表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第7話「4月30日 AM7:11~」

スーダンが中国で釈放された下りは、後々…って次の10話分だが…中国が主人公の前に立ちふさがる伏線になっている

今時、トランプみたいなコメディアンが率いるUSアーミーより、習近平統率の中国軍のが圧力ある

先週は投稿直前になって「主人公に相対する=全中国が敵に見えるな、読者視線で」と気付いて、とりあえず次回送りにした。高々数行だし。話通じるし

中国を丸ごと悪にするのは意図に反する

結局、中国は巨大かつ複雑で、様々な思惑が入り乱れているという設定にした

世界電波塔

─ 四人の転校生 ─

第7話「4月30日 AM7:11~」


”海州室消失”

海州室とは北朝鮮は海州の倉庫の一角を示す

潜入捜査官が、八重葉(やえば)…世界電波塔奪還作戦最前線の拠点として、そこを抑えた

既に機材を搬入してあって、作戦室として機能するようにしてある

それが…消失?

最初に気付いた(ひらく)は、些細なシステムのトラブルだと高をくくった。

兄の(はじめ)は海中深くで、敵の潜水艦に取りついていた

警察(ラ・インビジブル・ポリス)重機(パンドラスマシーヌ)…具体的には永久橋とカミオカンデ索敵の任についている、北朝鮮の旧式の潜水艦

上面は甲板になって居て、後方に小型のボートが備え付けられている

これを奪いに来たのだ

彼も、GPS腕時計の通知に気付いた

”海州室消失”

(はじめ)は海州室が匿名結社(アノニマスセナクル)の襲撃を受け、作戦室としての機能を失った可能性を考えた

潜水艦から切り離したボートが海上へと浮き上がってゆく

水中スクーターのハンドルを握った(はじめ)は、ボートを追い越して浮上する

18m/分を超えて浮上をしないこと。そのルールを守ってはいられない

その上昇速度は、彼の急く気持ちと同調している

悪い、予感がする

そして、悪い予感ほどよく当たる

海面まで待てず、海州の潜入捜査官にテキストメッセージを投げる

「無事か」

間も無く海上に浮かび上がり、暗い雨の中返事を待つ

ボコン

ボートが腹を上にして浮かび上がってきた

(はじめ)はボートの上に立ち、片側の縁を掴んで、全体重をかけてひっくり返そうとした

しかし、これが中々容易ではない

2度3度と挑戦して、これは一人でやる仕事ではないと確信した。あまつさえ(はじめ)は右足に力が入らない

(あらし)(たつ)に無線をつなぐ

「私がいる場所に集合せよ。撤収だ」@(はじめ)

『撤収?なんだ、生きて帰れるのか?』@(あらし)

(あらし)(たつ)は、この場の敵兵全員を道連れに、海の藻屑と果てる覚悟であった

『マリコさん達と合流するんすよね』@(たつ)

「無駄口はいい。早く来い」@(はじめ)

『何を急いでいる?ひょっとして海州室が消失したと言う話か?』@(あらし)

『嵐ちゃんと”創さんの段取りかな”と話していたけど…違うんですか』@(たつ)

「ああ違う。状況確認中だ。先ずは早く来い」@(はじめ)

状況確認中=状況が明らかになって居ない=何が起こっているのかわからない

それだけで三人の間に緊張が走る

海州室は潜入捜査官を要しての念には念を入れた仕込みだ。明らかでないわけがない

7分30秒。その時間で、間違いなく八重葉(やえば)を奪還する

したがって、すべてが明確でなければならない

”海州室消失”

この異常事態に、当然、学生二人の口調も重く変わる

『了解した』@(あらし)

『到着まで4分』@(たつ)

兎に角合流だ

無線を切る

(はじめ)は朝鮮半島がある方角を見やる

それにしても返事が来ない

海州の潜入捜査官から返事がない

GPS腕時計の情報をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で確認すると、彼の…潜入捜査官の反応はある

彼を示す記号は「α」。「α」の一文字は海州の地に点灯している

死んではいないはずだ

「何故、連絡してこない」@(はじめ)

鉄面皮のエリートが、思わず声を荒げてボートの腹を殴りつけた

悪い予感がする

悪い予感がするのだ

「雨め、」@(はじめ)

ザザザザザザ

重たくみっちりと降る暗い雨が、凶兆を印象付ける


「!」@(ひらく)

カミオカンデの目が、分厚い雨の向こうにバケツを被った少年を見つけた

そして、彼のそばに段ボールを被った少女がいないことに気付いた

ディープ・ソートとディープ・ブルー。2体そろって「ディープ」

それが今、半欠けの状態にある

(ひらく)は何もない空間からHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を一つとりだした

「マリコさん。起きてください」@(ひらく)

気持ちよさそうに寝息を立てている野獣系の女をゆすり起こし、頭にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をかぶせた

「うが?」

「今、映像を送ります」@(ひらく)

雨の海にたたずむ、バケツを被った少年

「一人みたいなんです。SPring8はどこかに潜んでいると思いますが…それでもディープは半欠ってことです。距離は4kmちょい…罠と言う可能性もありますが…」@(ひらく)

のんびり屋の少年は、彼女に対する質問の方法を間違えたと後悔した

イキナリ仇敵の姿を見せたことを

マリコにとって被り物の二人は幾度も刃を交えた、倒すべき相手

好機だろうが、罠だろうが、無論劣勢の渦中だったとしても、敵の姿を見たが最後

獣の匂いがするその女は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を掴むと、外すのも面倒にして握り割ってしまった

肩に引っ掛けていたFuryganのジャケットに袖を通し、ジッパーを上げる

彼女は彼女の自動二輪、MotoGPレーサーにまたがると、エンジンに火を入れ、重たい雨を押し返すように、天に咆えた

「永久橋!突進!!」

一瞬ウィリーしたかと思うと、三回ほど後輪を空転させ、後は弾丸の様に海の向こうに消えて行ってしまった

(ひらく)も、カミオカンデの最大戦速で牙を剥いた雌の虎を追う

「マリコさん!無茶は止してくださいよ!」@(ひらく)

無線で叫んでは見たが、彼女の心にちゃんと届いたかは定かではない

「うがあああっっ!!」

暗く冷たい雨の中、マリコだけ熱く燃えている


北朝鮮、海州

造船所所有のドック…のあったところ

「美しい」@八重葉(やえば)

少女は、小江戸八重葉(こえどやえば)は辛そうに涙を流していた

そこはもう、磯臭くて油が飛び散っている汚らしいドックではない

大粒の真珠が敷き詰められた大地

清らかな湖畔に彼女は立っている

少女は地下詰所で囚われの身であった

今は、美しい景色の一部になっている

神話の湖畔にたたずむ乙女。そう言う景色

20m先の湖底が見える、エメラルドグリーンの湖水は陽の光で柔らかく輝いている

そう、この港だけ、ぽっかりと雨雲が無い

サルスベリの様なすべすべした感触の樹皮を持つ木々

密生する灌木は多肉植物の様で、淡い緑色。日光が透き通っている

それらを取り囲むように、可憐な黄色い花が咲いている

透明鱗を持つ飴細工の様な魚が跳ねた

この美しい空間を創造した、神たる八重葉(やえば)に一礼をする様に

そう、美しい空間

夢の空間

彼女がこの数日見続けていた夢

夢の風景そのものであった

世界電波塔(せかいでんぱとう)が、第二の脳を通じて少女に見せた、夢の風景

美しい、只々美しい、

挿絵(By みてみん)

「本当に美しい」@八重葉(やえば)

少女は辛そうな表情で涙を流していた

腰の骨から、何か得体の知れない、法外な力とつながってしまった

彼女の腰には直径9cmの光を全く反射しない円がある

少女は自分が法外な力そのものになってしまった事実を知った

この美しい風景は自分の仕業なのだ

元は小汚い船のドックであった

それを自分が変質させた

浮世のものであるべきか、夢の世界に

恐ろしい

自分は魔女になってしまった

人々に畏怖される、神仏と同格の魔女に

巨人がそうであったろう、竜がそうであったろう、神話に届く存在

ばかな、彼女は平凡な娘

自分が恐ろしくて、悲しい

そんな彼女の手を握る、小さな手があった

「慰めてくれるの?」@八重葉(やえば)

身長は120cm程度、二本の腕と二本の足。直立歩行をする

緑色の透き通った体

その生物の腕には、(はじめ)達と同じGPS腕時計が緩く巻き付いていた

GPS腕時計のディスプレイのホーム位置に「α」の一文字


「え?マジ?」@喜多野(きたの)

HondaJetで北朝鮮に向かっている喜多野(きたの)牡丹(ぼたん)

喜多野(きたの)は相変わらずスマートフォンをいじって職を探している

その手が突然飛び込んできた無線に止まった

「世界電波塔って、八重葉のことか?」@牡丹(ぼたん)

後ろの方の座席でアニメを見ていた牡丹(ぼたん)。無線を聞いて、喜多野(きたの)がいる操縦席までやってきた

顔を覗くがなにしろこのオッサンは感情の起伏に乏しく、事態の緊急度がつかめない

「やれやれ、」@喜多野(きたの)

飛行機は大きく進路を変える

「わわっと!」@牡丹(ぼたん)

牡丹(ぼたん)はよろめいて、喜多野(きたの)の頭髪をつかんだ

「痛たた」@喜多野(きたの)

「お前が乱暴な操縦をするのが悪い」@牡丹(ぼたん)

「牡丹ちゃんかんべんしてよ。おじさんくらいの年になると、毛髪の一本一本が貴重なんだよ」@喜多野(きたの)

「だからおめーが悪い。わたし悪くない」@牡丹(ぼたん)

HondaJetが高度を下げて行く

雨雲の下、雨の中を飛ぶ

「視界悪いな」@牡丹(ぼたん)

それでも海上に小さなボートがぽつんといるのが見えた

スーダンのボート

彼はSPring8のターゲットスコープをずっとHondaJetに向けていた

常人には見えないが、死角空間(イグノアドエスパス)重機(パンドラスマシーヌ)が居る。敵か味方か、HondaJetに現場運用担当(ピロッツ)が乗っているに違いない

被り物の二人、マリコ、(ひらく)牡丹(ぼたん)、そして八重葉(やえば)現場運用担当(ピロッツ)の中でスーダンだけ、死角空間(イグノアドエスパス)を認識する能力がない

少年は射撃の腕がたつ捨て駒として、被り物の二人に選ばれた。無価値であるがゆえに、SPring8を任された

彼はSPring8のことを、いや重機(パンドラス・マシーヌ)の多くを知らない

少年が手にしているSPring8のガングリップはディープシステムにつながっており、ディープの支配下で彼はSPring8の能力を行使している

さて、少年の頭上を通過中の小型ビジネスジェット機が向かう先は、どうやら海州

敵機ならば撃ち落とす

褐色の少年兵は、海州の作戦室に無線を入れた

無論、ビジネスジェット機の所在を確認するためだ。被り物の二人に聞いてもいいが、彼らは一言多い

ところが、無線に全く応答がない

それもただ応答がないのではない

無線機そのものの応答がない

携帯電話で言えば、電源が入っていないか電波の届かないところにいる、それと同じ状態なのだ

「馬鹿な」@スーダン

少年兵はターゲットスコープの中心にHondaJetを捉え続けながら、繰り返し海州の作戦室を呼び出す

何か…凶事の匂いがする。今までに何度もこの匂いを嗅いだ。思い違いではない

その時、

『スーダン!何をしている!!』@バケツを被った少年

少年兵は主人のただならぬ悲鳴にハッと我に帰り、ターゲットスコープを、バケツを被った少年の方に向けた

バケツを被った少年は、マリコのMotoGPレーサーに跳ね飛ばされていた

『ぐわーっ!』@バケツを被った少年

無線から悲鳴が聞こえてきた

少年の声だ。頭にかぶったバケツで声がくぐもっている

「ちっ!」@スーダン

やられた

ディープシステムは未だ片肺の筈

マリコのメクロン河永久橋(えいきゅうばし)に狙いを定める

彼が手にしているターゲットスコープのモニタには映っている

マリコのそばに立つ、重機(パンドラスマシーヌ)の姿が

それはこの世界の人の目には見えない側面に位置している

悲しいかな戦争の道具

人類は、死角空間(イグノアドエスパス)という新たなるフロンティアを得て、まず最初に兵器を作った

そして、その褐色の少年も、命を売る戦争の道具

少年兵スーダンは引き金を引く瞬間が好きだ

その瞬間、彼は無心だ

全てを忘れ、無心だ

己の不幸も、妹の不幸さえ頭の中から消える一瞬

寝ている時でさえ、悪夢となって少年を悩ますタチの悪い心の影が、引き金を引く一瞬、火薬が放つ火花の中に消える

スーダンは12km先のメクロン河永久橋(えいきゅうばし)を狙って、引き金を引いた

SPring8はあらゆるものを加速し高速で射出する

例えば今は、直径300mmの砲弾だ

「止まって見えるよ。カミオカンデの目にはね」@(ひらく)

(ひらく)がマリコに追いついた

カミオカンデの千の眼。対象物の居場所が分かっているならば、千の眼全てを一点に集中できる

さすれば砲弾ごとき、止まって見える

のんびり屋であるはずの少年は、恐るべき身体能力を発揮して、飛来する300mmの砲弾に向かって跳躍する

人造の身体の本気

その規格外の出力に、衣類は耐えかねて裂けてゆく

「僕の右腕をディープ・ブルーの駄賃にくれてやります!マリコさん!やっちゃってください!!」@(ひらく)

少年は300mm砲弾を右手で殴りつけた

「カミオカンデには見えていたぞ!ここだあっ!」@(ひらく)

爆裂する少年の右腕。300mm砲弾は斜め天空にそれて行く

これで、マリコの永久橋はやり放題

よだれを垂らして牙をむくのは野生の女

「永久橋!!突進!!!!」

いったい何が起こったのか?何が起こっているのか?

全ては死角空間(イグノアドエスパス)で起きている

我々には何も見えないのだが、新幹線同士が最大速度でぶつかり合ったような破壊音がして、大気は震え、雨粒が四方八方にはじけ跳び、その場にいた三人も吹き飛ばされた

(ひらく)は爆風に揉みくちゃにされながら、狂った様に笑い叫んだ

「ディープの片方!撃破―っ!」@(ひらく)

突き上げた両腕

右腕は肘からだらりと下に垂れている

腕の裂けたところから、ジュラルミンとカーボンファイバーと配線が見えている

砲弾を殴り、腕は破裂する様に砕け、機械の体が見えている

マリコはまったく気にしていない

しかし科学の身体を有する、少年自身の目がそれを気にしている

(ひらく)は左手で右腕の肘から下をむしり取り、左手と口で破れた袖を結び、むき出しになっている機械の体を隠した

「きゃあああっ!!」

重たい雨音を引き裂いて、少女の悲鳴が響き渡った

Amazonのダンボールを被った少女が戻ってきたのだ

彼女には我々には見えない死角空間(イグノアドエスパス)が見えている

無残に破壊されたディープ・ブルーが見えている

ディープというシステムは、ディープ・ソートとディープ・ブルー、二機の重機(パンドラスマシーヌ)が揃って初めて成り立つ

悔やまれる

一人にするべきではなかった

この様なことになろうとは思いもよらなかったが、彼を一人にすべきではなかったのだ

ディープは常に一対揃って行動すべきだったのだ

バケツの少年は、段ボールの少女を気遣って一人になったが、二人が離れ離れになった瞬間、気遣われるべきは少年の方であった

そんな簡単な計算を間違うとは、この不穏な雨天に不幸を運ばれたのかも知れない

バケツを被った少年は呆然自失、海の上に弱々しく横たわっている

「マリコさん。もう一機はあっち。12km先にいます」@(ひらく)

ダンボールを被った少女は「もう一機」と聞いて自分のことだと思い、恐怖に身を縮めた

しかし、よくよく聞けば「12km先」。狙いはスーダンの様だ

ホッとしたのと同時に、もう自分は、反欠けとなったディープ・ソートは、敵の目から見てさえ戦力の勘定に入っていないのだと思い知らされた

マリコと(ひらく)がその場を去った後、ダンボールを被った少女は、バケツを被った少年に肩を貸して起こした

自分が一方的に叩きのめされるかもしれなかった恐怖と、まったく相手にされなかった屈辱に膝を震わせて

「大丈夫?唐揚」@段ボールの少女

「…名前を呼ばないでくれ。何のために顔を隠している」@唐揚=バケツの少年

しかし少女は激情に耐えかねて、激しく首を振っている

「私の名前を呼んで、」

「おい!」

「お願い…」

少女は酷く震えていた

少年は、少女の心の痛みに負けて、その名を口にした

「…檸檬」

少女のすすり泣く声が聞こえる

完全性を失った悲しみ

自分という存在がひどく無価値に感じる

肩を預け合う二人の姿。比翼の鳥

バケツを被った少年=煙唐揚(けむりからあげ)が何かに思い至り顔を上げる

無線

「スーダン。直ちに撤退しろ。今回は我々の負けだ」@唐揚(からあげ)

『イエス、サー』@スーダン

言われずとも、少年兵はすでに撤退を開始していた

ディープ・ブルーが破壊された瞬間、少年は被り物の二人を見限って、見捨てて脱兎のごとくボートを走らせていた

無線を切った少年兵

「あの無能どもめ」@スーダン

嫌味に鼻を鳴らす

今唐突に思いついたのではない。以前からずっと、会った時からずっと、そう思っていたのだ

バケツの少年=煙唐揚(けむりからあげ)と、段ボールの少女=浅間檸檬(あさまれもん)は能無しだと

何故、天才の名をほしいままにした優秀なスタッフが、あの口先だけのヒットラーに首を垂れるのか理解できない

少年兵は、(はじめ)に捕らえられた後、日本から中国の刑務所に移送された

死角空間警察(ラ・インビジブル・ポリス) 日本支部関東第2ノードから、中国にあるアジアブランチ本部へ引き渡すという形でだ

その後、被り物の二人は高い金を使って裏からスーダンを釈放させた

中国の本部は巨大組織であり、複雑怪奇。裏で匿名結社(アノニマスセナクル)と繋がっている者も少なからず居る

褐色の少年兵は、被り物の二人が彼のためにいくら使おうが、恩に感じることはない

二人はスーダンが必要だから金を使っただけで、必要なければ見捨てるし、暗殺すらする

そんな輩に心酔する了見に、微塵も同意するところが無いのだ


「フン、三人の力を合わせなければこのボートは起こせん。いいな」

「「「せーのっ」」」@(はじめ)(あらし)(たつ)

(はじめ)(あらし)(たつ)の3人は、協力してひっくり返ったボートを起こしている

そこに(ひらく)からディープ・ソート撃破の一報が飛び込んできた

「「やったー!!」」@(あらし)(たつ)

歓声と共に学生二人が手を離したので、折角起こしかかったボートがまたばしゃんとひっくり返った

「コラ、お前ら。ボート起こしてから喜べ」@(はじめ)

「とか言いながら、なんだ東新田兄?そのガッツポーズは」@(あらし)

(あらし)の突っ込みに(はじめ)は全く悪びれる様子がない

「ボートの引き起こしは、お前たち二人で十分と判断したから、私はペットの大金星をささやかな方法でたたえたのだ」@(はじめ)

あんまり自信100%で話すので、(あらし)は最初、(はじめ)が正しいことを言っているのだと誤認した

しかし、すぐに(はじめ)の考えがおかしいことに気付いた

幸いなことにそれは、ちょっと考えれば気付ける類のものであった

「東新田兄」@(あらし)

「なんだ」@(はじめ)#えらそう

「質問が二つある」@(あらし)

「言ってみろ」@(はじめ)#えらそう

(あらし)は咳払いをした

「先には” 三人の力を合わせなければボートは起きない”と言ったが、”二人で十分”今更どういう心変わりか?」@(あらし)

「フン、世の中の(ことわり)を解せぬ小童めが」@(はじめ)

「保護者の旗を振って威張る大人めが」@(あらし)

この風紀委員は気が強い。カチンときた。喧嘩上等と声を荒げる

その表情を見て少女の気性を察したエリートは、大人をふるまって声のトーンを下げた

「この世はうつろいやすく、常に変化を続けている。とりわけ我がペットのマリコが大金星を挙げたとなれば更なり」@(はじめ)

「なんの話をしている?」@(あらし)

「フン、先ほどのお前たち。勝利の歓喜に溢れいでた膨大なパワー。それを何故、ボートを引き起こす力に使わなかった?」@(はじめ)

「お前こそそれな!東新田兄!」@(あらし)

お互いに絶対轢かない二人。一言衝突すれば、問答は千日続く。(はじめ)は今々の話題を打ち切り、話を先に進めた

「で、二つ目の質問はなんだ」@(はじめ)#えらそう

「マリコさんがペットって、あんた本気か」@(あらし)

「フン、愚問だな」@(はじめ)

「まて、」@(あらし)

「何故、人の話を遮る。小娘」@(はじめ)

「話を正しい方向に軌道修正したいからだ」@(あらし)

「はて、今までの私の発言のどこに、軌道修正の必要があったか?むしろお前の礼儀のなさを正すべきでは?」@(はじめ)

話がかみ合わない。自転車で例えるなら、8スピードのドライブトレインを11スピードのチェーンで駆動しようと試みるようなもの

(はじめ)(あらし)の会話はすれ違いと言うよりは、張り手の応酬…主義主張性癖の突っ張り合い

今更それは良しとしよう

良しとして、概ねさておいてもこのエリート、

頭が良すぎると、何か常識を逸脱してしまうようだ

人間をペット扱い?

風紀委員は(はじめ)の異常性に声を詰まらせた

「この者、末期にて救いがたし…」@(あらし)

雨が上がり、晴れ間が見えてきた

いよいよ敵に視認されやすくなる

「嵐ちゃん。もう、何でもいいから早く行こうよ。敵に見つかるって」@(たつ)

三人はボートを起こした

ボートのエンジンを始動する

この音が思いの外勇ましくて、敵に発見されることを危惧したが、それは杞憂であった

敵軍はすでに撤退している

(はじめ)(あらし)の口喧嘩で、全然気づかなかったけれど

やはり海州で何かが起こっているのだ

雲の間から、太陽が追いかけてくる

ギラギラと日光に追われて、ボートは波の上を跳ね進む

三人。FAKE NEWSの住人。SNSの闇が住処

陽の当たる場所はすごしにくい

三人。闇を追って潜む


「なによ、これ」@檸檬(れもん)

Amazonの段ボールを被った少女、浅間檸檬(あさまれもん)は、褐色の少年兵スーダンが送ってきた映像を見て絶句した

海州にある小汚い造船所のドック。彼女はそこが嫌いだった。自分の品格にふさわしくないと

しかし、だからと言って…

瞬間的にこの様な変質をもたらすなど、科学的に可能なのか?

彼女は現代の科学では説明できないその現象を、変質の魔法を信じることができた

なぜなら彼女は世界電波塔(せかいでんぱとう)の力の本質を心得ていたからだ

世界電波塔(せかいでんぱとう)ならば、それが可能であると知っていた

そしてスーダンが送ってきた映像にはあの少女が映っている

小江戸八重葉(こえどやえば)

世界電波塔(せかいでんぱとう)に選ばれ、今や世界電波塔(せかいでんぱとう)そのものとなった少女

少女はエメラルドグリーンの湖畔、真珠の絨毯の上、膝を抱えて座り込んでいた

檸檬(れもん)は、バケツを被った少年=煙唐揚(けむりからあげ)に視線を送る

彼は、鋼鉄の腕の上に力なく横たわり、やっと晴れ間が見えてきた天空を、茫然として見上げている

ディープ・ブルーを失った喪失感

巨大な力を失い、今やただの子供となった恐怖

わずかな判断ミスで大きな失敗をした後悔

喪失感、恐怖、後悔

バケツを被った少年は負の感情に押しつぶされている

自信家で、完璧主義者であったからこそなおさら

今の彼は、とても使い物になる精神状態とはいいがたい

「くっ!」@檸檬(れもん)

檸檬(れもん)は耐え難い不安に襲われた

片割れを失った比翼の鳥

『指示を、』@スーダン

スーダンの、感情を失った冷たい声。これがまた弱った気持ちにこたえる

『指示を、頂けますか』@スーダン

「…たい…」@檸檬(れもん)

『はい?』@スーダン

「待機よ!発動した電波塔をあなた一人でどうにか出来ると思っているの!?ディープの支援も無しに」@檸檬(れもん)

分かりやすい逆ギレだ。檸檬(れもん)の唇は紫色になって震えている

しかし、その様な事情、少年兵にはどうでもいいこと

『イエス、マァム』@スーダン

彼には命令だけが必要だったのだ。自分が必要とされている証だから

無線を切る

バケツを被った少年が横たわる鋼鉄の腕

何もない空間から唐突に生えており、先端は削岩機の様になっている

ダンボールを被った少女が少年に抱きついた

少年の目尻から涙が一筋、頬を伝い落ちる

「檸檬…すまない。僕たちは行動を別にすべきではなかった」@唐揚(からあげ)

「そうよ、」@檸檬(れもん)

少女の嗚咽が、少年のさらなる涙を誘う

「撤収だ」@唐揚(からあげ)

弱気にも過ぎる少年の決断に、少女はダンボールを脱ぎ捨て、目を丸くして少年を見た

彼の真意を見極めるため、少女は少年のバケツに指をかけた

同じ顔

同じ誕生日

同じ血液型

趣味趣向も同じ

珍しいファーストネームであるところも同じ

比翼の鳥は二人で一つ

向かう所敵なしだった

いつでもどこでも強気一本で押し通してきた

撤収=白旗

白旗を上げるなんてあり得ない

今、彼はどのような顔をしているのか?表情に現れる彼の気持ちを読みたかった

「檸檬!」@唐揚(からあげ)

少年の強い口調にバケツを脱がそうとした手が止まる

「檸檬、われら二人の目的はなんだ?」@唐揚(からあげ)

「親の…親の無念を晴らすこと」@檸檬(れもん)

この二人は、生年月日や趣味趣向ばかりでなく、親の無念まで同じなのであった

「では、その目的を達成できる者は誰だ?」@唐揚(からあげ)

「…賢き者」@檸檬(れもん)

「そうだ。それを忘れてはいけない。目的の達成と勝敗には、何の因果関係もないのだ。その場の勝負に負けても、目的を達成できれば良い」@唐揚(からあげ)

檸檬(れもん)の目に光が戻る

安い強がりだ

我が親愛なる片割れが、安い台詞でその場を取り繕っている

しかしそういうことにするしかない

そういう解釈を持ってこなければ、二人の足場はガラガラと崩れてしまうのだ

そうやって、足場を糊で固めるしかない。頼りない糊で

彼女は再び、Amazonの段ボールを被った

褐色の少年兵に無線をつなぐ

「スーダン」@檸檬(れもん)

『イエス、マァム』@スーダン

「新しい指示よ。これが最終決定。世界電波塔はいったん警察(ラ・インビジブル・ポリス)に引き渡すわ。あなたはその後をつけるのよ。見失わないように、ね」@檸檬(れもん)

その声には自信が戻っている。それを少年兵は感じた。再び緊張感が戻ってくる。今の二人に隙は見せられない

被り物の二人は気持ちを立て直し、帰ってきた

一度は「あの二人は終わりだ」と見限ったが、二人の時代はまだ続くかもしれない

『イエス、マァム』@スーダン

同じ返答でも、明らかに先とは口調が異なる

スーダンが再び服従した。それが確かな手ごたえとなり、檸檬(れもん)に自信を与えた

「さて、あとはおばさまを言いくるめるだけね」@檸檬(れもん)

「それは僕がやろう」@唐揚(からあげ)

「あら、そう」@檸檬(れもん)

「新しいディープ・ブルーを頼むついでがある。僕と君、おばさまに言うことは一言一句変わらず同じだ。ついでがある僕に任せておきたまえ」@唐揚(からあげ)

「うふふ、そうね」@檸檬(れもん)

比翼の鳥は、また飛び立つ


日本

廸佐高等学校じゃくさこうとうがっこう

広報部

ITの最終兵器、新城幸子(あらしろゆきこ)

…は、徹夜明けである、

目が死んでいる

「え?なんぞこれ??」@幸子(ゆきこ)

ちょっと時間に余裕が出来たので有閑の手悪戯にと請け負ったスーパーコンピューターのセットアップ

これが度重なる仕様変更で想定外に苦労させられた

疲弊しきった脳を休めるため、ちょちょいと世界中の衛星のカメラを乗っ取る

時間的にもいいころあいだ

昨日、(あらし)が送ってきた日時、そして場所

それは(あらし)のもう一つの依頼であった

依頼当日は「今すぐは無理」と断った。金はもらっているので成果物は納品しなければならない

「なにこれぇ??」@幸子(ゆきこ)

一発で目が覚めた

北朝鮮

殺風景な港に突如出現した、エメラルドグリーンの湖と真珠の大地

湖畔に、人がいる

一人だけ居る

「誰?」@幸子(ゆきこ)

そこは北朝鮮。だからきっと見ず知らずの誰かだとは思った。見ず知らずの誰かさんの顔なんて確かめたってしょうがない?それでもこの異常事態に、好奇心が働いた

そして、モニターに映ったその人物の顔を確認し、口に含んだスターバックス チャイラテ トールサイズを吹き出した

前日の夕刻、今日の朝は目覚め良くと、せっかく買い置いていたものだったのに

お気に入りのDELL製4Kモニタが汚れてしまったので、トイレから一巻き失敬してきてあるトイレットペーパーをグルグル手に巻いて拭き取る

「うっそ…八重葉?拉致られてる筈じゃあ…。ずいぶんと意識高いテーマパークに…」@幸子(ゆきこ)

流石の幸子(ゆきこ)の脳も混乱して居る

「嵐パイセンは何しているの」@幸子(ゆきこ)

彼女はセットアップを任されて居るスーパーコンピュータにSSHでログインした

そしてSCPで(あらし)の画像を転送する

「まぁ、超並列演算の評価目的ってことで」@幸子(ゆきこ)

彼女は目にも留まらぬ速さで、あっという間にPythonのプログラムを書き上げ、実行をした

世界中の衛星や定点カメラが乗っ取られ、(あらし)を探す

わずか2分後、

北朝鮮は海州近傍の海上に、(あらし)を見つけた

「おおおおおおおおお。まじか。まじで八重葉追って北朝鮮行ったんか。冗談通じねーわこの人」@幸子(ゆきこ)

(あらし)の傍らに(たつ)と…

「この男、誰や」@幸子(ゆきこ)

知らない男の姿を見つけた幸子(ゆきこ)はまだ、(はじめ)の存在を知らない

画像で検索をかけるがヒットしない

そこで、(あらし)がその男の方を向いて口走った言葉を、幸子(ゆきこ)お手製の読唇アプリで読み取る。スーパーコンピュータフル活用だ

「”ひがしにったあに”ぃ?」@幸子(ゆきこ)

ふと、同じ広報部の仲良しの()が「何してるの」と話しかけて来た。これだけ独り言が多いと当然か

因みに彼女も徹夜組のメンバーだ。広報部は忙しい

「スパコンの試験」@幸子(ゆきこ)

「あーぁ。あの厄介物って言ってたやつ…って、嵐センパイの画像で??」

「そー」@幸子(ゆきこ)

「各方面に向かって厄介そうね」

幸子(ゆきこ)は返事の代わりにギャル流のピースサイン

彼女の仲良しは、コロコロと笑いながら仕事に戻った

徹夜でハイになっているし

「ひがしにった…東新田ってたしか…」@幸子(ゆきこ)

そう、あの転校生だ

住民基本台帳をクラックして情報を追うと、確かに彼には兄がいる。警察官の兄が

其処までは普通なのだが、其処から先がおかしい

警察に所属して二年目以降、東新田兄の情報が一切なくなるのだ

まるで、突然この世からいなくなったかの様に

確か、(あらし)(たつ)も自衛隊絡みで特殊な家柄だったはずだ

「似た者同士が集まったってことか?」@幸子(ゆきこ)

(あらし)はなんらかの事件に首を突っ込んでいる。八重葉(やえば)をめぐる事件の様だ

「まぁ、いただいた報酬分はやりますよ。センパイ」@幸子(ゆきこ)


「なんだあれ。北朝鮮は想定外にすごかった」@牡丹(ぼたん)

海州上空を旋回するHondaJet

バイト戦士 嬉野牡丹(うれしのぼたん)は眼下に広がる風景に目を丸くしていた

産業臭の強い殺風景な海にイキナリ存在するエメラルドグリーンの湖も直感に反するが、真珠の大地もどこの大富豪の戯れかと目を疑う

巨大テーマパークの豪気なイベントのセットならいざ知らず、その空間はなんとも浮世離れしている

FAKE NEWSのネタにもってこいだ

「多分あれが、世界電波塔の仕業ってやつだな、知らんけど」@喜多野(きたの)

喜多野(きたの)は低く唸った

「世界電波塔?」@牡丹(ぼたん)

牡丹(ぼたん)は未だ開き切った瞳孔を平静に戻せないでいる

操縦桿を握る喜多野(きたの)が機体を傾けて低空飛行、湖のほとりを指差した

「あっ!八重葉!」@牡丹(ぼたん)

「世界電波塔。彼女のまたの名ってところかな」@喜多野(きたの)

「あれが、世界電波塔」@牡丹(ぼたん)

この、バイト戦士の少女にも見えている。彼女にもその能力があるのだ。死角空間(イグノアドエスパス)──FAKE NEWSの世界。そこにある一機の重機(パンドラスマシーヌ)

それは、八重葉(やえば)の腰と繋がっている

「オッサン、これが八重葉の仕業だと?」@牡丹(ぼたん)

喜多野(きたの)牡丹(ぼたん)を無視して電話をかけている。相手は怪しいオッサン、中埜鐘(なかのがね)

スマートフォンで海州の状況を撮影し、中埜鐘(なかのがね)に送る

で、再びスマートフォンを耳にあてがう

「どんなもんですか?」@喜多野(きたの)

これだけの異常事態に気の抜けた声色。それが牡丹(ぼたん)の癇に障る。慌てふためいている自分がバカみたいではないか

「はぁ、そーですねー…じゃあ、そんなかんじで」@喜多野(きたの)

ため息一つついて、終話

「おいオッサン。なんかひな鳥の綿毛のように軽く話を済ませたが、大丈夫なんだろうな」@牡丹(ぼたん)

「え?あぁ、うん。たぶん」@喜多野(きたの)

「たぶんじゃねーよコノヤロー」@牡丹(ぼたん)

少女の圧力にオッサン怯む

「えーとね。牡丹ちゃんね、飛行機から飛び降りてさ、あの真珠の大地を隠蔽してさ、八重葉ちゃん確保…保護してくれると、うれ、うれしいな…(ごにょごにょ)」@喜多野(きたの)

もごもご話すので聞き取り辛い。本当にいらいらするオッサンだ。牡丹(ぼたん)はいい年して白黒はっきりしない大人が大嫌いだ

「ああ!なんだって!?」@牡丹(ぼたん)

取り敢えず威圧する。震え上がるオッサン

バイト戦士の少女は、左腕にキャッシュレジスターを装着している

「判ったわよ!ドアを開けて頂戴」@牡丹(ぼたん)

「え?あっと、行ってくれるのかい」@喜多野(きたの)#うれしそう

「そーゆーのイライラする!」@牡丹(ぼたん)

「分かった。もう黙るから…」@喜多野(きたの)

喜多野(きたの)は可能な限り低空を、可能な限り低速で飛んだ

そして、ドアを開けようと…

「すべからくに沈黙を!HI-SEAS(ハイシーズ)!!」@牡丹(ぼたん)

牡丹(ぼたん)がそう叫ぶと、何もない空間から巨大な鋼鉄の腕が現れた

そ出の先端には長い刀の様な爪が何本も生えている

「あ、牡丹ちゃんヤメテ、今開けるから」@喜多野(きたの)

もう遅い

鋼鉄の爪はHondaJetの側壁を切り裂いた

「あーぁ、」@喜多野(きたの)

オッサンの嘆き

「じゃあ、行ってくるので」@牡丹(ぼたん)

敬礼をした少女は、空中に身を投げ出した

鋼鉄の手が彼女を受け止め、そっと真珠の大地に着地させる

「おーい、八重葉ぁー」@牡丹(ぼたん)

世界電波塔(せかいでんぱとう)に選ばれた少女、腹部に直径9cmの何もない円がある少女

その少女はやつれて呆然とした表情を、牡丹(ぼたん)に向けた

「えーと、」@牡丹(ぼたん)

彼女にかけるべき、気の利いた言葉が浮かばない

八重葉(やえば)の境遇が特殊過ぎて

「ちょっとこっちに避けようか」@牡丹(ぼたん)

八重葉(やえば)の手を引いて真珠の大地の外側、殺風景な港が残っている方へ移動する

殺風景な現実に足をつけてまじまじと見ると、一歩となりの真珠の大地は魔法の世界。この世のものでは無い異世界だ

だが、そこに確かにある

そして、それを作り出したのは八重葉(やえば)で間違いない。間違いないのだ

バイトの現場で客に対する愛想なら一万の語彙があるのに、心打ちのめされた友人にかける言葉が思いつかない

(あらし)センパイならば、八重葉(やえば)を言葉で慰めることができたかもしれない

牡丹(ぼたん)八重葉(やえば)を抱きしめた。それしかできなかったから

無線から喜多野(きたの)の声が聞こえてくる

『牡丹ちゃぁーん』@喜多野(きたの)

「判ってる!」@牡丹(ぼたん)

喜多野(きたの)中埜鐘(なかのがね)もそうだが、本当にデリカシーがない

ゼロだ

拉致されて心に傷を負った少女とその先輩にして親友。二人を温かく見守ることはできないのか?

少女は真珠の大地に向かって左腕のキャッシュレジスターをかざした

「すべからくに沈黙を!HI-SEAS(ハイシーズ)!!」@牡丹(ぼたん)

ボンッッ!!!!

消えた

突如消えた

真珠の大地の一部

直径18mの球体に含まれる範囲がまるっきり消えてしまった

何もなくなったところに、大気と海水が爆発的に流れ込んでいく

「牡丹センパイ?」@八重葉(やえば)

やつれ切った少女の口から発せられた第一声がそれだった

「まぁ、わたしもアンタの同類?みたいなさぁ…見えてるでしょ?このデカブツ」@牡丹(ぼたん)

特に考えなくさらっと意味なく発せられた言葉。しかし、それが心傷ついた少女の救いとなり、押し殺していた八重葉(やえば)の感情は解き放たれ、牡丹(ぼたん)に抱きついた

抱き返してやりたいが、仕事が残っている

「あーと…ちょっと、仕事やっつけちゃうからさ」@牡丹(ぼたん)

「うん…うん、」@八重葉(やえば)

自らが有する恐怖の能力。その事実なんか全てFAKE NEWSの向こうに追いやって欲しい。嘘にして欲しい

「HI-SEAS!!」

ボンッッ!!ボンッッ!!ボンッッ!!ボンッッ!!

次々に、真珠の大地とエメラルドグリーンの湖が消えて行く

世にも美しい風景

「HI-SEAS!!」

ボンッッ!!!!

その、最後のひとかけらが消えた

海水が流れ込んできた

背丈120cmの緑色の生物がHI-SEAS(ハイシーズ)の攻撃から逃げ延びて、コンクリートの上にへたり込んでいた

「えっと、あれもかな?」@牡丹(ぼたん)

牡丹(ぼたん)は緑色の生物に向かって左腕をかざした

「だめぇ!」@八重葉(やえば)

八重葉(やえば)牡丹(ぼたん)と緑色の生物の間に割って入る

八重葉(やえば)に寄り添う緑色の生物

少女はその生物を抱きしめた

「判ったわよ。そいつには手を出さないわ」@牡丹(ぼたん)

バイト戦士の少女は肩をすくめてため息をついた

八重葉はリアルにどこにでもいそうな感じと、漫画の記号的に普通な感じと2パターン選べるけど、今回は余裕で前者

特徴が無いのが特徴

色気?ないよ


八重葉

次なる10話の学園物パートでは常識人かつ、腕力で暴走を抑える役もやっていただく

ネタ出しの時点で、嵐がかなりのポンコツになった。これを止める腕力が必要


次の10話はイラストの代わりに「辰きゅん、わーい!わーい!(仮称)」というネタをやりたいのだが、あらかじめネタを考えておくべきか、その時の直感を大事にしてあえて白紙にするか悩み中

これ描くのに2か月はかかると見込んでいる。忙しい本業の隙間時間でやるので

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ