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白銀のソロディウス  作者: みーこ


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7.絶叫魔物討伐

 翌朝。

 私たちは朝食を終えると、早速魔物討伐に出掛けた。魔物が出現するのは主に村の北側、森に近い場所。その辺りは農地として活用されたり、家畜が放し飼いにされたりしている。そのため魔物に畑を荒らされたり、酷い時には家畜が殺されたりするらしい。


「家畜を全部小屋の中に入れれば安全なんだろうけど、そうすると仲間同士で争いが始まることもあるし、何より味に影響が出るからねぇ。どうすればいいのか、ほとほと困っているんだよ」


 そう述べたのは牧場を営む男性だった。


「家畜が減っても、味が落ちても稼ぎに影響が出る。頼みの綱はあんたたちだけだ。魔物退治、頼んだよ」

「ああ」

「任せてくれ」


 私も心の中で「頑張ります!」と宣言した。

 農地を進み、森との境界近くまで行く。日差しが柔らかくて気持ちがいい。魔物討伐に来たのでなければいい散歩日和だ。鳥たちの合唱も聴こえてくる。


「地図によればこの辺りだろうが……魔物の気配はしないな」


 トゥタカルタさんがぐるりを見渡す。


「もう少し奥の方に行ってみるか?」

「だな」


 木々を分け入り、森の中を進んでいく。しばらくはがさがさという足音だけが聴こえていたが、不意に離れた場所からかさりと音が聴こえた。そして、魔物の気配。


〝兄さん〟

「ああ」

「あちらの方に魔物が数匹いるようだな。魔力が弱いからどうというほどでもないが……どうする?」


 トゥタカルタさんが兄さんに聞くと、兄さんは鼻を鳴らした。


「どうするっつったって、倒す以外にねぇだろ。村の奴らが困ってんだから」

「うむ。君は意外と情に厚そうだな」

「あ?」

「いや、何でもないさ。さあほら、仕事を始めよう。まずは君のお手並み拝見といこうじゃないか。旅の仲間がどのように魔物と戦うのか興味がある。好きに戦ってくれ」


 トゥタカルタさんの態度に苛立ち気味な兄さんの神経を、トゥタカルタさんが更に逆撫でる。ああ、やめて。魔物を倒す前に面倒を起こさないで。


「ああ? 俺は見世物じゃねぇぞ」


 案の定兄さんはトゥタカルタさんに突っかかりそうな勢い。ああもう。私がなんとかしなくちゃいけないのか。


〝兄さん、今喧嘩するのはやめて。魔物がいるんだから。トゥタカルタさんも、兄さんに変なこと言わないでください。兄さんてばすぐ突っかかっちゃうので〟

「これはすまないキーヴァ。ほらリーアム。君もキーヴァに謝るんだ」

「テメェのせいだろうが! ……まぁ、すまねぇなキーヴァ」

〝うん。分かったならほら、魔物を倒そう!〟

「ああ。……って」


 兄さんが背中から剣を抜き、私を前に困惑した表情を見せた。


「……お前、大丈夫か?」


          ○


 結論。私は大丈夫ではなかった。


 剣が振るわれるたびに振り回される私は〝ぎゃあああああああああああ⁉〟と悲鳴を上げ、魔物を切りつけるたびに何とも言い難い感触を味わえばまた〝いやああああああああああああ⁉〟と喚き、そのたびに兄さんは「うるせえええええええええええ!」と叫び声を上げ……。弱い魔物だったため苦も無く倒すことはできたが、強めの魔物を倒した時と同様の疲労感が私たちに襲いかかった。


「何と言うか……二人とも、お疲れ様」


 耳を塞ぎながら事の成り行きを見守っていたトゥタカルタさんが、心底うんざりした顔を向けてくる。


「もう少し静かにできないか。君たちの叫び声のせいで何匹か逃げていったぞ」

〝うう、ゴメンナサイ……〟


 そりゃそうだよね。逃げられるよね……。


「お前は魔法石の中に入ってるだけなのに、何でそんなに叫び声が出るんだよ……。クソッ。まだ耳鳴りがする」


 あろうことか兄さんも抗議してきた。


〝だ、だってぇ〟


 身体を魔力で強化させて素早く動き回ることもある。しかし今は自分の意思で動いている訳でないため動きが予測できず、魔物に刺さった時のぶにゃりとした感触も……。


〝う、うえぇ……。口があったら吐きそう〟

「口があっても吐くな」

「ふむ。魂だけでも吐き気を催すとは興味深いな」

〝うえぇん。誰も労わってくれない〟


 ある意味で一番の功労者なのに……。


「ま、その辺りはキーヴァが慣れるか、どうすれば悲鳴が出ないようになるか試行錯誤する他あるまい。さあ、もっと魔物を倒すぞ。まだまだ始まったばかりだからな」


 やれやれ、とでも言いたげに肩を竦めるトゥタカルタさん。ここにはもう用は無いと言わんばかりにすたすたと歩きだした。


「うるせぇから叫びすぎんなよ」

〝うう。叫びたくて叫んでるんじゃないのに〟


 兄さんも剣を担ぎ、トゥタカルタさんの背を追う。

 魔物が出現するのは村の北側一帯。ここはその一部にすぎない。まだまだ魔物は沢山いるのだ。


〝……おえぇ〟

「吐くな」


          ○


 移動しては魔物を倒し、魔物を倒しては悲鳴を上げ、悲鳴を上げては怒られ、怒られてはヘコみ、ヘコんでいる間にまた移動し、その間に対策を練り……。


 その結果が——これだッ!


〝とぅおおりゃああああああああああ‼〟

「う、うおおおおおおおおおおおおお」


 兄さんが足を踏み込むのと同時に先んじて叫び声を出せば、振り回されたり魔物に刺さったりする時の恐怖感が相殺されるッ! ついでに兄さんも声を上げれば、私の叫び声なんて気にならなく——


「すんごい気になるわ! 叫ぶな! そうじゃないだろう⁉」

〝あれ、どうかしましたかトゥタカルタさん〟

「どうもこうもないわ……」


 はああああああ、と今日一番長い溜息を吐くトゥタカルタさん。そんなにも変なことをしたっけ? と私は無い首を傾げる。


「いいか。今相手にしているのは比較的弱い魔物だ。弱い魔物は大きい音が聴こえると驚いて逃げ出すものもいる。そんな魔物の逃げた先が森ではなく村だったらどうする。君の行動のせいで村人たちにいらぬ被害を与えることになるんだぞ」

〝あっ……〟


 自分のことばかり考えていて、他のことなんて全然頭になかった。逃げた魔物の行き先のことなんて考えもしなかった。村の人たちは魔物被害に困っているから自分達に依頼をしてくれたのに、更に被害を加えようとしていたなんて。


〝ごめんなさい〟

「分かったのならいい。それと……」

〝わわっ⁉〟

「あ、おい!」


 トゥタカルタさんが兄さんの手から剣を奪い取り、それを兄さんの前に掲げる。


「見えるか? リーアムの顔が。君がお兄さんに慣れないことをさせたせいで、物凄く恥ずかしそうな顔をしているぞ」

〝あ、本当だ……〟

「テメェ頭カチ割るぞ」


 うおおなんて叫びながら魔物を斬るなんてしたことがなかった。そうでなくとも意図して叫び声を上げるなんて普段しないため、兄さんの顔は羞恥心で赤くなっていた。


(言われてみれば、さっきの叫び声は無理矢理感強かったな……)


 兄さんが飯にしようと言うので、一旦昼休憩にしながらちゃんとした対策を練ることにした。

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