episode3. メッセージ
その時だった。
部屋の隅から古びた電子音が鳴る。
Pi Pi Pi Pi Pi
今の時代には存在しない音。
俺は慌てて棚を開ける。
そこには数十年前に全人類が所持していたとされるスマートフォンがあった。
歴史の教科書で学んだから存在は知っていた。
これは祖母の形見だったものだ。
「ばあちゃんって、これ何年前に使ってたっけ。確か充電方法がなくなったから使えないって
亡くなる前に言ってた気がするけど」
「俺が高校に入る前だから、3年前か」
画面には若いころの祖母と祖父。
2人でハートマークを作って笑っている。
画質は粗い。
でも、どこかまぶしかった。
昔、祖母が言っていた。
「私のころの恋愛なんて、メッセージの一つで一喜一憂したもんさ」
「返信が来なかったら不安になるし、恋人ができたら寝るまで電話したりね」
「浮気されたら殴りかかったもんさ」
「でもね、毎日が楽しかったわ」
俺は何度聞いてもその感覚が分からなかった。
傷つくと分かっているのに何で人を好きになるのか。
効率の悪い恋愛に、なぜ人は夢中になれたのか。
ふと、スマートフォンの画面が光る。
「・・・え?」
ありえない。電源が入っただけでも不思議なのに、メッセージが表示されていた。
「送信者:REN」
「あれ、メッセージ届いた?既読無視はひどいって笑」
「前言ってたマッチングアプリの話やけど、やっぱりAIにまかせっきりはよくないやろ」
「令和の恋愛がつまらんくなるぞーー」
俺はまだ知らなかった。
この意味不明で、騒がしくて刺激を求めてるような男の言葉が
俺の人生を。今までの常識そのものをひっくり返すことになるなんて。




