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勇者の能力

意識が戻ったあとの、鈴に対するほんのわずかな違和感。

働かない頭で『子どもに戻っていること』を理解したとき、反射的に叫んでしまった。

先程の説明でだいたいの頭の整理は出来たものの、その違和感はぬぐいきれない。


「小さいときのしーくん!やっぱり可愛いなぁ」


いつもの調子で、スマホで俺の写真を撮りまくっている鈴も。


「どうかしら?」

「小さい頃の郁は可愛かったんだよな。今は綺麗だけど」


「褒めてもらいたい」と緊張気味に微笑みながら問う風早屋に、相変わらずの女性キラーぶりを発揮する鏡宮も。


「桃花。小さいときから可愛かったんだな!」

「もぅ~、恥ずかしいよぉ。歩くんも可愛いねぇ」

「だろ?母さんに女装させられるぐらいだからな!結構自信あるのよーん」


苛つくほどのラブラブっぷりの姫野と藤下も。

……つーか藤下、お前も女装させられたの?

俺も鈴と母さんにさせられたわ。

地獄だった……。

イヤな思い出が甦ってダウン状態の俺も。


そんな俺達を見て苦笑いする永井も。

召喚されたメンバーは全員、子ども姿になっていた。


「スズさま、今お持ちになっている物は何ですの?」


ディーナさんの不思議そうな声に、俺から視線をずらした鈴がスマホを指差した。


「これ?」

「はい。薄い板に見えるのですが……素材は石?いえ、それにしては軽いようですね。減量の魔術でもかけてあるのかしら……」


鈴の返答を待つわけでは無く、1人ブツブツと呟くディーナさん。

その様子に鏡宮も制服のポケットからスマホを取り出す。

ちなみに、俺たちが着ていた制服も小さくなっていた。

どういう原理かは知らないけど、裾をズルズル引きずりながら歩くようなことにならなくて、本当によかった。


「これは、スマートフォンというものです」

「すまーとほん?」

「はい、スマートフォンです。俺達の世界での主な連絡手段として使われています」

「連絡手段?通信用魔術を使わないのかしら?」

「魔術なんてもの無かったですから」


その言葉に部屋中がざわめく。

っていっても、実際ざわめいたのは目の前にいる3人で、壁際にいるメイドさん(?)たちは何も言わない。言わないけど、そうとう驚いているのは伝わってきた。

それほどまでに魔術ってものは、この世界では使えるのが常識なのかもしれない。


「魔術がないとは……では、普段の生活はどうなさっておられるのですかな?」

「魔術の代わりに、私たちの世界には科学技術というものがあります」


ラディウスさんの問いに風早屋が答える。


「カガクギジュツですか……」

「ええ。ここにあるスマートフォンもその一種です」

「何と!カガクギジュツというものは素晴らしいものですな」

「はい」


どことなく誇らしげな風早屋。小さな体も相まって、とても可愛らしい。

フフンと自慢げな表情から一転、何かを思い出したらしい風早屋は思案気な表情になった。


「カオル様?」

「確かに、科学技術は素晴らしいものです。けれど、この世界では無意味……とまでは言いませんが、それほど役には立たないでしょう。外には魔物がいて、私たちが戦う相手は魔術を使うんですよね?」

「やっぱり戦うなんて怖いよぉ」

「大丈夫だって!何かあったら俺が絶対に守ってやる!」

「歩くん……」

「桃花……」


難しい顔をする風早屋の側で、姫野と藤下は相変わらずイチャついている。なんというか、これで付き合っていることに鈴から聞くまで気づかなかった俺って……。

自分の観察力のなさに少し愕然としながら返事を待つ。

そんな2人を綺麗にスルーして風早屋を見つめたラディウスさんは、静かに微笑んだ。


「ご安心ください。のちほど確認していただきますが、勇者としてこちらに呼び出された方々には、何らかの特別能力が備わっておりますので」

「そうなの……」

「よかった……」


明らかにほっとした様子の風早屋と永井の間で鏡宮が音をたてて立ち上がる。


「本当か!?」

「ええ」

「マジで!?よっしゃぁ!」

「すごぉい!」


姫野と藤下が手を取り合ってクルクルと回る。

……正直いってうざい。


「やったね、しーくん」

「あぁ、やっぱりあるか無いかで大きく変わるだろうし心強いな」


2人の存在を視界から消し去り、鈴と話す。

それぞれの反応を見せる俺たちを眺めたラディウスさんが再び口を開いた。


「先程申しました通り、皆様が子どもの姿にお戻りになったのは、失敗したのではなく神託にあったからです」

「神託に?」

「ええ。あなた方を子どもに戻してお呼びするように、と」

「……子どもの方が成長が早いから……ですか」

「はい。ヴァミア様はそう仰っていました。流石ですね」


セイナーレさんが頷くついでに褒める。……この人たちは、ことあるごとに褒めないと気がすまないわけ?


「当然、何も教えずに道具と仲間だけ紹介して放り出すなんて真似、致すつもりは毛頭ございません」


当たり前だろ、恐ろしいこと言うな!

こっそりと心の中で突っ込む。

ただでさえ召喚なんて意味わかんないことしてんのに、そんなことされたら俺は多分怒りと根性だけで時空を飛べるだろう。


「あなた方には、再び成長し成人するまで……場合によりその後も、魔術、戦闘、座学の3つ全てに通じる我が国最高の教師を付けましょう。彼と共に学び、成長していただければと。恐らくあなた方の力は大変危険だと思われます。その力との向き合い方を探していってください」


なるほどねー。

つーか、俺達の力が危険だから向き合いかたを探せって……何かムカつくな。結局、俺達任せって感じで。今まで魔術とか付き合いなかったのに勝手すぎね?

いや、でも先生つけてくれるっつってんだから、そうでもない……のかな?

複雑な気分でいると、コトンという音と共に、目の前に大人の拳2つ分ぐらいの大きさの水晶が置かれた。


「それでは早速あなた方の能力を計測させて頂きます。今お配りした水晶に手を翳してください」


言われるがままに水晶に手をかざすと、赤のような紫のような青のような、不思議で綺麗な色に染まった。

それに見惚れていると、徐々に水晶が縮小されて1枚の薄い板になった。

手に収まるサイズで、先程の不思議な色をしたカードに、色々書かれているけど……。


「え……読めない」


何かミスをしたのかと横を見ると、白銀色のカードを持った鈴も、困惑した表情をしていた。

俺と目が合うと、困ったように笑う。


「どうしよ、しーくん。読めないよ」

「俺も読めない。これ何て書いてあんだろ」


2人して悩んでいると、鈴の隣にいた永井が不思議そうに言った。


「え、えっと……僕は、読める……よ?」

「俺も読めるけど。2人は読めないのか?」

「私も読めるわよ」

「えっと~、私も読めるよぉ」

「俺も俺も!」


黄緑色のカードを見せながら言う永井に、金色のカードの鏡宮、青緑の風早屋、ピンクの姫野、オレンジの藤井が同意する。

嘘を言っているようには見えないその様子に、鈴と2人で目を見合わせた。

そして全員の視線がラディウスさんに集まる。


「残念ながら……お二人は巻き込まれたのでしょう。ですから、勇者一行として呼び出された方々にはついている自動翻訳が働かないのかと思います。ですので、お二人にはまず文字から勉強して頂きましょう」


「残念ながら」と言いながら、全くそうは見えない様子で淡々と言うラディウスさん。

その態度にまたイラッと来たものの、深呼吸をして落ち着かせる。

俺ちょっとイラつきすぎだろ。

落ち着け俺。

とりあえず……


「俺達は勇者一行に入らなくても良いってことですよね?」

「はい」

「戦いに行く代わりに、勉強をしろと」

「そういうことです。ですので、お2人には別の教師を付けておきます」

「……ありがとうごさいます」


恩着せがましい態度に首をかしげながらも感謝の言葉をのべる。

それに満足そうにラディウスさんが頷いたところで、再び鈴の舌打ちが小さく炸裂した。


「ちょっ、鈴お前さっきから態度悪すぎ!」


思わず小声で注意をする。

それに鈴は不満げに返してきた。


「えー、だってムカつくんだもん。こうしてしーくんのかわいい姿を見れたのは感謝するけどさ、本当なら今ごろはしーくんと一緒に帰ってるときじゃん?邪魔されたんだよ、巻き込まれて。しかも、巻き込みに対して謝罪も無しってあり得なくない?」

「気持ちは分かるけど落ち着けって!」


いつにも増して饒舌な鈴は、随分とイラついているらしい。

でも、鈴がこうやって態度に出してくれるお陰で、俺は何とか気持ちを保てていた。

鈴が暴走しそうになるのを慌てて止めることで、少しの間気を逸らすことができる。


そんな俺達の様子を気にすることなく説明が再開される。

勇者じゃないと分かったとたん、3人ともこちらには視線もくれなくなった。

あー、そうですか。

お前らが欲しいのは『勇者』だもんな。

文字も読めない『巻き込まれ』には興味を持てないよな。

不貞腐れた気分で聞いた話の、だいたいの内容はこんな感じだった。


この世界の魔術には、火・水・風・土・闇・光の6種類が、初級・中級・上級・帝級・神級の5段階ある。

初級は生活魔術と呼ばれる、生活の中で必要な基礎となる魔術だ。中級以上は戦闘で使われるため、戦闘魔術とも呼ぶらしい。


大多数の人は、多少の得意不得意はあるものの生活魔術全般は使え、得意とする属性魔術だけ中級・上級程度まで使えるそうだ。

稀に『無属性』と呼ばれる得意とする属性が無い者が現れるが、彼らは優劣がはっきりと出る。

全ての魔術が中級あるいは上級まで使える者と、生活魔術すら危うい者。

後者は魔術を一切諦めさせられ、魔術を使わなくても良い職業につく。が、そんな職業はなかなか無く、あったとしても給料は安く、いつのまにか借金にまみれ奴隷落ちしている者も少なくはないらしい。


ちなみに、魔術には特殊魔術という、精霊や死霊、魔物を使役する魔術や、俺達を呼び出したような召喚魔術などがある。

これらは使える者が少なく、もし使えれば重宝されるのだとか。


そして、全ての人は産まれながらに何らかの技能を持っている。

その技能は戦闘系から、生活や商業、農業、鍛冶に役立つものなど幅が広く、またそのレベルにより珍しさや強力さが決まる。

それぞれの技能を活用して人々は生活しているそうだ。

歴代の勇者一行として召喚した者達は、総じて珍しい技能を持っている。


「さて、ここで皆様のカードに書かれたものをお聞きしたいのですが」


そう言うラディウスさんの目は期待で輝いていた。


「あぁ!じゃあ俺から言うぜ」


鏡宮の能力は次の通り。


鏡宮 勇輝【5(17)】

 種族;人族

   HP……90

   MP……75

 称号;勇者、神の使徒

 加護;創造神の加護

 得意属性;火、光

 苦手属性;なし

 特殊魔術;なし

 技能;『言語理解』

    『全属性適正』

    『HP消費率減少』

    『MP消費率減少』

    『気配感知』『魔力感知』

    『高速回復』『能力向上』

    『熱耐性』『鑑定』

    『魔術耐性』『成長補正』


これを見た3人から感嘆の声が上がる。


「それは素晴らしいですな」

「すごいです!どうすればそんなに技能が……」

「素晴らしい技能の数ですわね。それにHPとMP、どちらも高いなんて」


口々に褒め称える3人に、鏡宮は不思議そうな顔だ。


「……このHP90、MP75が高いんですか?」

「もちろんですわ!」


こほんっ……とディーナさんがわざとらしく咳払いした。


「皆様、良いですか?HPとMPは、50を基準にしてとらえてください。この50は、ご自身と同じ年齢の人族の平均ですの。50より高ければ平均以上、低ければ平均以下ですわ。一方が平均以上であれば、もう一方は平均以下なのが一般的なのですけれど……さすが勇者様ですわね!」


鏡宮この野郎チートかよ!

照れ臭そうに笑う鏡宮に心中で突っ込む。


「そんなに誉められると照れ臭いですね……」

「堂々としてなさいよ。悪いことじゃないわ」


そう言った風早屋に注目が集まった。


「あら?」

「お前はどうだったんだ?」

「私のは貴方のほど高くないわよ」

「良いから良いから!」


ちょっと渋る様子を見せた風早屋に鏡宮が迫る。

降参した風早屋の能力。


風早屋 郁【5(16)】

 種族;人族

   HP……45

   MP……90

 称号;勇者、神の使徒

 加護;風の精霊の加護

 得意属性;風、水

 苦手属性;なし

 特殊魔術;『妖精使役(風)』

 技能;『言語理解』『成長補正』

    『HP消費率減少』

    『MP消費率減少』

    『気配感知』『魔力感知』

    『高速回復』『能力向上』

    『聴力強化』『風耐性』

    『空気調整』


……風早屋も大概高いなぁ。

渋ったくせに。

見た感じ、『言語理解』と『成長補正』、『HP消費率減少』『MP消費率減少』『気配感知』『魔力感知』『高速回復』『能力向上』は勇者が持つ技能で、それ以外が変わる感じか?


続く3人もまた高かった。


永井 颯太【5(16)】

 種族;人族

   HP……75

   MP……70

 称号;勇者、神の使徒

 加護;光の精霊の加護

 得意属性;風、光

 苦手属性;なし

 特殊魔術;『妖精使役(光)』

 技能;『言語理解』『成長補正』

    『HP消費率減少』

    『MP消費率減少』

    『気配感知』『魔力感知』

    『高速回復』『能力向上』

    『闇耐性』

    『俊敏上昇』『毒耐性』


藤下 歩【5(17)】

 種族;人族

   HP……85

   MP……55

 称号;勇者、神の使徒

 加護;土の精霊の加護

 得意属性;水、土

 苦手属性;なし

 特殊魔術;『妖精使役(土)』

 技能;『言語理解』『成長補正』

    『HP消費率減少』

    『MP消費率減少』

    『気配感知』『魔力感知』

    『高速回復』『能力向上』

    『呼吸補助』『人形作り』

    『鍛冶』

    

姫野 桃花【5(16)】

 種族;人族

   HP……25

   MP……95

 称号;勇者、神の使徒

 加護;闇の精霊の加護

 得意属性;火、闇、光

 苦手属性;なし

 特殊魔術;『妖精使役(闇)』

 技能;『言語理解』『成長補正』

    『HP消費率減少』

    『MP消費率減少』

    『気配感知』『魔力感知』

    『高速回復』『能力向上』

    『闇目』『治癒力上昇』

    『薬作り』


高い……!

めっちゃ極端なのが若干1名いるけど……みんな能力が高い。


「しーくん、勇者って凄いんだね……」

「あぁ、正直驚いた」


呆然と呟く鈴に頷く。

ちなみに、他の人が見るときは、年齢のところの()表示の部分は見えなくなるらしい。

そりゃ5歳の見た目で中身17歳とか、いくら勇者でもビックリだよな。

見えない方が平和で良いと思う。


そうのんきに考えてると、スッと目の前に手が現れた。

見れば鏡宮が背後に立って、ん、とこちらに手を伸ばしてる。

横目で見れば、鈴の後ろにも風早屋がいた。


「何?」

「お前のカード見せてみろ。読めないんだろ?俺が読んでやる」


いつも通りの、俺に対する偉そうな態度に溜め息を吐きながらも、読めないのは事実なので素直に渡す。

鈴も風早屋にカードを渡していた。


「さて、お前の能力はどんな感じだ?」


さてさて、俺達の能力はどんなもんでしょうかね?

前回の投稿から大分時間が経ってしまいました。が、全然進みませんでした( ;∀;)

大変な亀更新ですが、今後ともよろしくお願いします。

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