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白銀のソロディウス  作者: みーこ


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6.舞い込む依頼

 しばらくすると、店主が大勢人を引き連れて帰ってきた。


「勇者が来たって話をしたら、皆興味を持ってね」


 あははと笑う店主の後ろで、村人たちが珍しい物を見る目で兄さんとトゥタカルタさんを眺めていた。


「へえ。あいつが勇者?」「うわっ。すっげぇ美人」「あんな美人初めて見たぞ」「あの美人が勇者か? 男の方は?」「さあ。護衛とか?」「彼氏じゃねぇよな」「それは趣味悪すぎるだろう」「じゃあ俺でもチャンスあるかな」「いやお前じゃ無理無理」


 話が間違って伝わっているのか、それともトゥタカルタさんの容姿が一際目を引きすぎるのか。真相はどうあれトゥタカルタさんに注目する人の方が多いようだった。勇者は兄さんの方なのに。

 そこですっとトゥタカルタさんが立ち上がる。村人たちに微笑みかけると、おお……とどよめきが広がった。


「よく来てくれたな皆の衆。こちらにいるのが勇者リーアム。私はそのお供のカルカルだ」


 兄さんが軽く咽た。なんだそっちが勇者か、と言う声が村人たちの方から聴こえてきた。なんだとはなんだ。兄さんは不本意ながらも勇者として日々頑張っているのに。と、私は思いつつ、トゥタカルタさんが偽名を使ったことに首を傾げた。美女の姿でいる間はその名前で通す気なのか。


「先程そこの店主から、この村では魔物の被害が増えていると聞いた。私たちはある目的のために旅をしているのだが、そうした話を聞いては無視できない。せいぜい二日程度が限界であるが、この村で困っている者たちのために、魔物を倒してしんぜよう!」


 村人たちが歓声を上げ、拍手が巻き起こった。注目されるのが苦手な兄さんは居たたまれないような顔をしている。今一番困っているのは間違いなく兄さんだ。いつもはそんな兄さんを私が気にかけ時に労わっているのだけれど、今この状況では無理なのが歯がゆかった。


「魔物被害で悩んでいる者は、私の前に並んでくれ。一人一人話を聞くから順番にだぞ」


 トゥタカルタが村人たちに声をかけると、彼らは押し合いへし合いしながら並び始めた。


「こらそこ。無理矢理割り入ろうとする者の話は聞かんぞ」


 美人にそう言われては従うほかない。村人たちはお行儀よく並んだ。それにしても妙にあしらい方が慣れていることも気になる。トゥタカルタさんにも、何かそうした経験があるのだろうか。神だと大口を叩いた程だ。大昔は直接人の悩みを聞いていたのかもしれない。

 それから村人たちの対応は主にトゥタカルタさんに任せ、兄さんは隣で静かに話を聞いたり、時折口を挟んだりしていた。自分たちだけでは村人たちの言う被害の出ている場所がどこだか分からないので、店主に手伝いを頼んで地図にまとめてもらった。


(……)


 魔物を討伐する段階になれば私にも活躍の場はあるだろう。でも、やっぱり今何もできないのは歯がゆかった。


          ○


 店主が連れてきた村人全員の話を聞き終わる頃には、すっかり空が暗くなっていた。流石に一度に何人もの話を聞けば疲労が溜まる。私たちは二階へと上がり、借りた部屋で身体を休めつつ、明日からどうするか作戦会議となった。


「地図を見たところ、魔物が現れるのは主に森と農地の境目だな。食べ物にでも困っているのだろう」


 椅子に座ってふんぞり返ったトゥタカルタさんが地図をひらひらとさせる。先程村人たちに見せていた態度とは大違いだ。ちなみに私はベッドの横に立て掛けられている。トゥタカルタさんの綺麗な脚がちょうど真正面にあり、心なしかドキドキした。


「依頼された場所や魔物の種類も、大雑把に見れば被っているものが幾つもある。一度の討伐で幾つもの依頼を達成できることになるな。その分各依頼人が出す金は少ないだろうが、塵も積もれば何とやら、だ。これだけ全てこなせば宿代と飯代をそこから差し引いてもお釣りがくる。防具のない君も、これでようやく鎧が買えるわけだ」

「一応言っとくが、今まで使ってた防具はあの時に燃えただけだ」


 ベッドに寝転がった兄さんが鋭く指摘した。とは言え兄さんが使っていた防具は鎧と言うほどしっかしりたものではなく、動きやすい簡素なものだった。鎧一式揃えようと思うと結構なお金がかかる。おまけに着こめば着こむほど身体が重くなる。防御力を選ぶか、素早さを選ぶかで、身につける装備も変わってくるものだ。


「彼らの話を聞いたところ、以前から魔物の被害はあったそうだが、数が少ないからなんとか対処できていたらしい。だがそんな素人でも対処できる弱い魔物の数が増えて、対処しきれなくなったそうだ。何か弱い魔物が増えた原因があるのだろうな。それを俺は魔物の餌不足と考えたが……君は何か思い当たることないか?」

「あ? 魔物じゃねぇんだから知るかよ」


 心底面倒臭そうな声を出す兄さん。それを受けてトゥタカルタさんは溜息一つ。


「君ねぇ。もう少し〝会話〟というものをしたらどうだ。さっきだって村人たちの対応は俺がしていたが、本来は勇者である君がすることだ。今回はたまたま、魔物被害に困っているけど辺鄙な場所にあるせいでなかなか助けが来ない、というところに俺たちが来たから依頼が殺到したが、毎回そうとは限らないだろう。その土地の人間と交流を深めて初めて依頼を受けられる時だってある。金を得たいのであれば、もっと能動的になれ」

「……」

「それに依頼に限らずとも、その地の人間との交流は大切だぞ。仲良くなることで恩恵を受けられることだってある。だから君ももっと愛想良くしてここの村人たちとの交流を」

「お前よくそんなこと知ってるな」

「……は?」


 トゥタカルタさんは兄さんの一言に驚いていたが、兄さんもトゥタカルタさんの言葉に驚いていた。二人とも目を丸くし、寝転がっていたはずの兄さんなんて身を起こしている。


「お前が今言った内容、金勇者がなりたての勇者に言いそうな台詞だ。神だなんだと言う割には、人間社会に詳しいんだな?」


 金勇者、というのは金色の勇者証を持つ勇者のことを指す。勇者証は金、銀、銅の三種類。勇者に任命された時点では銅の勇者証が渡されるが、その後の実力や実績で優秀であると認められれば銀の、そこから更に活躍すれば金の勇者証が与えられる。金の勇者証を持つ勇者は、駆け出しの銅勇者にとっては神にも勝る憧れの存在である。ちなみに兄さんは銅勇者であるが駆け出しではなく、特に目立つような実績も無ければ、勇者証を交付する教会に行くのも面倒だからという理由で銅のままでいるだけだったりする。


「詳しかろうが詳しくなかろうが、この程度のことは考えれば分かるだろう。……はぁ。君と話していると疲れる。もういい。今日はこれで解散だ。明日は朝から魔物退治をするぞ」


 そう言ってトゥタカルタさんは立ち上がり、部屋を出ていってしまった。


「……何なんだ、あいつ」


 起き上がっていた兄さんは、不思議そうな顔をしながらまたベッドに身体を投げうった。


〝トゥタカルタさんが何でああいうことを言うのかは不思議だけど……でも、トゥタカルタさんの言うことももっともだと思うよ〟


 これでようやく兄さんと二人で話ができる。私はそう思うと肩の力が抜けるような感覚を覚えた。


〝村の人たちと交流するのも大切だよ。魔物を倒してくれたお礼に、ってクッキー貰ったことだってあるでしょ〟

「……ああ、あったな」


 ごろん、と兄さんが寝返りを打つ。


〝今までそういう役割は私がしてきたけど、今は無理なんだから、兄さんがやらなきゃダメだよ。……トゥタカルタさんて、何か隠しごと沢山ありそうだし〟

「だな。何となく気に食わねぇ。神とか言ってる時点で怪しいし」


 ふわぁ、と欠伸をする兄さん。


〝うん。そうなんだよね。魔力の質も、なんだか変な感じだし〟

「そうなのか? 俺には全然分かんなかったが」

〝それは兄さんが私よりも魔法の才能が劣ってるからですー〟

「うるせぇ」


 兄さんはぼす、と軽く布団を叩いた。本当は剣を小突くか何かしたかったのかもしれない。


〝ふふ。あのね、身に宿す魔力は一人一人違うから、分かる人にはその魔力が誰の魔力かが分かるの。さらに凄い人はその魔力の持ち主のことを知らなくても、どんな人なのか分かっちゃうんだって。私にはそこまでのことは分からないけど、綺麗な魔力だなとか、この魔力は荒々しいなとか、それくらいなら何となく分かるの。それで、トゥタカルタさんの場合は凄く奇妙で……ううん、なんて説明すればいいのかな〟


 私は頭を悩ませながら言葉を紡いだ。


〝剣を全然別の鞘に入れたっていうか、身体に合っていない鎧を身につけているっていうか……。とにかく、一人の人間の魔力にしてはちぐはぐな感じなの〟

「それは神だからじゃねぇのか」

〝どうなんだろう。今まで本物の神様に会ったことないから比較はできないけど、でも、あれが神様の魔力だと思うとちょっとガッカリするな〟

「ガッカリ?」

〝うん。だって、ちょっと質が悪いもん〟

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