第8話「4月30日 AM8:04~」
イラストは今回出番ないけど檸檬。Amazonの箱被っている女の方
顔と前髪は唐揚と檸檬で共通。二人の差は後ろ髪。唐揚は刈上げで檸檬は長髪をスカーフでまとめている
9話が墾、10話が辰と決めているのでナーラでもよかったけど、うーん、ナーラ…あっちはふわふわ頭の美少女設定だったのでそっちでもよかったかも
唐揚と檸檬は性格がアレなので象徴的に狐顔にしている
イラストは辰まで描き終わり
みんな立ちん坊の絵図らだが、辰は動きつけた時の見栄え見たかったのでダイナミックなポーズになって居る
そうそう、辰描いていて思ったのだが、漫画家の靴には愛がない。と、いうか怠慢だ
アニメはしょうがない。だが、漫画ならできるはずだ。靴の減り方の書き分けが
因みに辰は足腰が強く踵がめっちゃ減る設定。尚且つ、重量物を手に戦うので後ろ重心の踵の減り方になって居る
世界電波塔
─ 四人の転校生 ─
第8話「4月30日 AM8:04~」
北朝鮮
海州
『牡丹ちゃ〜ん』@喜多野
無線から喜多野の声が聞こえてくる
気の抜けたサイダー
それは単なるブドウ糖水
喜多野の、マジ世の中どうでも良さそうなかったるい声に、牡丹は海の向こうの親友ナーラちゃんを思い、苛立つ
絶望的な貧困、最悪な治安、そして病と闘う可憐な少女のいたいけな姿が目に浮かぶのだ
「てんめぇ、もっと真剣に生きられないのか?世には不遇を強いられた可哀想な子供が少なからずいてだな!でも、必死に生きているんだぞ!」@牡丹
喜多野のHondaJetを消し飛ばしてやろうかと、それほどの勢いで左腕のキャッシュレジスターを振り回す
牡丹が喜多野に対して抗議をしているとき、八重葉は彼女の左腕のキャッシュレジスターに直径9cmの何もない円を見つけた
光を全く反射しない、ブラックホールの様な漆黒の直径9cm
自分の腰を手で撫でる
八重葉の腰にもあるのだ。直径9cmの円が
彼女が世界電波塔と一つになっており、彼女が世界電波塔である証
世界を変質させる恐るべき能力を有している証
彼女の友人も、直径18mの空間を消し飛ばすという常識外れの能力を有していた
それは恐ろしい事なのだが
人類にはまだ早い、理解しがたい、受け入れがたいテクノロジーなのだが
それは承知しているが、友人が自分に近しい境遇にある…不謹慎にも、心が安らぐのだ
強大な力を縦横無尽に操る牡丹に、心の安らぎを感じる
「分かっているのか!クソオヤジ」@牡丹
牡丹はアルバイトの経験が豊富で、大人の相手は慣れている。大人を怖がる自分とは違う
その友人は相変わらずだ
ならば、自分も相変わらずでいいのかもしれない。たとえ法外な力を得たとしても、それを行使することなく、平々凡々に日々を過ごしてゆく。それが許されて欲しいと、八重葉は願うのだ
『でもオジサン。もうこういうキャラだから』@喜多野
「開き直り、くっそ!で、なんだ?」@牡丹
『いや、』@喜多野
苛立ちすぎて、ジタバタと地面を踏み鳴らす、バイト戦士の少女
「お前!ホント、そういうところある!だから話が進まない!」@牡丹
『違…』@喜多野
「なーーーーにぃーーーーがぁーーーー!!??」@牡丹
『牡丹ちゃんが怖いの』@喜多野
「じゃあ、これでいいか」@牡丹
媚媚スマイルで頬に人差し指を添えて、ウインクしてみた
「おじ様ぁ、牡丹に無線のご用事ぃ、教えてぇ」@牡丹
『あ、それかなり親しみに富んでます』@喜多野
「感想は一つもいらないわ!!」@牡丹
『あれ?わ。あ、やばそう。本気でやばそう…牡丹ちゃん』@喜多野
「え?」@牡丹
『警察来るから、マッハで逃げて』@喜多野
「へ?」@牡丹
コオオオオォォオオオオオ!!!!
海の方から、ドスのきいたエンジン音が迫って来る
自動二輪が一台、海の上を時速300km超で爆走して来る
MotoGPモンスターの咆哮
海の上を走れる二輪なんて無い
間違いなくご同類
FAKE NEWSの住人
重機の現場運用担当
さてさて、あの暴走族は匿名結社か、警察か、
「いや、あのバイク、パトライトついてるし」@牡丹
警察だ。全然らしくないけど
喜多野はあの自動二輪を忠告していたのか
『じゃ。オジサン先に合流地点に向かっているので』@喜多野
「合流地点?何処?いつ話したそれ?」@牡丹
『そういうことなので』@喜多野
キィン…ジェットエンジンの音が遠のいて行く
「コラーーーーーーーッッ!!!!」@牡丹
現場を丸投げされてしまった
まぁ、オッサンが居ても、重機相手では屁のツッパリにもならない。早々に退散したのは正解
距離的にHI-SEASの主武装の有効距離圏外
牡丹の目にはMotoGPレーサーの後方を爆走してくる、重機が見えている
頭に血が上った雄牛の様な、巨大な鉄の塊
口?に、別の重機から食いちぎった腕を銜えている
あ、噛み潰した
本当に警察なのか?あのバーサーカー
あれはHI-SEASの副武装である機関砲では止まらないだろう
雄牛の向こうにもう一機、かなり離れた位置に射程が長そうな砲塔を持った重機が居る。あれも警察の手なんだろうな。近接戦闘向きのHI-SEASにとっては、あっちの方が厄介そう
いや…何よりも、警察に手を出して、公務執行妨害の前科が付くのはごめんだ
牡丹が、左腕のキャッシュレジスターを操作する
「すべからくに沈黙を。HI-SEAS」@牡丹
何もない空間から、巨大な腕が出現する
その指には日本刀のような爪が伸びており禍々しい
怯える八重葉
牡丹はケラケラと軽く笑う
「大丈夫、これ、あたしんだからぁ。つか八重葉、見えてたでしょ?」@牡丹
「うん、でも、間近で見ると迫力が違うというか」@八重葉
「アハハ。まぁ、乗って、乗って」@牡丹
「うん、」@八重葉
その瞬間
「永久橋!突進!!」
刀刃の爪を持つ腕が吹き飛ばされた
HI-SEASに左腕のキャッシュレジスターを介して繋がっている牡丹自身も吹き飛ばされた
HI-SEASがメクロン河永久橋に体当たりをされたのだ
「うっそ!こんなに速く!」@牡丹
加速したのだ
マリコのMotoGPの…永久橋の最高速度は、たったの300kmちょいではない
牡丹はメクロン河永久橋の突進能力に目を丸くした
侵略すること火の如し
「牡丹ちゃん!」@八重葉
八重葉はすっ飛ばされる少女に届かぬ手を伸ばす
「うが」
気がつくと、八重葉の背後に殺気の塊が立っている
殺気がめらめらと立ち上っていて、それは人の形に見えない
大人とか男子とか、強いものが苦手なその少女はすくみあがって後ろを振り返れない
「うが」
八重葉に向かって手を伸ばすマリコ
目に涙を浮かべて後退りする八重葉
怖い
怖い
恐怖に体がこわばって、走って逃げるとか、ましてやマリコの手を払いのけるなど出来ない
「小江戸さーん!」@墾
涙滲む恐怖を一撃でふにゃけさせるのーてんきな声
海の上を一人の少年が走って来る
子育ての苦労とか、気が合わない上司との軋轢とか、つけあがってキレる客がめんどくさいとか、そういった毎日の憤懣を微塵も有していないであろう、その力の抜けた走り
らん、らん、るーんと、走ってくる
その顔には見覚えがある
警察病院でベッドに寝ていた少年だ
ロボットを使って、おトイレへの脱走を助けてくれた
彼も千の目と大砲を持った重機を従えている
しかも彼は足の裏が重機とつながっている様に見える
彼の足の裏には直径9cmの何も無い漆黒の円があるはずだ
その少年は自分と同じ、重機と融合してしまった被害者に違いない
八重葉はそう思った
彼も自分と同じ理由で警察病院に入院していたのだと
その境遇に深く共感する
牡丹に感じて共感より、それは一段深い
そうか、そうだったのか──少女の脳内で情報の断片がつながり、一つの回答を得た。誤解なんだけど
少年は、自分と全く同じ被害者
「小江戸さん、大変な目にあったねー」@墾
少年はティッシュを取り出し、八重葉の目尻に浮かんでいた涙を抑え、ティッシュに吸い取った
「あれ?」@八重葉
少女は驚いた。自分は男子が苦手なはずだ。なのにされるがまま身を任せている
そういえば病院の時も、この少年が怖いという認識はなかった
「もう、大丈夫だから」@墾
少年の笑顔は波に流されるまま海を漂うクラゲの様にのんきだ
こんな人畜無害を絵に描いた様な少年に一瞬でも身構えたとは、そんな自分がバカらしくて、思わず顔がほころんだ
「ありがとう、お母さん」@八重葉
「お母さん?」@墾
「うが」
八重葉は恥ずかしさで真っ赤
なぜ、少年を母親と言い間違えてしまったのか
「あー、なんかね。中学のころ友達に”東新田の奥様”って言われてましたわ。一部の女子にも」@墾
なるほど。母性か
この少年は母性が深いから、自分は気を許せるのだ…八重葉はまた一つ合点がいった。今度は勘違いではない
八重葉が落ち着いたところで、改めてあたりを見渡すマリコと墾
GPS腕時計の情報と突き合わせる
「ひどいな…」@墾
海州の港は壊滅状態と言っていい
”ひどい”──その言葉が八重葉の心に突き刺さる
港をこんなにしてしまったのは、自分なのだ
「さっきのシザーハンドの重機がやったのかな」@墾
「違う!」@八重葉
墾の見解を八重葉は強く否定した
「違うの。あのロボットは、牡丹センパイは私を助けてくれたの」@八重葉
墾は顎を撫でる
墾はネットワーク越しに学校の名簿を検索した
いた、
嬉野牡丹
「やっぱりさっきの人、嬉野先輩?」@墾
少女は口が滑ったかと口を手で押さえて引き攣ったが、もはやその態度こそ少年の質問の答えになっていると観念し、首を縦に振った
「そうなんだ。まさか同じ学校に重機の現場運用担当者が3人もいるなんてね。あははは」@墾
こんなのんきな笑い方をする人物がいた者か
八重葉もつられて笑ってしまった。笑わされてしまった自分に気付いて、彼女は照れくさそうにうつむく
この男の子は他とは違うんだ。そう意識して、墾の顔をまじっと見た
「嬉野先輩はもう逃げちゃったみたいだね。要領がいいというか」@墾
何の他意も感じられない、屈託のない笑顔
それは自分を特別に意識してはいないということなのだが、それが心地いい
あと、牡丹センパイが無事に逃げれてよかった
あの、おっかない…
「うが」
マリコが二歩近付いてきた。何か話がありそう。めっちゃ肉食獣っぽくて、強そうで怖い
八重葉は反射的に墾の背中に隠れてしまった
「小江戸さん。マリコさん…ああ、この女性マリコさんって言うんですけど、警察の方で、ここで起きたこと話せますか?って」@墾
八重葉は少年の背中に居心地の良さを感じていた
例えるなら、そう。カラッとした晴天。さわやかな草原にポツンとある立木。その根元に座し、幹に背中を預けて転寝をするような心地よさだ
「あの…小江戸さん?大丈夫ですか?」@墾
八重葉からの返事がないので、墾は心配して手を差し伸べた
しかしながら男子が女子に軽々しく触れてはならない思いがあり、肩に手を置くこともままならず中空に手を遊ばせている
頭はさっき撫でたし…ほかに…ほかに…
その不器用な姿に、彼の優しさが表れている
「…大丈夫。話せます」@八重葉
八重葉はここで起こったことを思い出し、胸に決意が生まれ、そして言い直した
「すべて話します。話さないといけないから」@八重葉
「大丈夫…なんだね?」@墾
「きっと大丈夫じゃないから、話さないといけないの。わたしに繋がっているこのロボット。この化け物を何とかしないといけないから」@八重葉
墾と八重葉は、世界電波塔に視線を送った
この世界の我々には見えない側面に存在するその怪物体。巨大な機械。恐るべき変質の能力を有した重機
少年はか弱い少女の悲痛な決意が哀れでならない
で、どこに触れたらいいものか散々迷った挙句、少女の手を握った
「大丈夫だから。絶対、なんとかなるから」@墾
左手を握られて今更気づいた
少年の片腕、右腕、肘から下が無く、長袖の余りを結んでいる
「腕、どうしたの?」@八重葉
それとも、もともと片腕だったっけ?
少年は視線を泳がせた後、返事の間が開くのも説得力に欠けると、悪戯っぽく微笑んだ
「ああ、まぁ、かすり傷だよ。明日か明後日には元に戻ってるから」@墾
「え?治るの?」@八重葉
その疑問に対する、論理的な返答はない。もはや勢いに任せて言い切ってしまうのみ
「あはは!僕たちはFAKE NEWSの世界の住人だよ。腕くらい生えるさ」@墾
八重葉は思わず吹き出した
「そうね、」@八重葉
なんか、信じた
男の子とこれほど気安く軽口を言い合ったのはこれが初めて。楽しい
「八重葉ぁぁー!!!!」@嵐
鬼の風紀委員、夏野嵐。八重葉の無事な姿に感極まって、ボートが着岸するやいなや全力疾走
八重葉に抱きついた
正直、八重葉は生まれながらの強者である嵐が苦手だ
しかし、抱きついてきた腕を払いのけたり、肩を押し返したりして逆らうのも怖いので好きに抱きつかせている
「八重葉、無事で良かった。君に万が一のことがあったら、わたしは匿名結社を最も残虐な方法で壊滅させるに違いない」@嵐
今の一言、後半に向かうにつれて、やくざめいてドスが効いて行く
やっぱり怖い人だと八重葉は苦笑い
「フン、そうしてくれても構わんぞ、小娘」@創
「作戦成功、で、良いのかな?」@辰
創と辰がやって来た
「それにしてもすごい有様だね。これが世界電波塔の力ってやつかい」@辰
辰は腰に手を当ててため息
「いいや、違うな」@創
創は倉庫の陰に隠れていた緑色の生物を見つけた
怯えている様だ。これはその生物を刺激せぬように対応をする必要がある
彼は崖っぷちを歩く様な慎重な足取りで近付き、熱い風呂に入る様にゆっくりとその生物の前に座り、慎重に様子をうかがいながら、最終的にその生物の左手を握った
その生物の腕には、創達がしているのと同じGPS腕時計がまかれている
それを確認したかった
ディスプレイのホーム位置には”α”の文字
…潜入…捜査官…これが
「これが、世界電波塔の力だ」@創
「その腕時計…まさか…いや…うそだろ?」@辰
思考の混乱は辰に限ったことではない
その技をなした張本人、八重葉ですら
この緑色の生物が元人間
:
:
辰の顔から血の気が引き、腰が抜けた
嵐はこれを予期しており、そっと八重葉を墾に託して、辰を支えた
嵐は八重葉が墾と拒絶反応なしに話せていたのを見ていたのだ
だからとっさに墾に愛しい八重葉を預ける判断ができた
「辰。鬼すら恐れる闇の御庭番がその体たらくでは締まらないな」@嵐
「だからそういう役は、僕がやりたかったのに」@墾
可愛い辰きゅんに男前に迫る嵐を見て、墾は声を裏返して悔しがった
え?墾くんって、そういう人なの?八重葉は一歩距離を置いた
「ああ。辰くんのお母さんになりたい」@墾
あ、やっぱりそっちかー
男前に迫りたいわけではなく、母性で慰めたいわけですね
八重葉が墾のそばに帰ってきた
「恋人とか、飼い主とか、お父さんじゃないんだ」@八重葉
「辰くんは美少女だし、小動物だし。そういう人は多々いらっしゃるでしょうなぁ」@墾
「コラー!全部聞こえているから!!」@辰
辰の物言いに、墾と八重葉、二人並んで笑う
あんまり盛大に笑ったので、八重葉がよろけて、彼女の肩が墾の肩に当たった
やてもうた
自分の粗相に、少女はそう凍り付いた
しかし見たところ、彼女から見て被害者である男の子=墾は何事もなかったかのようにしている
不思議に思った女の子は、今度は故意に肩を当ててみた──やはり全く気にせず笑っている
というか、自分がぶつかっても微動だにしない。頑丈なものである。ひょろいナリをしているが、やはり男の子なのだなと思った
「やっぱり辰きゅんは最高だね」@墾
とか言って上機嫌なままだ
女の子の顔がパッと明るくなる。この男の子には何の気兼ねも遠慮もいらないんだ。それを理解した
その様子を、唇をわななかせてみていたのは鬼の風紀、夏野嵐
彼女は警告のためホイッスルを取り出して吹いた
「そのっ!なんかいい感じの異性交遊禁止!!風紀委員権限で校則違反!」@嵐
墾は首をかしげる。なぜなら彼には自分が八重葉といい感じである自覚がない
「意味不明ですが、小江戸さんを預けて行ったのはセンパイですよね?」@墾
「五月蠅い!お前の立ち位置!わたしがやりたかったのっ!!」@嵐
「こっちのセリフですよセンパイ!なんなら今すぐ入れ替わりましょう。辰くんをぼくに下さい」@墾
しかし、
八重葉が墾の後ろに隠れてしまった
完全に安全地帯にされている
彼女にとって嵐は並の男性をはるかにしのぐ強者。怖い人なのだ。墾といた方がよっぽど安心できる
その気持ちが素直に出た
「フン、随分と懐かれたな」@創
「ええっと、」@墾#困惑
墾は唐変木なので、状況を全く把握していない
その唐変木具合がまた、八重葉にとっては心地いい
「くそう!だが!その可憐さがまた尊い!!」@嵐
「フン、ちょうどいい。墾。現時点より、お前に世界電波塔の護衛を一任する」@創
それでは辰と過ごす時間が減るな。墾は2~3秒渋い顔をしていたが、まぁ、諦めて兄に敬礼をした
兄も敬礼で返す。上から目線の敬礼で
墾は八重葉に向き直って「僕の全てをかけて、君を守るよ」と言い放った
この時、墾以外の全員が…マリコですら、彼がジゴロをing系で実践しており、彼の一言が八重葉のハートを射抜いたことに気付いた
嵐は悔しさのあまり、口を酸欠の金魚の様にぱくつかせて、両手を強張らせている
辰は「東新田くん、やるねぇ」とつぶやいた
墾は、言葉遊び上のお約束として「ひ・ら・くって呼んでほしいな」と辰につぶやき返した
東新田兄が咳払いをする
「フン、丸く収まったようだな。では、撤収!」@創
嵐がぶんぶんと手を挙げる
「スイマセン!弱冠一名!決定に納得していません!八重葉の護衛役!再選考していただけませんか上官殿!!」@嵐
「撤収」@創
「上官殿ぉおおおおおっっ!!」@嵐
日本
事後の調査&後始末は海州現地のチームに任せ、世界電波塔奪還作戦のメンバー5人は速やかに日本に帰還した
今回の出陣において、嵐と辰の活躍はすさまじかった
何しろ一個中隊を事実上二人でほぼ壊滅に追い込んだのだ
加えて二人は二身一心流本家の子息
「よくやったね」の一言で済まされるはずがない
二人は勲章授与のため、警察の極東本局に向かうことになった
極東本局は中国にある
二人はスーツケースに自衛隊の制服を収め、護衛付きの装甲車両で飛行場へ向かう
二人は正式には自衛官ではなかったのだが、将来入隊し高官になることは決まっている
「まさか学生のうちに、この制服にそでを通すなんて思ってもみなかったね、嵐ちゃん」@辰
辰はスーツケースを撫でた
嵐のため息
「自衛隊の存在をアピールしておこうという意思が働いたのだろう」@嵐
「理由はどうあれ、制服を着るのはうれしいよ。決められた将来とはいえ、それを目指して精進してきたのだから」@辰
「お前はそれでいいさ。いや、私もか…まぁ些末な事さ。今日は自衛隊のアイドル親善大使みたいなものだ。せいぜい愛想を振りまいて来るさ」@嵐
辰が鼻で笑う
「嵐ちゃんが愛想だって?局長相手に説教を始めそうだ」@辰
嵐はアームレストに肘をつき、頬杖をつき、そしてため息をついた
「お前の中でわたしはどういう人間になっているのだ」@嵐
「言ったら怒るから言わない」@辰
「わたしだってアイドル的な笑顔くらいできるぞ」@嵐
辰は出来るだけ失礼な感じになる様に、右手で腹を抱え、左手で膝を叩きながら、口蓋垂が丸見えになるほど大きく口を開けてバカ笑いをした
「本当に失礼なやつだな。出来ると言ったら出来るぞ」@嵐
辰はここぞとばかりに延々と笑っている
嵐は唐突に「きらーん」と透き通ったアイドル声で発生し、右手のピースサインをおでこに当てて、笑顔でウインク
辰の全身が凍り付いた
可愛い
普段の嵐からは想像もできないほど、媚媚で卑劣なほど可愛い
やばい、嵐はやればできる子だった
それは少し考えればわかることだった
その長身をモデル体型と解釈すれば、嵐は整った顔立ちの正統派の美人なのだ
それも年頃の乙女ともなれば、男子を魅了するフェロモンを発散させていない筈がない
嵐は正統派アイドルとしての資質を持っていた
”夏野嵐の中にアイドルを感じた”──辰はそれが恐ろしくてたまらなかった
嵐は文武両道を3Dプリントしたような、カタログスペック上はOPPO Find Xの様に完ぺきな女
しかし、その完璧な彼女にも付け入るスキがあり、それが頑固で敵を作りやすい性格なのであった
それが味方どころかファン・信者を集めやすいアイドル性を身に着けたとあってはただ事ではない
辰にとって嵐は、幼馴染であり、生死を共にする戦友であり、二身一心流の片割れであり、人生のライバルなのだ
そう、ライバル。これは能力が拮抗しているからこそ成り立つ関係であって、能力に大きな差があっては成立しない
今、辰は嵐との間に大きな差を感じ、手の届かない高みに彼女が居ると感じている
最早、自分が兄弟子であるという面目など保ちようがない
それは屈辱ではなく恐怖なのだ
兄弟子として享受してきたものを失う恐怖
地位、名誉、財産、信用、愛。当たり前にそこにあると思っていたものを失うのは、恐怖以外の何者でもないのだ
嫌な脂汗を浮かべて、今一度よーく嵐を凝視する
何時もの愛想のかけらもない仏頂面だ。本当に、この様なふてぶてしい豪傑がアイドルなど出来るものであろうか?
疑念を払拭できない辰は、鬼の風紀委員に向かってコールを発動してみることにした
「あー、い、く、ぞ!嵐かわいい、超可愛い!嵐かわいい、鬼可愛い!」@辰
嵐はライブで熱唱するアイドルの様に、健康的な汗でキラキラと彼女のパーソナルスペースをデコって「ありがとう!」とアイドル的カリスマ性に富んだ、男性の心をわしづかみにするポーズをとった
背中をそらせ、胸を強調し、お尻を突き出してだ
正直、そそる
「クッソ!できていやがる!」@辰
辰は、装甲車の座席にて、自分の膝に顔をうずめてしまった
嵐は辰の心のうちなど気にもせず、意味もなく鼻から息を漏らした
そして何時もの仏頂面に戻り、正面を見据えて腕組み
「ほう、空港を目前にして渋滞か。時間がかかりそうだな」@嵐
辰は衝撃から立ち直れておらず、いまだ膝に顔をうずめている
「そうだね」@辰
「あ、そうだ。わたしと八重葉でアイドルユニットを組んで、全国デビューをするというのはどうだろうか。所属は自衛隊だが…」@嵐
表情不変の仏頂面で淡々と申されても、冗談なのか本気なのか判断に困る
「…いいんじゃないかな」@辰
「ユニット名は何がいいと思う?わたしにはその辺のセンスがなくてな。お前なら女性ホルモン多そうだからいい名前を生み出せると判断する」@嵐
「”桜RC”とか、いいんじゃないかな」@辰
辰は膝に顔をうずめたまま。女性ホルモンの下りに反論する気力もなかった
嵐は難しい顔をしている
「Reserve Candidateって、予備自衛官補ではないか」@嵐
「面目上、そういう扱いになっていると思うよ。俺たち」@辰
「ううむ。だが、辰の女性ホルモンがそう言うなら桜RCがもっともなのだろう。では早速上と掛け合ってみよう」@嵐
微塵の迷いもなくスマートフォンを取り出した嵐に、辰はぎょっとして上体をガバリと起こした
「え?本気なの!?」@辰
「うむ。東新田弟に恋の先手を打たれたからな。劣勢をひっくり返す妙策を思案していたのだ」@嵐
嵐に冗談は通じない
そして辰は、近い将来、自分が美少女アイドルになってしまう可能性に気付いていない
「まぁ…こんな感じ?とりあえずは」@幸子
廸佐高等学校
広報部
新城幸子は海州で起きた怪事件の隠ぺい工作をしていた
誰かがWeiboで海州の事件に関する投稿をしたら、その投稿を削除し、アカウントの主のスマフォに不正アクセスをして、データを抹消する
何も起きていなかったことにする
特に、八重葉の画像は全て消す
それが嵐の依頼であった
八重葉は目立つことを嫌う
彼女の顔が全世界に知れたなら、八重葉は恐怖で夜も眠れないであろう
嵐はその様に気を配ったのだ
アイドルやろうとか考えているくせに、そういうところはこまく気が回る。嵐
だが、流石の幸子でも一カ所、手が出せないサーバーがある
インターネットの情報には制限が設けられ、海州の事件について、なんの情報も出て来ない
有る筈なのに
幸子は椅子に座ったまま伸びをして、そのまま手を頭の後ろに回し、白い天井を眺めた
殺風景な港に突如現れた真珠の大地
しかも次の瞬間にはきれいさっぱり消えている
怪現象
あのサーバーに観測データがあるはずだ
カバンからハッキング専用にシステムを構成したノートPCを取り出す
OSはDebianをベースに彼女がカスタマイズしてカーネルからビルドしたもの
小一時間ほどそのサーバーに攻撃を仕掛ける
:
: 一時間経過
:
突然吹き出して、ケラケラと笑う
「だーめだわこりゃあ。中国入ったらヤバイわ」@幸子
腕組みをし、ため息をつき、思案するす
「ロシアのあいつらに踏み台サーバー紹介してもらうか…」@幸子
スマートフォンを取り出して耳にあてがう
国際電話
ロシアの時計を確認する
「えーと、なんだっけ…えーロシア語出てこい、私の脳がんばれ、、Привет!Давненько мы не разговаривали, да?」@幸子
「えー。全くの無駄骨だったわけだが──」@牡丹
ファミレスのテーブルを囲んでいるのは、中埜鐘、喜多野そして牡丹
牡丹はドリンクバーのウーロン茶をすすりながら、たらったらと恨み節
「あたしゃー30mも吹き飛ばされて、重機がなかったら即死だったぞ、即死ぃ」@牡丹
オッサン二人は女子高生に睨まれて、テーブルの上に置いたビールに手を付けられずにいる
ふと、喜多野がジョッキに手を伸ばした
「判っているのか?」@牡丹
喜多野は手を引っ込めた
「牡丹ちゃんは怖いなぁ」@喜多野
「おじさんを虐めないで欲しいな」@中埜鐘
「だまらっしゃい」@牡丹
牡丹は空になったコップをズダムとテーブルに叩きつけた
小さく溶けた氷が表に飛び散る
背筋をピンと伸ばして震え上がる二人のおじさん
「あー、」@牡丹
何か言いかけて、牡丹は立ち上がった
「ちょっと飲み物ゲットして来る。飲まないと損だから、うん…ンクバーだから」@牡丹
ぶつぶつと呟きながら、ドリンクバーへと向かう
「「ふぃー」」@中埜鐘&喜多野
おじさん二人は胸に溜め込んでいた緊張を、一気に吐き出した
「中埜鐘さん。牡丹ちゃん、キツイじゃないですか」@喜多野
喜多野はビールをチビチビとやりながら、スマートフォンを弄り始めた
「なんだ?不満か」@中埜鐘
中埜鐘が喜多野のスマートフォンを覗き込む
相変わらず職を探している
「ほう…保育士。お前がか?」@中埜鐘
「見守ってあげたいんですよ。子供たちを。道を踏み外さないように」@喜多野
「道を踏み外すって、お前の様にか?」@中埜鐘
「そうです。牡丹ちゃんしかりですよ。ほかにいなかったんですか?」@喜多野
「馬鹿言え!重機を扱える者は限られているんだ。しかも牡丹ちゃんほどの胆っ玉はなかなかいない」@中埜鐘
中埜鐘が熱く力説する
喜多野は興味なさげにビールをジョッキ半分まで一気に飲み干した
牡丹が戻ってきた
何故か両手にコップを持っている
「じゃあ、反省会の続きすっぞコラぁ」@牡丹
中埜鐘のジョッキはほとんと減っていないが、喜多野のジョッキは半分迄いっているので、彼が景気良く飲んだことが明らか
アルコールを摂取するなど、反省のかけらも見られない
「女子高生の手酌だ、有り難く思え」@牡丹
牡丹は喜多野のジョッキに左手のメロンソーダを継ぎ足した。全部
「なんてことするんだい」@喜多野
相変わらずテンションが低い
喜多野の場合、金は腐るほどあるので、ビールくらい、また注文しなおせばいい。つまりは金持ちの余裕である。だからテンションが低い
無論彼はビールを注文しなおそうと思った
しかし、今目の前にある、魔女が黒魔術で錬成した様な背徳的な色の液体に、実は全く興味がないわけではない
彼は、その液体を口に含んだ
中埜鐘は、口をポカンと開けてその勇姿に見入る
「喜多野くん。体張るね」@中埜鐘
「え?それ飲むかぁ??」──牡丹は嘔吐物でも見る様に冷ややかな視線を送っている
「あれぇ?」@喜多野
「どうした喜多野くん。吐きそうなのかい?気持ち悪いのかい?」@中埜鐘
喜多野は首をかしげている
「うーん…いや、この味、有りですわ」@喜多野
「「なにぃーっっ!!」」@中埜鐘&牡丹
驚嘆!
中埜鐘と牡丹の声が店内に響き渡った
彼らのテーブルに集まる耳目
牡丹はとっさに立ち上がって中埜鐘の頭を殴りつけた
「コ、コラ!オッサン達!ファミレスで大声出すな!この迷惑者め!」@牡丹
「えーっ!牡丹ちゃん。それ、ひどいなぁ」@中埜鐘
「やかましいわ!」@牡丹
牡丹は45度ずつ向きを変えながら「どーもお騒がせしました」と、作り笑顔でぺこぺこと8方向×2回頭を下げた
そして最後に今一度笑顔で中埜鐘の頭を殴りつけた
笑顔ではあるがマジ殴りである
「痛った!牡丹ちゃん!ちょっと今の厳しいから!」@中埜鐘
牡丹は周囲の興味が失せて行くのを確認した後、改めて椅子に座った
すると、喜多野がヘドロ色の液体が入ったジョッキを手にし、口に運ぼうとしているのが見えた
牡丹は喜多野に、3秒間でデコピン5連射を食らわせた
そして彼のジョッキを取り上げ、新しい生ビールを注文した
まもなく運ばれてくる生ビールのジョッキ。牡丹は新しいジョッキと入れ替えに「スイマセン手が滑ってこうなっちゃって」と、魔女のジョッキをウエイトレスに返した
下がろうとしたウエイトレスを喜多野が呼び止める
「えーと、ドリンクバーお願いします」@喜多野
喜多野はドリンクバーに行き、コップを一つ持って戻ってきた
彼は生ビールを4分の1ほど飲み、コップのメロンソーダを投入した
魔女のジョッキ弐轟が完成した
「ほほう」逆に感心する中埜鐘
頭を抱える牡丹
「お前のほんとそういうとこな、万死に値する」@牡丹
そう言われても、喜多野に他意も悪気も一切ない
困った顔をしながらも、彼は魔女の液体を口に運ぼうとする
「飲むな」@牡丹
牡丹の拳が喜多野の顔面にめりこんだ
警察病院
八重葉の精密検査が進められている
不安を隠しきれない彼女は、検査室の外、ガラスの向こうに墾の姿を見つけて、なんとか笑顔を保っている
「フン、本当に懐かれたものだな」@創
創はホットコーヒーをすすりながら、弟に視線を送った
墾は照れ臭さを演出するため、頭を掻いた。照れ臭くて本当に頭を掻く人物は稀であるに違いない。男女の関係についてさしたる興味もないその少年は、漫画やアニメで見たことがある状況を、反射的にモノマネしたのだ
墾の目から見て、八重葉は辛そうに見える。無理をして笑顔を作っているように見える。放っておけない
「兄さん。小江戸さんはいつまで病院に居なくてはいけないの」
「いつまで?むしろ我々が聞きたい。世界電波塔と一つになってしまった彼女を分離する──そのめどが立つまでだ」@創
「そう…」@墾
「お前こそいったん可視側に戻ってこい。高い適性があるからと言って、不可視側にいずっぱりはよくない」@創
「うん…」@墾
八重葉と目が合った。彼女はちらちらと墾の方を見ている
それこそが、笑顔の裏に隠された彼女の不安
少年はそれが哀れで、笑顔で手を振った
夜
八重葉の病室の周囲には20名からの武装警官が護衛についている
敵から八重葉を守るためはもちろんだが、彼女には脱走の前科がある
窮屈に感じる。壁の向こう、天井の上、床の下に武装警官の存在を感じる。彼女のちいさなちいさな日常が遠い
ふと、墾の笑顔が心に浮かんだ。50%ほど美化された状態で
「東新田くん…」@八重葉
心細さに、彼の名をつぶやかされていた
「ひ・ら・くって、呼んで欲しいな」@墾
彼の声が聞こえた
しかし、その後ドアをノックする音がし、落胆する
きっと、ドアの向こうにいるのは警察の人間だ
彼の声が聞こえたのは、自分の乙女心が作り出した幻聴だったに違いない
「小江戸さん。大丈夫?」@墾
彼の声だった。やはり墾の声だった。彼は来てくれたのだ。会いに来てくれたのだ
少女はドアへと走りかけたが「う、うん。今、ドア開けるから」と言いながら、鏡の前で髪型や服をなおした
「よし」@八重葉
小さく拳を握りしめてドアを開けた
少年がそこに立っている。いつもの締まりのない、ゆるい笑顔で
「でへへー、」@墾
手にはカフェラテが入ったマグカップ
右手は普通の白いマグ
左手にはいちご柄の可愛らしいマグカップ
八重葉の脳裏に電が走る
可愛らしい苺マグの後ろに女性の影がちらつく
「か、可愛いマグカップね」@八重葉
いちご柄を指さす。八重葉の大人しい性格では「誰のマグ?どの女から借りてきたマグ?なんて雌ブタの持ち物なの?」とは聞けない
「ああ、駅前で買って来たんだ」@墾
「私のために?」@八重葉#キュン
「うん。何か温かいものを飲んでもらおうと思って。この病院、コップは持ち込みなんだ。小江戸さんは身の回りの物そろえる暇もなかったと思って」@墾
「それで…わざわざ?」@八重葉
「えっと、迷惑だったかな?陣中見舞いのつもりだったのだけれど」@墾
「そ!!そんなことは絶対にあり得られないです!迷惑なんてムリです!!」@八重葉
八重葉は必死に否定しようとするあまり、日本語がおかしくなってしまった
「よかった。マグカップは嬉野先輩に選んでもらったんだ」@墾
八重葉の顔色が変わる
「え?牡丹センパイと買い物したの?二人で?」@八重葉
低い、絞り出すような声による質問。八重葉の大人しい性格では「デートしたってこと?できてるの?いつの間にくっついたの?」とまでは聞けない
「うーんとね、スマートフォンでマグカップの棚の写真撮って、嬉野さんに選んでもらったの」@墾
「牡丹センパイの電話番号、知ってたんだ」@八重葉
八重葉の大人しい性格では「なんで牡丹センパイの番号知っているの?私たちだってまだ交換してないわよね?やっぱりできてるの?」とまでは聞けない
「嬉野先輩は海州での一件以来重要参考人だからね。警察が連絡先を知っていたんだ。ほかに相談できそうな女子知らなかったから──」@墾
「そうだったんだぁ」@八重葉
墾のあずかり知らぬところで、疑惑は発生し、自然解消した
「うん。冷めないうちにどうぞ」@墾
差し出されたいちご柄のマグカップを受け取る
温かい
一口カフェラテをすする
本当に暖かい
自然と涙が出てきた
肩が小刻みに震える
「大丈夫?」@墾
墾は、少女がマグカップを持っていられないと判断。彼女の手からマグカップを受け取り、テーブルの上に置いた
女子の身体に気やすく触ってよいものか迷ったが、状況が状況だけに自分がやるしかないと覚悟を決め、彼女の背中を撫でた
少女の涙は止まらず、小さな手で涙をぬぐい続ける
「なんで、なんでこんなことに」@八重葉
「小江戸さん、」@墾
「嵐先輩とか、わたしよりすごい人はいっぱいいるのに、なんでわたしなの?」@八重葉
少女につながっている鋼鉄の化け物。警察は化け物と少女を含めて、世界電波塔と呼ぶ
少女は、あらゆるものを変質させる、恐るべき力を持つ
「僕も同じことを考えたことがあるよ」@墾
「…」@八重葉
「兄さんの方がずっと優れているのに、カミオカンデは僕みたいな取り柄無しが動かさざるを得ないんだ。荷が勝ちすぎている。僕はマリコさんの様には出来ない」@墾
八重葉は首を振る
「東新田くんは出来ていた。わたしとは違う。右腕を犠牲にしてまで、わたしを助けに来てくれた…って、本当に元通りに生えたのね右腕」@八重葉
今更、墾の腕が、両方そろっていることに気付いた
「え?あっ!うん!ま、まーいいじゃないか右腕は!それより、僕がちゃんとやれていたなんて誤解だよ。兄さんやマリコさん、そして嵐先輩がすごかっただけさ。勿論、辰くんもね」@墾
墾は世界電波塔の調査を進め、最終的に彼女が平穏に暮らせるならば、それが一番だと考えていた。今が、彼女の頑張りどころだと考えていた
だから、彼女は病院にとどまるべきだと信じた。彼女を支えるために毎日彼女のもとに訪れ、話をした
しかし、彼女と話せば話すほど、彼女を知るほど、彼女はか弱い存在でその心は限界に近付いていると確信せざるを得ない
もう、これ以上は無理だと思った。彼女が哀れで、それ以上に心配で、そう提案せざるを得なかった
「小江戸さん。脱走しちゃおうか」@墾
少年が、まるで近所のコンビニにでも行くようにそう誘うので、少女は少年の口調と言っている内容の温度差に混乱し、きょとんとしている
「大丈夫。僕のカミオカンデなら、君を家に帰してあげられるよ」@墾
「でも…」@八重葉
大人は怖い。怖い大人に逆らうのは恐ろしい
「小江戸さん。信じて。何とかするから。頑張るから」@墾
少女は、少年ののんきな笑顔の先に芯のある決意を見つけた。母親のような
「東新田くん」@八重葉#キュン×2
「ひ・ら・くって呼んでほしいな」@墾
大人に逆らう恐怖から、明確にYESとは言えない。それは少女の心の弱さに由来する卑怯
少年は、毎日の会話の中で、少女の優しさも弱さも理解していた。だから明確なYESは必要なかった
責任はすべて、自分が背負う覚悟だった
少年は叫ぶ
「千の目を見開け!カミオカンデ!」@墾
何もない空間から鋼鉄の腕が現れ、少女を抱き上げた
「じゃあ、帰ろうか。小江戸さんの家に」@墾
鋼鉄の腕が、病院の壁をぶち破った
次の10話向けの伏線も今回で大体はり終わった
残り二話でまとめるだけ
あ、マリコの素性匂わせておかないと。10話までに入れておけばいいか
次の10話分の構成は8割がた完了
次の10話で完了で行けそう
ちゃんと、この物語のメインテーマ「それが正しいからと言って、本当に大きな変化を受け入れられるのか」って話、収まりそう
その為に、色々な境遇、立場、性格のキャラを作り出したのです
どのキャラも、メインテーマの判定のために必要なのです




