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四章 諸邦記 弍 新広島

日本が不破関で分割統治している仮想世界をモチーフにしてます。脱西した男の物語。




国紹介




西 扶桑連邦(社会主義)首都大阪




東 日本国(資本主義)首都東京

梅雨が終わると共に、ワイシャツをびっしょりと濡らすほどの汗が吹き出る天気へと様変わりした。天国のような涼しさで、少し寒さを感じるほどのエアコンを効かせた喫茶店に入ると、彼は居た。今日は少し待たせてしまった。彼は少し目にくまができていた。いつもは大抵陽気なのだが…毎度の如く感情の変わる彼を私はまだ理解しきれていない。

「こんにちは」少し暑さにやられ気だるげな表情になっている彼に話しかける。

『おぅ、久しぶりだな。』彼は掠れた声で返す。

『まぁ~昔のことで思い出すのが遅くなった。で、今回は、新広島への出張ことを話そうと思う。』

【新広島】私ですらその名を知る都市は、世界初の核攻撃を受けた町。雑草根性で這い上がり復興している時に、またも攻撃を受け壊滅した。我らの国では悲劇の町として知らぬ人はいない。

『行くことになったのはとある不正だ。どっかの町の鉄道員が切符を安く買って高く売るっていう転売で儲かりやがって、そういうことをしてねぇ~かっていう監査と新広島っていう新しい町の復興劇を見てこい!!ってもんやった。普通上層部が行くもんだが、そのまちは遠くてなぁ~、連邦のおんぼろな汽車では2日もかかる。だから下っ端の儂が行かされたんじゃ。』嫌味ったらしく彼は言う。

「そういうことは、日常茶飯事だったのですか?」つまらない質問で返す。

『それは、ここでもあっちでも変わらないだろう?」そう嘯く。してやられた気持ちになった。

『それで、だ。大阪から汽車に乗って、岡山まで行った。ここも薄汚れた貧民の巣窟だったが、まだ賑わいがあったな。一夜過ごしてようやく新広島じゃ。』

「…岡山はどんな町だったんですか?」思わず聞いてしまう。軽く流しすぎだ。

『はぁ、あえていうなら印象がない、でも確か…その近くに製油場があったから空気が悪くて仕方がなかったぐらいじゃのー、新広島の話をしてもいいか?』嫌味ったらしく言われる。岡山に何の恨みがあるのやら。

「どうぞ…」そう返すしかないのだが。

『まず扶桑連邦の中で新広島っていうのは扶桑連邦の象徴の一つじゃ、あの二度も灰塵に帰した町ながら、それを扶桑連邦が、復興、させたのだからな。だから儂も少しはましだろうと、少し楽しみにしながら地に降りたんじゃ。』…私も馬鹿じゃない展開は読めてしまう。きっと…

『ホントにまし程度じゃった。酷くも良くもない都市になっていた。駅を中心とした放射状の道、その道には国営銀行とやらが並びたっちょる官庁街ときな臭い商店が並ぶ商店街、煙を吐き出す工場が森のようになってる工場街がくっきりわかれていた。…行き過ぎた計画都市、風情の欠片も何もない、薄汚れたサラダボウル、悪口はいくらでも出てくるのじゃが特に酷かったのは…、産業振興館、原爆が落ちたとこあたりじゃ。そこは解体されきってただの豆腐ビルが立っておった。落ちたという看板をポツンとおいてな…。只の史跡と化していた…。つまらない。くだらない。この都市などその程度で片付いた。』彼はため息をつく。その息の色は新広島の工場の煙なのだろうか?それを伺わした。

『無論、下っ端の儂にはそんなこと書く権利すらねぇ。

帰りの煙クセェ汽車んなかでこう書いた。

新広島は復興を遂げ、不正もなく最高の都市でした。

…思ってないことを書くって辛いんじゃ。』

自らを嘲して言っていた…。

「…調査書の評価はどうでしたか?」

『君もそんなくだらぬ質問で返すんじゃな。…無論、高評価。』少し表情が緩む

『しかしここで、人生最大の転機が来るのじゃが…。もう外は暗いな。』ホントに暗かった。ネオンのお陰で昼間と勘違いしてしまったが、空はもう墨を溢している。

『将来の健康のために早く寝ることにしてるのじゃ、なのでさようなら。またな。』

そう言い残しそそくさと帰る彼を止めず帰した。

「…将来。」扶桑時代と異なり、彼に将来なんて言葉が使えることを、ほんの少し喜ばしく思えた…。


お久しぶりです。

三ヶ月ぶりでしょうか?

春なぞとうに消え去ってしまいました。その間惰眠を貪ったり、ジムニーを酷使して毛色の違う小説ばっか書かせたり、そんなことをして欲求を満たしたことを謝罪します。

それにより遅れました。ごめんなさい。

そして次回で終わりにします。

楽しみにしていただけたら幸いです。


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