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第28話:セブンスを救うために

 「それで……どうなったんだ?」


 ラプラスから聞かされている此処での出来事――セブンスが一人になった理由。


 その出来事は、時雨悠人にとって驚くべきことであり、困惑せざるを得ないものである。だが、話は結末までいっていない。


 


何よりも、セブンスが一人ぼっち、正確にはラプラスとの二人だけになった理由が気がかりだった。


 ファーストもいるし、マスターや他の姉妹たちもセブンスを放置する理由がわからない。


 マスターがセブンスを自分の入れ物にしようとしていたのなら、再度挑戦しようとする可能性もある。何よりも、このゼノ・グラウンドの目的を果たしていない。


「セブンスには、マスターは外で果たすべき用事があると嘘をついています」


「まあ、そんなとこになるか……それでマスターや他の姉妹達はどうなったんだ? なんでセブンスはずっと一人に?」


「…………分からないです」


「え?」


「分からないのです。何で、マスターが戻ってこないのかも、他の姉妹達がどうなったかも。だから、マスターや他の姉妹達がセブンスをどうしたいのかも、何も分からないのです」


「分からない。いや、戻ってこないなら聞けないのか。だとしたら、一旦外に出ることも」


「姉妹達は、外に出ることはできません。もちろん、私もです。マスターの許可がない限りは……」


 セブンスの許可は出ていない……か。


 当然と言えば、当然だろう。暴走しているセブンスに許可を出す意味がない。


「でも、ファーストは外に出られるんだよな? だったら………………だからなのか?」


「はい。ユウトが想像した通りです。ファーストも、マスター本人が戻ってくるのは危険とはいえ、他の姉妹達を調査のために、ここに送り込まないのは不自然と判断しました。そのため、私にセブンスを託して外に出て行きました。それから1000年以上経ちますが、未だに戻ってきていないです」


「1000年……か。それって……生きているのか?」


 躊躇いながらも口にする。マスターがセブンスに魂を移そうとした時点で、ギリギリという話が出ていた。だとしたら、他に魂を移せず死んでしまったから、戻ってこなかったという可能性が高いだろう。


 それを認めるということが、目の前の使い魔であるラプラス、そしてセブンスにできるのか。


 聞かずにはいられない。仮に、感情的に罵倒されたとしてもだ。


 だが、ラプラスの回答は時雨悠人が思っていたのとは違ったものであった。


「死んでいる可能性が高いですね。セブンスがダメなら、他の人形を作って、そちらに魂を移すという手段もあります。しかし、ここに戻ってこない理由にはならないです。もちろん、ゼノ・グラウンドの調査を諦めたという可能性もありますが、何もアクションをしないのは不自然です――どうしました?」


「いや、意外と冷静なのだなと。死んでいる可能性なんて考えたくないと思っているのかと思ったから」


 冷静すぎやしないだろうか。


 ラプラスにとって、創造主のマスターは神様みたいなものであり、絶対的なものと時雨悠人は思っていたからだ。


「ふむ……もしかして、マスターが死んでいる可能性を指摘された私が取り乱すと思いました?」


「いや、まあ。逆に、どうして冷静なんだ?」


 純粋な疑問。投げかけられたラプラスは、数秒思考するかのように、中心の瞳の光が明滅する。


「私は…………マスターよりもセブンスが大切です。マスターが死んでいてくれた方が嬉しいです。そうすれば、セブンスがマスターに乗っ取られる可能性はありません。もし、姉妹達も全て壊れてしまっているのなら……むしろセブンスの身が安全と思ってしまっています」


「……」


「おそらく、魔導生命体として、使い魔として、決定的な何かが壊れてしまったのでしょう。ユウト、あなたから見て私はどうでしょうか? こんな創造主であるマスターを裏切る使い魔の魔導生命体は……存在してはならないでしょうか?」


 その問い掛けに時雨悠人は、すぐに声を出せなかった。


 ラプラスは心があるかのように受け答えをする一方で、その人工的な姿から、あくまでも心があるように振る舞っているだけという可能性も考えていたからだ。


 だが、振る舞っているだけのようにも思えなかった。それだけ、セブンスとラプラスの会話は自然だし、お互いに楽しんでいるようにも思えた。


 そして、今告げられたラプラスの自分の存在に対する問い掛け。


 時雨悠人は、自信を持ってラプラスに伝える。


「そんなことは絶対にない。ラプラスは、セブンスのことが何よりも大切だと思っているだけだろ。1000年以上も一緒に笑って、喧嘩して……生きてきたのなら当たり前だと思う。むしろ、これで容赦無くセブンスをマスターの代わりにまだできると言われたら……そっちの方が怖かったかな。だから、ラプラスの言葉に俺は安心したよ。本当に、心があるんだなって」


「私は……間違っていないですかね?」


「間違っていない! だからセブンスを……って、それでセブンスを救いたい、というのは結局どういう意味なんだ?」


 勢いでラプラスを肯定したが、そもそもラプラスはセブンスを何からどのように救いたいのか話していない。


 マスターや姉妹の動向がわからないのなら、それらからではないのだろう。


 だったら一体?


「それは……セブンス自身からです」


「セブンス……自身?」


「はい、セブンスは、元々この場所……ゼノ・グラウンドの調査が終わったら自身の活動を停止させるつもりでいたのです」


「それって、自殺のようなものか?」


「その認識で間違っていません」


 マジか……


 目を覚ましてからセブンスと過ごした日々の記憶を振り返るが、そのようなそぶりがあったか、全く思い出せない。


 セブンスが隠しながら接してくれたのか、それとも自分が鈍いだけなのか。


 (おそらく、後者なんだろうな)


 勇者として人と碌に過ごさなかったし、まともに会話した記憶も少ない。


 やむを得ないとはいえ、自分のことばかりでセブンスやラプラスに気を回すことがなかったことに落ち込む時雨悠人だが、今からでも自分にできることがあるのか、何よりも、セブンスが今も死にたいと思っているのなら、絶対に防がなければならない。


「それは、今も?」


「いえ、迷ってます。この場所で活動を終わらせるか、それともユウトと外に出て……マスターを探すか」


「マスター……か。それでも自殺よりは……」


 マシと思う。だが、マスターが生きている可能性は低い。更に言えば、万が一生きていても問題だろう。


「私もそう思います。セブンスも本気でマスターに会えると考えているかは怪しいですし。それを踏まえて外に出ると言ってくれているなら、私としては、むしろ嬉しくあります。ただ……」


「ただ?」


「セブンスの記憶が戻りつつあります」


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