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 僕は、コンビニのパンが置かれている棚の前に立っていた。


 コロッケパン、やきそばパン。ソーセージパン。ついでにカレーパン。


 丁寧にビニールに入っている。ラベルも消費期限をちゃんと打ち、印刷されたものが貼ってあった。


 僕は、どれにしようかと迷った。


「お客様」


 僕は、コンビニの店員さんに声をかけられた。


「はい……?」


 僕は、なんとなく返事をした。


「いらっしゃいませ」


 僕はその言葉に口が開いたまま。店員の顔を見た。


 僕が何かうまい切り返しをしようかと思った矢先、店員は品出しをしていたおにぎりコーナーへと戻っていった。


 意味がよくわからないまま、店員は、僕に話しかけて持ち場へと戻っていったのだった。


 結局、僕は、コーンパンと牛乳を買ってコンビニを後にした。


 僕が出る際に、おにぎりコーナーから大きな声で「ありがとうございましたぁ!」と聞こえたのは言うまでもない。僕の顔に何か付いていたのだろうか。



 午後6時。あたりはだいぶ暗かった。


 コンビニの前にはバス停があって、学校帰りの女子高生や、仕事帰りのOLがバスがいつ来るのだと言わんばかりに腕を組んで待っていた。なぜだか、バス停には女性しかいなかった。

 

 僕は、彼らの姿を横目に見つつ、スタスタと歩いた。


 目の前の道路は、わりと大きい通りで車通りは激しかった。前から後ろへ、後ろから前とひっきりなしに車が通った。そして、通り過ぎる際のヘッドライトの光がチラチラと僕の瞳の中に入った。

 

 僕の家は、その道路から一本脇道に入った場所にある。少し薄暗く、街灯もあまりない。だから、女性には不人気なスポットに違いないと個人的には思っている(だから、少し家賃が安いのかもしれない)


「すいません」


 後ろから、僕に誰か声をかけてきた。


「はい……?」


 僕は、恐る恐る振り返った。すると、そこには見慣れない男が二人で立っている。帽子をかぶって、まだまだ暑い季節だというのに少し分厚目の生地の服を着ている。


「警察ですが、このあたりで不審者を見ませんでしたか?」


 こんな薄暗いところで、話をかけるなんて反則である。僕は一瞬心臓が止まるかと思った。


 特徴をぺらぺらと警察官は説明をしてくれたが、僕には思い当たる人物はいなかった。


「いえ、見てはいませんが」


 冷静に返事をした。


 警察官は、お互いの顔を見あった。そして片方の警察官が首を横にふった。


「夜分遅く、お疲れのところすいませんでした。ご協力感謝いたします」


 そう言うと、警察官二人はじゃらじゃらと腰につけているもので音を出しながら暗闇へと消えていった。


 いろいろな人に声をかけられる日だなぁと僕は思った。そういう日もあるのだろう。

 

 

 気がつけば、僕の住んで居るボロアパートが目の前にいた。


 そして、コツコツと鉄筋でできた階段を音を立てながらアパートの2階へと向かって上がった。


 安っぽい木製のドアに、安っぽいドアノブ。ドアノブの上についたちゃっちい鍵穴に、ちゃっちい鍵を通し鍵を外した。安っぽい音を出しながら僕はドアを開けて家の中にはいった。


 荷物をその辺に置いて、ベットにうつ伏せでダイブした。


 部屋のベットに寝そべっていると、外から川のせせらぎが聞こえた。

 

 当たり前である。

 

 僕の住んでいるアパートは川沿いにあるからだ。


 僕は、目をつぶりしばらく川のせせらぎを楽しんだ。



 ハッとした僕は目を開けた。時計に目をやると、1時間寝てしまっていたことに気がついた。

 

 時間を無駄にしてしまったと思いつつも、さらに時間を無駄にするであろうテレビの電源を入れた。


 綺麗な女性アナウンサーが、深刻そうな顔でカメラの方を見ている。


 そして、テロップが画面に打ち出される。


【神奈川県の……】


 そして、僕も眠い眼をこすりながらも気がついた。この辺りだ。この辺りで殺人事件が起こったみたいだった。


 僕は、その状況を淡々と説明する女性アナウンサーを画面越しに見つめていた。


 明らかに、髪の毛が口に入っているように見えた。


 髪の毛が入っている。


 その事実に、内容が全く入ってこなかった。しかし、女性アナウンサーは真剣に話をしている。周りでディレクションをしている人たちやカメラマンは誰も気がつかないのだろうか。


 (しばらくして、彼女は髪の毛が口に入っていることに気がついたのだろう。慌てて、口から髪の毛を取り外す仕草をしていた)

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