INSコンピュータダウン①(F16ファイティングファルコン)
夜の空を飛行中、パイロットのジョンは突然、計器パネルの警告灯が一斉に点灯するのを目にした。彼の心臓は一瞬止まり、次に激しく脈打ち始めた。「INSコンピュータの故障だ」と直感した。AVIONICS警告灯※3が赤く輝き、ADI(姿勢指示計)※1にはAUX(補助機器)※2が現れ、INSコンピュータ※4の故障が警告灯とともに彼の視界からは次々と重要な情報が消え去っていった。HUD※5からFPM※6、ヘディングスケール、ピッチラダー、ロールスケールが消え去り、彼は一瞬、虚空を見つめた。フライトパスマーカーが見えないことは、まるで彼が夜の闇の中で方向感覚を失ったかのような感覚をもたらした。
「落ち着け、ジョン」と彼は自分に言い聞かせた。「まずは姿勢の確認だ」。ジョンは計器をクロスチェックしながら、最適な磁気ヘディングを探し始めた。INSTR HDG(計器方位)※7ノブを慎重に回し、HIS(水平指示計)※8コンパスカードを最も信頼できる磁気ヘディングに合わせる。これが、彼の命を救う第一歩だった。
※1ADI:通常、人工地平線(水平線)を基準として表示され、航空機のピッチ(前後の傾き)とロール(左右の傾き)を直感的に確認できるように設計されています
※2AUX(補助機器): INS(慣性航法装置)のコンピュータが故障すると、ADIにはAUX警告フラッグが表示されます
※3AVIONICS警告灯:航空機のコックピット内で表示される警告インジケーターの一つです。この警告灯は、航空機のアビオニクスシステムに問題が発生したことを示し、パイロットに対して迅速な対応が必要であることを知らせます。
※4INSコンピュータ:航空機の慣性航法装置(INS)の中核をなすコンピュータです。INSは、加速度計とジャイロスコープを利用して、航空機の位置、速度、および方向を計算します。
※5HUD:HUDはフロントガラスまたは専用スクリーンに情報を投影し、パイロットが視線を下げずに飛行計器や航法情報を把握することを可能にします。
※6FPM:航空機のヘッドアップディスプレイ(HUD)に表示される、航空機の現在の飛行方向を示すインジケータ。パイロットが直感的に飛行機の進行方向を把握するのに役立ちます。
※7INSTR HDG(計器方位):HSI(Horizontal Situation Indicator、水平指示計)のコンパスカードを手動で設定し、最適な磁気ヘディング(方位)に合わせるために使用されます。これにより、INS(慣性航法装置)や他の航法システムが故障した場合でも、パイロットは正確な方位情報を得ることができます。
※8HIS(水平指示計):HSIは、航空機の方向、位置、コース、およびナビゲーション情報を一つの計器で表示するため、パイロットが飛行中の状況を把握しやすくなります。