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授業:ブレイド

愛用の剣だけなら優秀なんです。

それ以外はさいっぱりですけども。


 ブレイドは刃を持つ武具を得意とするユースだからスラスト以上にバリエーションに富んでいる。


 だからなのか、今日の授業では自分たちが普段使っているブレイド系の武具があれば持ってくるようにという事前連絡があった。


「イーサはそれを持っていくの?」


 ほっそりしたイーサの手にはおしゃれな傘が握られている。

 初めて私たちが出会った時に持っていたもの……だよね?


「ええ、そうよ。実はこれね――」


 柄の部分をひねったかと思うと、カチリという小さな音がした。

 ゆっくりと柄を引くと、そこから細身の剣が現れる。


「うわ、すごい! カッコいい!」


 傘の柄に剣が仕込まれているなんて!


「強度はあまりないけど、これならどこに持っていってもおかしくはないでしょう?」


 なんて微笑まれたので勢いで頷いておいたけど、雨が降ってないのに傘を持ち歩いているのはどうかなぁって個人的には思うよ?


 私は愛用の古い剣を腰に下げている。

 でもねー、私の場合はこの剣以外でもブレイドユースとして動けるようにならないといけないと思うんだよねー。


 学院長から「反応が不安定」って言われてるから、卒業までにそんな不安はありませんって払しょくしておく必要がある。

 私の輝かしい未来のために!

 っていうか、主にお給金のために!


「トゥシスも剣を持ってるんだね。ちょっと意外……でもないか」


 トゥシスはガードとブロウのユースだから本来、剣は得意ではない。

 でもこの前の夜、私の目の前で剣を振ってみせたトゥシスの動きは私とは違ってきちんと訓練を受けている人のものだった。

 それにスラストの授業で槍を構えたところは様になってたし、いろいろ鍛えているんだろうと思う。


「なんだ気味の悪い」


「ちょっと褒めてあげようと思ったらなんてこと言うのよっ」


「褒めていたのか? 俺にはとてもそう思えなかったんだが」


「ふふ、二人とも本当に仲がいいのね」


「「どこが!?」」


 うう、こんな奴とハモってしまうなんて……。






「私がブレイドを担当するニシキーン=ネオビューズだ。

 全員、愛用の武具を持ってきているな。剣は騎士にとって基本中の基本だ。ブレイドユースではないからといって疎かにすることは許されない」


 最近は方術が使える人が重宝がられているけど、やっぱり騎士の基本は剣だよね。


「これから一人ずつ私と剣を交えてもらう。それから各人に向いた練習メニューを考えていくつもりだ。そのためにも全力でかかってこい」


 一人ずつって言うけど生徒って20人もいるんだよ。

 先生の体力は大丈夫なのかなぁ。

 ……なんて私の心配はまったく不要だった。


「よし、次だッ」


 これで18人目。

 これまで先生と手合わせをしたほとんどの人は数合打ち合ったあと、あっさりと追い詰められて降参するか、剣を弾き飛ばされている。

 ブレイドユースじゃない人は仕方がないとしても、ユウリーンさんやエイザーン君は私と同じブレイドなのにあっけなくやられていた。


 善戦したのはブレイドユースのシンハース君とイーサ、それからブレイドとブロウのツーユースのハージェシカさんぐらいなものだ。


「トゥシス、頑張ってくださいね」


「お嬢、そういうのは不要だ。近衛騎士の撃剣師範なら相手にとって不足はない。いずれ越えなければならない相手だ。実力試しに丁度いい」


 次はトゥシスの番だ。

 手には見ただけでわかるほど長い長剣が握られている。


「トゥシス=アズウェイ」


 名乗りを上げて剣を構える。


「貴様はたしかガードのダブルだったな。構えは問題ないようだ。さて、実際にその長い剣が振れるかだが――」


 ニシキーン先生が踏み込み、鋭い突きを放つ。

 それをトゥシスは横にかわし、すれ違いざまに胴を凪ぎにいく。

 先生は体をひねって切っ先をやりすごし、再び鋭い突き。

 右に左に放たれるそれをトゥシスはすべてさばいている。


「……すごい」


 フォーユースでブレイド持ちのイーサに劣らない動きだった。


「トゥシスって何者なのよ……」


「ただの努力家よ」


「ブレイドじゃないのに剣を振ってたの?」


 一般的にはそんなのは無駄の極みだと考えられている。

 だって属性があればそれだけで強くなれてしまうのがユースなんだから。


 ただのナイフでもブレイドユースが持つだけでナイフ+10とかになる現実。

 ユースを持たない人では一生をかけてもそんな高みへたどり着けるかもわからない領域。

 だというのにブレイドユースではないトゥシスは剣を振り続けていたんだ。

 他の武具はダメだってすぐに諦めてしまった私と違って。


「そうよ。小さい頃からわたくしたちと一緒にね。

 トゥシスの腕前はわたくしにだって負けていないの。特に受けに回った時の粘り強さは本当にすごいのよ」


 事実、先生の連続突きをすべて受けきっていた。


「ここまでだ。

 相当鍛錬を積んでいるな。ガードの特性を活かしたいい動きだったぞ」


 学院が一年生にいろんな武具を試させるのはそれが理由だ。

 異なる属性の武具でもトゥシスのように応用ができる。そこが大事なんだよね。


「ありがとう、ございます……」


 私たちの所へ戻ってきたトゥシスは肩で息をしていた。


「さすがは近衛騎士の撃剣師範だ。手を抜かれているのに何もできなかった。

 あんなバケモノ、道場にもいなかったぞ」


「そうね。でもそんな人の攻撃をすべて受けきったトゥシスもかなりのものだと思うわよ」


「遊ばれていただけだ。実力の差がありすぎる。

 でも届かない距離じゃない」


 おー、すごい自信デスネ。

 でもそれを裏付けるだけのものを見せていたのも確かだった。


「次だ」


「はい!」


「サダーシュ。しっかりね」


「うんっ」


 さて、魔獣相手にしか剣を振るったことのない私の剣がどこまで通じるかな。

 ここまで生徒が誰一人として傷ついていないのは呆れるほどの力量差が先生との間にあるからなんだよね。


「サダーシュ=シュラインベースです」


「入学式で話題になった奴だな。能力が不安定だろうが気にするな。今は全力でかかってこい」


「はいっ」


 腰から愛用の剣を抜く前に、屈伸をしながら頭の整理をする。

 どのぐらいの相手を想定して戦えばいいのかなぁ。

 今までの様子を見てた限り、ワイルドボアよりは強くてサーベルウルフより弱いぐらい?

 ただし生徒相手でかなり手加減をしているんだけど。


 腰をあげて、ぐーと背伸びをする。

 首を左右に振ってリラックス。

 さて、と。

 腰の剣に右手を添える。


「いきます」


 宣言をしてから一歩目を踏み出した。

 ドンという音をその場に残して距離を詰める。


「何ィ!?」


 驚きに目を見開いた先生の顔を観察しながら牽制の一撃目。

 剣を狙って放ったけど空振りしてしまう。

 視線を下へ向けると、先生がしゃがみこんでいた。

 でも完全にバランスが崩れているからあそこからは攻撃できない。

 それを確認してから前蹴りを放つ。


「ぐぬぅ」


 腕を前でクロスさせて直撃は防がれた。

 それでも衝撃で腰が浮いているから十分。

 地面に切っ先が届くぐらいの位置から空へ突き上げるような一撃を放つ。


「フンッ!」


 上体が流れているのも構わず、先生は後ろに体を投げ出して地面に転がった。

 そのまま勢いを殺さずに距離をとる。


 私は足を止めて先生の動きを観察していた。


「な、何が起きたんだ……?」


「あいつ、不完全なブレイドじゃなかったのか?」


「今の動き見えたか?」


「い、いや……音がしたと思ったらいつの間にかあそこにいて……」


 私に動きがないのを確認して、先生がゆっくり立ち上がる。


「……驚いたな。なんだ今の踏み込みは」


「サーベルウルフと戦う時は先手を取る必要があるので、ああやって思い切り踏み込むようにしてるんです」


 私が住んでいた場所の近くにはいろんな種類の魔獣が生息してて、たまに近くまで姿を見せることがあるんだよね。

 だからふらりと姿を見せた魔獣を倒すのが私の仕事になっていた。


「サ、サーベルウルフってウソだろ……中位危険種のひとつじゃないかっ」


「毎年、何百人も襲われているあの恐ろしい魔獣の?」


「腕利きの冒険者じゃないと倒せないって聞いたことあるんだけど……」


 先生は服についた土を払っている。

 隙はない。誘っているわけでもなさそうだった。


「驚いたな。私の強さはサーベルウルフ並みってことか?」


 顔をあげた先生の射抜くような鋭い視線。

 えー、これまでと雰囲気が全然違うんですけど……。


「そんなはずはないと思うんだが――な!」


 先生の姿が消える。

 前じゃない。後ろだ。

 振り返って突き出された剣を払う。

 また消える。

 今度は上からの斬撃を横へ飛んでかわす。

 立ち上がったら目の前に先生が立っていた――速い!


「気合いを入れろ。ケガするぞ!」


 ――やばい!


 ガギィィンという嫌な金属音が響いた。


 前に出て剣が振り切れないところで止める。

 今のは下がっていたら危なかった。

 下手したら死んでたかもしれない攻撃でしたよ!


「カカッ。これを止めるかッ。

 だが私の実力がサーベルウルフ程度でないことはわかっただろう?」


「もう、先生も人が悪いですよ。ヒュージクァルよりも強いじゃないですか」


 クァルっていうのは全身が黒毛に覆われた四本足の魔獣で背中から伸びてる触手みたいなのがすっごく厄介であんまり相手にしたくない魔獣の一つだったりする。

 ヒュージクァルはその上位種。体格が二回りぐらい大きくてとても強い魔獣だ。


「貴様のその剣――黒い刀身の剣と強大な魔獣を狩る人物について聞いたことがあるぞ。

 まさかブルガの黒い狂戦士がお前のような小娘だったとはな」


「なんですかそれ? 私、そんな変な名前なんて知りませんけど!?」


 言うに事欠いて狂戦士って!

 私、そんな野蛮な女の子じゃないんですけど!


「ブルガの黒い狂戦士って伝説にうたわれるあの?」


「魔獣狩りのブルガか!?」


「なんでそんなバケモノがここにいるんだよ……」


 クラスメイトの驚いたような声が耳に入った。

 なんかあらぬ誤解をされてる気がする!

 先生! さっきの発言は訂正してください!

 っていうか、さっき私をバケモノって言った人! あとでひどいからねっ。


ブックマーク等、よろしくお願いします。

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