鋼鉄天使 6
ズズ……
低く重い爆発音が足元の震動の直後に来た。花瓶代わりの水差しの中で、ガラス越しに水面が波立つのが見える。淡紅色の細い糸がゆらゆら揺れ、机上に垂れた葉はもっとゆっくり揺れていた。
なんの爆発だろう。俺は戸口に眼を向けた。基地内の窓の殆どは廊下に面しているだけで、お天道様が拝みたければ屋外に出るのが一番手っ取り早い。
震動の原因は何だろう。他基地の地上部隊が何かやらかしたのか、それとも誰かの機が墜ちたのか。かなり近かったのは間違いない。
一寝入りする心算だったが、食事時間も近いことなので様子見ついでに管理区へと足を伸ばした。途中自販機の傍でたむろしている連中と出会う。
「第23分隊らしいぜ」
と一人が教えてくれた。
「お前らが出撃して半時間も経たないうちに、性懲りも無く来やがって、第22分隊と同時に出撃したんだ。BF301とCATFOOTらしいが、最近は必ずと言って良いほどSTINGRAYが護衛についてるからな」
「――あぁ、そうだな」
自然、口の端が歪む。忌々しさに、それとも。
「今日、は」
今日は何人死ぬのかな。
「死ぬ奴が死ぬだけさ」
死ぬ奴が。
「そうだな」
血染めの白衣で走っていく救護兵。担架が走り回り消火剤が滑走路に撒かれ、そうこうしている内に次々と機が降りてくる。黒い煙を、紅い焔を吐きながら必死の思いで巣に戻る。
次々と、ではなかった。
「六機? 畜生、たった六機か?」
すぐ脇で誰かが喚く。
尾翼まで黒く焦げて無残な姿を晒した機体。背に腹に弾痕や切り傷を残し、操縦席は血に濡れている。滴り落ちているのはオイルだろうか、それとも。
「もう一機還ってきたぞ!」
炎も煙も出ていない。
が、ふらりと揺れた。
車輪が出ない。
「低い……っ」
超低空でぎりぎりフライ・パスしたものの、数秒後には体勢を崩し、そのまま墜ちていった。
弾丸喰らってたらしいな、フェルパの奴。
俺は新たに上がる黒煙から目を逸らしていた。
同期の者がどんどん少なくなっていく。俺より後に入ってきた奴等さえ、一期終わるまでに半数になってしまった。
まず半分、更に半分、そして。
海千山千と言われた古参の傭兵共ですら。
だから、いつ俺の番が来てもおかしくない。今回生き残れたからといって、次に生還できる保証も無い。
いつものことだけど。
「――慣れらんねー……っ」




