を受けた。

 光線は左の主翼付け根を薙いだ。この為、機体は空中分解してしまった。

 だが、恩田機の運命を見定めず三番手の吉岡上飛曹の戦闘機が攻撃を始める。

 この時上空に居た三井は、分解した機体から恩田が脱出し落下傘を開いたのを確認した。

 小さく安堵のため息を吐いてから、三井は無線に叫んだ。

「気を抜くな! イギリス海軍にバトンを渡すまで仕事は終わらんぞ!」

 飛龍戦闘機隊は必死の連携で、オブジェクトをどうにか罠の中へと誘いこんでいった。


 一方、残る二機のオブジェクトを引き付けた戦艦霧島も奮戦の最中であった。

「優速と言っても戦艦としてはというだけ、装甲は扶桑や日向に劣る。手薄い箇所に喰らってしまったら沈むのはかなり早いぞ。全員覚悟しておけ」

 自分自身で舵を握った霧島艦長の多田大佐は部下に吠えた。

 多田は日向の西村がやったのと同じように、発砲の瞬間に舵を切る方法でオブジェクトからの攻撃を微妙にずらし、攻撃力の温存を図った。

 しかし、それは艦の延命の為ではなかった。

 どうせ沈むなら…

 多田は、ある賭けに出ようとしていたのだ。

 ここまでに三基の連装高角砲が潰されていた。

 時計を睨みながら、多田は頃合いを図り命じた。

「山城に受け継ぎ準備を要請しろ」

 まだ艦は深刻な打撃を受けているように見えないのに、多田はこの命令を履行させた。

 多田は続けざまに命令を出す。

「右舷対空銃座、目標を統一。左側飛翔のオブジェクトに全門照準、事前調整の通り周囲散布界を形成する、発砲は合図を待て」

 忙しく舵輪を回しながら多田はなおも続ける。

「第一より第四主砲塔まで、両門発砲準備発令、本気で当てに行け」

 なんと多田は、霧島の三十六センチ砲八門をオブジェクトに向けて発砲しようとしているのだ。

 これまで、無駄と思い誰も試していない大口径砲での攻撃。命中すれば必殺弾になる可能性はある。

 しかし、あの俊敏な上に目標としては小さいオブジェクトに主砲弾をあてるのは、困難であるとしか表現できない。

 だが、どうせ沈むのなら試させてもらう。

 海軍軍人としての多田の意地が、この作戦を思い切らせたのだ。

 外れた瞬間、全力での反撃が来る。それも予見していた。

 だから…

「機関火を落とせ。総員上甲板!」

 なんと、まだ攻撃続行中に多田は、霧島の機関を停止させ、艦内の兵士全員に脱出を命じたのだ。

「おい、艦橋の要員も一緒だ。貴様らさっさと逃げ出す支度をしろ」

 多田は周囲の士官たちに命じる。その命令を下す多田も周囲の士官も既に救命胴衣を着けている。

「逃げるときは、艦長と一緒に高飛び込みしますよ」

 副長がにやっと笑って言った。

「同じく」

 航海長も頷いた。

「勝手にしろ、馬鹿どもが」

 巨大な戦艦は。その主機が停まっても慣性でかなりの速度を維持する。最大速度を維持していた霧島は、機関が停まってもまだ二十ノット以上の速度を出している。

 最後の一基になっていた高角砲が、オブジェクトの攻撃で砲身を切断されたのを目視した多田は、艦内放送のマイクに向かって絶叫した。

「戦艦霧島の最後の攻撃だ! 左側を飛ぶオブジェクトに主砲右砲戦開始、右舷全対空銃座弾幕形成!」

 戦艦の最大の武器である主砲が、立て続けに炎を吹き出し弾丸を中空に放った。同時に、右舷側の二十五ミリ機関砲と十三ミリ機関銃がオブジェクトの周囲に向かって発砲を始めた。包み込むことで、どちらに退避しても命中を可能にしようとしたのだ。

 オブジェクトに意識があるのかは人間には判断できない。

 しかし、この時のオブジェクトは明らかにこの攻撃を予想していなかった模様であった。

 オブジェクトが選択したのは、八発総ての主砲弾を回避するということ。

 それは一撃粉砕される危険を予知したと言えるが、その回避経路上には機銃座からの弾幕が引っ掛かっていた。

 オブジェクトを構成する塊の何か所からか黒い飛沫が飛んだ。

 命中弾の出た証拠だ。

 しかし、その直後に予想通りの事態は起きた。

 攻撃を仕掛けたのとは別の残り一機のオブジェクトが霧島に急接近し、一気に四本の光線を放った。

 光線は見事に四基の主砲塔を捉え、これを一瞬で無力化してしまった。

「蟷螂の斧か、だが爪痕は残してやったぞ」

 艦から脱出するため、艦橋の横に出た多田は、飛行するオブジェクトから切り離され落下していく二個の黒い塊を見ると、唇の端に笑みを浮かべ、周囲の部下に怒鳴った。

「砲弾が誘爆する前に脱出する! 一気に飛び込め! 全力で泳いで艦から離れろ!」

 自分も海に身を投じながら、多田は接近してくる最後の戦艦山城に向け心の中で叫んだ。

 後は頼んだよ、角田さん!

 霧島の乗員たちは、次々と脱出し、その五分後に起きた大爆発から間一髪大多数が逃れる事ができた。


 戦艦山城を指揮する角田覚治大佐は、丸田丸治の異名を取るほど感情を露わにしない冷静な指揮官だった。

 霧島の最期を目の前にしても、角田は表情に感情を乗せずに呟いた。

「多田さんらしいやり方だ。私には真似できんな。だが、自分流で戦うのなら、私には私のやり方がある」

 そう言うと角田は、時計と海図を交互に睨み指示を出した。

「後部四番高角砲より発砲開始。砲填要員の退路再確認、機敏に行動せよ」

 同時に航海長に命じた。

「発砲と同時に大転舵、面舵を取り続けろ」

 そして、角田は空を睨み二機のオブジェクトを見据えて告げた。

「戦艦山城、砲戦を開始。さあ、目いっぱい逃げるぞ」


 この頃、分離に成功したオブジェクトは英海軍戦闘機隊の網の中に誘い込まれていた。

 ここに誘導する間に、飛龍戦闘機隊は三機を撃墜されていたが、いずれも乗員の脱出を確認していた。

「ヒ一番より英海軍各機、健闘を祈る。飛龍戦闘機隊これより退避に移る」

 最後の追い込みをかけていた三井が、オブジェクトに向け英海軍の一番手となるグローリアス戦闘機隊の十二機が四方から挑んでいくのを見て無線に告げた。

「誘導感謝する。グローリアス隊これより一次攻撃に入る。無事帰還を祈る」

 最も困難と思われる作業を黙々と熟した飛龍戦闘機隊は、東に向け突進してきている筈の母艦に向け機首を翻した。

 オブジェクトは、突然三六〇度を英軍機に囲まれ、複雑な挙動を開始した。

「それは想定内だ」

 シーグラジエーダーを操るグローリアス戦闘機隊を率いるマーチン・コース大尉は、編隊に序列に従って劇を仕掛けるように命じた。

「まずは一ブロック、欲張るな、的を絞れ」

 飛龍戦闘機隊が誘引に成功したオブジェクトは、四個のブロックで構成された個体だった。これまで観測されたオブジェクトは平均五個のブロックで構成されてリうから、飛龍隊は良い獲物を引っ掛けてくれたと言えるだろう。破壊すべきブロックが少なければ、撃破の為の難易度は下がる。

 英海軍の複葉戦闘機隊は、複葉機だからこその軽快な旋回能力を生かし、単機で突入し特定のブロックにだけ狙いを定め攻撃を仕掛ける。

 相変わらずオブジェクトの回避能力は高いが、波状的に攻撃しているうちに、命中弾が出始めた。

 三回目の波状攻撃で、ついに決定的な命中弾を第二小隊の小隊長であるアッシュ中尉が放った。

 ブロックのコア付近に七・七ミリ弾が連続的に吸い込まれた。

 かなり大きな破片が砕け落ち、ついにオブジェクトはその一番端のブロックを切り離した。

 だが、この時点で戦闘機隊の殆どの機は弾切れ、そして反撃で五機が脱落していた。

「グローリアス戦闘機隊攻撃終了、ターゲットをカレージアス隊に引き継ぐ」

 隊長機の合図で、生き残った七機は母艦との会合予定海域に向け反転した。

 間髪を入れず、上空で旋回していたカレージアスのシーグラジエーター隊が急降下し、オブジェクトへの攻撃を続行した。

 とにかく徹底的に相手を削る。これが作戦の総てだ。オブジェクトを撃破できる、それを実証する為だけに編まれたのがこの作戦なのだ。

 既に戦艦三隻と戦闘機八機が犠牲になっているが、攻撃隊の士気は高い。

「かかれ!」

 カレージアス隊の攻撃も、その機動力に物を言わせオブジェクトの不規則な動きに良く喰らいついていた。

 戦闘は正念場を迎えようとしていた。

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