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練習試合

あとがきで、各チームの人物名とユースのリストを掲載しておきます。

 寝る前は人気のないいつもの場所で日課をこなす。

 もっとも最近は愛用の剣が手元にないから学院から借りた剣で型の鍛錬してるんだけど。


 そこへ行くと先客が必ずいる。

 だから私は彼の鍛錬の様子をぼぅと眺めていた。


 一時間ぐらい型の動きをやっていたトゥシスがようやく一息つく。


「なんだ、気持ちの悪い」


「どうしてそういうことを言うのかな……はぁ」


 第一声でそんなことを言われたら、ため息のひとつもつきたくなるというものだ。


「お嬢と何かあったのか」


「……なんでそう思うの?」


「お前がそんな顔をするのは誰かと何かあった時ぐらいだ。少なくとも自分一人の問題ではないのは想像がつく。付け加えてお前の交友関係はそれほど広くない。せいぜい先日の親睦会のメンバー程度だろう。

 その中でお前に一番近いところにいるのはお嬢だ。一日のうちほとんどを一緒に過ごしているからな。簡単な推理だろ」


 なるほど、言われてみれば。

 って、私だって友達がいないわけじゃないからね?

 クラスの女子とはそれなりに仲良くさせてもらってるし。

 教室でボッチとかじゃないからね?


 どうしよう、この雰囲気って聞いてもいいのかな。

 でもまたどうでもいいことで言い合いになったりしたら……ああ、考えるだけバカらしい。だったらいつもの自分らしくまっすぐいこう。


「トゥシスはなんてイーサに言ったの?」


 汗を拭いていたトゥシスの手が止まる。


「……使えなくはない、と言ったな」


「なによそれ」


 トゥシスが私を認めるなんて明日は大雨でも降るんだろうか。


「お前、明日は雨でも降るんじゃないかって考えてるだろ」


「なんでわかったの!?」


 苦笑しながら「やっぱりか」って呟いて、トゥシスはまた汗を拭き始める。


「お嬢はマジックで王役に据える。俺が参謀兼ガードでお嬢を守る。それが俺たちのチームにおける基本戦術だ」


 当然の組み合わせなので黙って頷いておく。


「あとは攻撃能力の高い三人が前衛で相手の王を倒せばいい。その方針でメンバーの選定を進めていた。ただし同門のメンバーは除いてだ」


「それでハージェシカさんとハヤード君か」


 ハージェシカさんはツーユースでブレイドとブロウを高いレベルでこなすし、スラストのハヤード君の弓はおそらく上級生にだって負けていない。

 だから攻撃役として望むのならこの二人は最適だと思う。


「でもどうしてヘイスやレフィ君を候補から外したの?」


 家族のように同じ時間を過ごしていた仲間がいるんだから、彼らとチームを組んだ方が戦いやすいんじゃないのかなって思うんだけど。連携とかもしやすいだろうし。


「同門以外の者とチームを組んでみたいっていうがお嬢の希望だったからな。そう言われれば俺は従うだけだ」


 イーサたちの同門は新入生に7人いるから五人組のチームを組もうと思えばどうしたって2人は外れてしまう。

 だから自分から外れるのを選んだのかなぁ。イーサっていつも他人のことを考えてる子だし。


「だったら最後の一人がどうして私なの?

 私は他の誰かといっしょに戦ったことなんてないよ。それに人間相手に戦うのも慣れてない。チーム戦なんて足を引っ張るだけだと思うんだけど」


 それを自覚しているから、私は対抗戦のチームに入れると考えてなかった。

 私の戦い方はみんなと違う。異質すぎて枠からはみ出てしまう。

 これまで一人でやってきたから仕方ないとは思ってるんだけど。


 そもそも愛用の剣が戻ってこない限り、私はろくに扱える武具がなくて戦力にならないわけで選ばれる理由がない。


「そんなことは知っている。お前の動きは剣理から外れたものだ。正直、今から俺たちがどうこう言ったところで、短期間で劇的に改善されることはない」


 そこは言い切らないでもいいじゃない。意識して直そうと思ってるんだし。

 私だって他人に合わせたりはできるんだからねっ。

 ……たぶん。


「それはエイザーンと比べるまでもない。だがあの剣を使う限り、お前の方が戦闘能力は高い」


 にへらって思わず口元が緩んだ。


「別に褒めているわけじゃないから勘違いするな」


「そこは素直に褒めておきなさいよ。私の気分がよくなるでしょ」


「お前の感情は関係ない。あくまで使えるか使えないかが重要だ。

 だからお嬢からお前の名前が出た時にノーとは言わなかった。あの剣を使うこと前提でな。本番までに戻ってくるんだろ」


「たぶんね。トゥシスの手甲も戻ってくるんでしょ?」


「ああ」


「じゃあ、大丈夫じゃない。私よりもあの剣のが重要視されてるっぽいけどいいや。

 イーサの申し出を受けるよ。私もイーサの力になってあげたいから」


「過度な期待はしていない。最悪、足を引っ張らなければいい」


「そこは期待をしているぐらい言っても罰は当たらないでしょ!」


 もう、トゥシスってば本当に素直じゃないんだから。



        ※        ※        ※



 それからはチームでの戦い方に時間を費やしていった。

 本番は今月末。対抗戦本番まであと3週間もない。


 結局、4チームが結成された。

 どのチームも五つの属性が一人いる構成だ。バランスとしては同等。でもマルチユースを三人も擁する私たちが一番だろうと目されている。


 チームが結成されてからは五種類の武具の授業以外にチーム戦での練習試合をやるようになった。

 そうしてチームとしての戦い方を学んでいくってわけ。


「サダーシュ、出るのが遅い! 足並みを揃えようなんてことをお前には求めていない! 走れ!」


 トゥシスの罵声が私の背中に浴びせられる。


「前に出て」


 端的なハージェシカさんの指示を受けて一気に駆ける。


「頭下げてろよ!」


 距離を取っているハヤード君の声に上体をぐっと下げた。


「――あっ」


 さすがにその姿勢だと上手く走れない。足がもつれた。


「あの、馬鹿!

 ハージェシカ、フォロー! ハヤード、敵前衛に牽制」


 べしゃっと顔から地面に突っ込んだ。


「いたい……」


 どろっとしたのが流れているのがわかる。


「立って」


 私の前にハージェシカさんの体が滑り込んでくる。

 両手に持った棒状の硬鞭を構え、相手の攻撃を受け流してくれる。


「方術が来るぞ!」


 私が倒れている場所を中心に円形の陣が構築されていく。

 パーンという音と同時に光が散る。

 イーサが構築してくれた防御陣に相手の方術による攻撃が命中していた。


《……》


 な、なに?

 なんでこんなタイミングでヘンな声が聞こえてくるのよ。


《…………》


 まさかこれってイーサの方術なの?

 そう思って振り返るけどイーサにそんな様子は見られない。


「どうした?」


 前に立つハージェシカさんの苛立った声に慌てて答える。


「もう大丈夫。いけるよ」


「だったら走れ」


 ハージェシカさんの背中から飛び出して、敵の王を目がけて走る。

 体が重い。慣れない剣だから思うように動けない。

 私の進む先に次々とハヤード君の矢が飛んでいく。


「いける!」


 相手チームの王はツグース君だ。

 護衛のシュンタークス君はハージェシカさんの牽制で離れている。

 これなら倒せる!


「アホウ! そんなバレバレの罠に真っ向から突っ込む奴があるか!」


 トゥシスの声が聞こえる。


「――え?」


 振り返ろうと思った瞬間、足元の空間がなくなった。


「あ……」


 そのまま落とし穴に落っこちた。





「よし、作戦結果の報告をするぞ」


 次の練習試合を横目に、私たちは車座になって話し合いを始める。

 鼻血は止まっているけど鼻の下から口にかけてはまだ汚れているので、とりあえず上着の袖で拭いておく。


「サダーシュ。ちょっとこっちへいらっしゃい」


「なになに?」


 トゥシスの隣に腰を下ろしているイーサに手招かれる。


「両手をこうして受けるように揃えて。そうです。そのままでいてください。

 ――〈集水〉」


 イーサが方術名を口にすると、私の手の中に水が現れた。


「女の子が汚れたままの顔でいたら恥ずかしいものね。それで血の跡をぬぐってください」


「ありがとうっ」


 こういう気遣いができるイーサってやっぱり女の子だよねぇ。

 どこかの冷たい参謀役にも見習ってもらいたいものだわ。


「女の子なんですから上着で拭いたりしたら駄目ですよ。せめてハンカチぐらいは持っていないと」


 そう言いながらイーサはハンカチも貸してくれる。

 ごめんなさい。これからは運動用の装備の時にもハンカチを持ち歩くようにします。

 イーサには女の子としてもぜんぜんかなわない。


「こちらの損害は2。結果は勝利だった。各自コメントを」


 私たちのやり取りを横目で把握しつつ、トゥシスが話を進めて行く。


「前線へ意識が向きすぎていて伏兵に気が付くのが遅れた。あと弓しか持ち込まないのは駄目だな。懐に飛び込まれた時に戦えない。シンゴラス先生の言っていた通りだった。

 次までに予備の武具を考えておくが意見があれば言ってくれ。考慮する」


「硬鞭では攻撃力に欠けていた。だが防御には優れている。

 私はブレイドでもあるのでこの長さの武具は扱いやすいが再考の余地があるように思う。特に参謀の防御力を考えれば私も攻撃に特化した方がいいかもしれない。連携について相談したい」


「わたくしはもう少し全体の動きへ気を配った方がよさそうです。もちろん参謀であるトゥシスの指示が絶対というのは変わりありませんけれど。

 ハヤードへの奇襲はわたくしが把握しておくべきでした。敵の位置を常に把握し、トゥシスへ報告するようにします」


「王の護衛については問題なかったと思う。

 攻撃役が二人落ちてから相手が下がり、残る一人を落としにかかる展開になっていたらどうすべきかを考えておくべきだと思った。その場合、俺とお嬢も前へ出て一緒に戦うのもオプションとして考えたい」


「えっと……転んでごめんなさい。あと落とし穴にはまってごめんなさい」


 みんなの視線が私に集まる。

 うぅ、肩身狭い……。


「方術の基礎を――」「もっと周囲を見て――」「頭を使うな――」「判断が遅い――」「指示を待つな――」「近接の役割を――」「もっと思考をシンプルに――」「臨機応変――」「自信を持って――」


 反省すべきことの多い毎日を送ってます。

 とほほ……。


■イーサティアチーム

 イーサティア=ニアステリア 【ブレイド】【スラスト】【ブロウ】【マジック】

 サダーシュ=ベシュライン 【ブレイド】

 ハヤード=アンウィスト 【スラスト】

 ハージェシカ=イーツテリア 【ブレイド】【ブロウ】

 トゥシス=アズウェイ 【ブロウ】【ガード】【ガード】


■ケインズチーム

 ケインズ=サウスマウンズ 【マジック】

 シンハース=ロンストア 【ブレイド】

 レフターナ=フィルパディ 【スラスト】

 ヘイステイシア=ウィスホール 【ブロウ】

 ゲンザール=スプラウェル 【ガード】


■ツグースチーム

 ツグース=ヴィリウム 【マジック】

 エイザーン=フラッタール 【ブレイド】

 ゴーズワン=クーリッシュ 【スラスト】

 チョウシユウ=ベルウッド 【ブロウ】

 シュンタークス=テイルフォーム 【カード】


■ヨシリアムチーム

 ヨシリアム=ビリーチン 【マジック】

 ユウリーン=ラーブリフ 【ブレイド】

 ジョアンナ=ファウステリア 【スラスト】

 シントリア=グローブス 【ブロウ】

 マーサ=アシスイール 【ガード】


ブックマーク等、よろしくお願いします。

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