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白銀のソロディウス  作者: みーこ


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24/31

24.行方不明の金勇者

「金勇者が……行方不明に……!」


 叫び声を上げた神父様が、頭を抱えながらずるずると床に崩れ落ちる。


「な、何かあったのか……?」


 目の前でこんなことが起きるものだから、流石の兄さんも心配して神父様の前にしゃがみ込んだ。


「竜巻が起きたあの日、とある金勇者がこの教会を訪ねてきました。その勇者も、あなたと同じように大型の魔物を探していました。この辺りで大型の魔物が出るという話は聞いたことがありませんでしたが、皆さんはご存知でしょうか、魔物の住むストフォーレという街の噂を。この先に平原があるのですが、もしかしたらそこがストフォーレかもしれないと言われているのです。私がその話を勇者にすると、彼は礼を言って教会を出ていきました。……その数時間後です。平原の近くで竜巻が起きたのは」


 神父様はそこで言葉を切り、後悔と共に深い溜息を吐いた。


「あれから毎日、暇さえあれば彼がまたここを通らないかと窓の外を眺めています。でも一向に見かけない。もしかしたら竜巻が起きる前には、探すのを諦めてどこか別の街へ行っていたのかもしれない。そう思えたらいいのですが、人に尋ねても誰も彼の姿を見ていないと言うのです。ああ、もしかしたら、私のせいで、彼は……!」

「お、落ち着いてくれ、神父様」


 滂沱の涙を流す神父様を、慌てて兄さんが慰める。


「まだそいつが死んだとは——」

「私が殺したんだあああああ‼ 私のせいで‼ 彼はあああああ‼」

「……禁句だったみたいだな」


 トゥタカルタさんがぼそりと呟いた。兄さんは「うるせぇな」と返し、言葉を慎重に選びながら神父様に話しかける。


「なあ、神父様。俺たちに竜巻が起きた平原まで行かせちゃくれねぇか。倒木がそのままになってて通行できねぇ状態なら、誰かが元に戻さなくちゃ皆困るだろ。困ってる人を助けるために、勇者がいる。違うか?」

「その通りですが……しかし……」

「それに俺たちにも、探してる奴がいるんだ。そいつも、もしかしたらストフォーレにいるかもしれねぇ。だからそいつを探すのと一緒に、神父様が探してる金勇者も探してやるさ。もしかしたら知らない街で迷子になってるのかもしれねぇだろ?」

「それは、ありがたいですが……。ですが、誰にも見つけられていない街なんです。そんなすぐに見つかるわけが」

「いいえ、見つかりますよ」

「……!」


 神父様が顔を上げた。その視線の先にいるのは、慈愛に満ちた顔のソフィーさん。


「見つかるわけがない。そんな考えがある人には、いつまで経っても見つけられないでしょう。ですがストフォーレは魔物の街なのでしょう? ならば魔物にとっては、見つけるまでもなく、当たり前のようにそこに存在する街のはずです。なので……」


 ソフィーさんは神父様の前にしゃがみ込んだ。片手を神父様の頬に添え、瞳を覗き込む。


「大型の魔物に道案内をお願いしたいのです。魔物の居場所を知っていたら教えてくださいませんか?」

「あ……」

〝……!〟


 一瞬。

 ほんの一瞬だが、巨大な魔力同士がぶつかり合う気配がした。ソフィーさんのものと、神父様の……いや、この教会自体のものか。ソフィーさんは神父様の意識を無理矢理操ろうとし、そんな神父様を守るために教会がソフィーさんの魔力を追い払おうとした。教会には魔物を追い払うための防衛魔法が施されている、という話を聞いたことがある。

 だが……勝ったのは、ソフィーさんの魔力だ。


「倒木の、辺りで……強大、な魔物が、出るという話、を、聞いた……。騎士団で、も倒せな、いと……」

「あらまあ、それは大変ですね。でも安心してください。私たちが倒してさしあげます」

「ああ……頼んだ、ぞ」

「ええ、頼まれました。ああ、それと、失踪した勇者の名前も教えてくださいますか?」

「勇者の名前、は、ディアミド……だ」


 もう満足したのか、ソフィーさんは神父様の頬からするりと手を離し立ち上がる。


「さあ、皆さん行きましょうか。ぐずぐずしていたら朝になってしまいます」

「お、おう……」


 ソフィーさんがさっさと扉へ向かっていくので、兄さんとトゥタカルタさんも慌てて後を追う。神父様はまだ心ここにあらずといった様子。心配ではあるが、時間が経てば元に戻るだろう。

 教会の外に出ると、耐えかねたようにトゥタカルタさんが大声で不平を述べた。


「騎士団でも倒せない魔物を私たち三人で倒すとか本気で言っているのか⁉」

「ああ、あれは彼を安心させるための発言にすぎません。それに……ふふ」

「な、なんだその怪しげな笑みは……」

「希望的観測、です。もしかしたらいるのかもしれません。私の友人が」

「……そうか」


 ソフィーさんは笑みを浮かべるだけで、それ以上のことを言う気はないようだった。


(その人の魔力でも察知したのかな)


 ソフィーさんが探知魔法でも使ったのか。それともソフィーさんの友人は大型の魔物を好んで食べるらしいから、噂を聞いてそこに向かった可能性があるのか。真相はどうあれ、探している人がいるかもしれないとなると、心は弾むもの。

 私たちは足早に平原へと向かった。暗くなれば魔法で灯りをともせばいいが、それは魔物に自分たちの位置を教えることにもなる。どんな魔物が待ち構えているのか分からない以上、不用意な行動は避けたかった。

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