第十一話 清潔という名の革命と、静かなる牙
第十一話!
楽しんでください!
私が作った石鹸は町で驚くべき速さで、売れた。
きっかけは腹を壊したあの衛兵だ。彼が私の作った石鹸を使い手洗いを徹底したところ、彼の家族全員が病気にかからなくなった。
「あの子供の石鹸を使えば『呪い』から逃れられる!」
そんな迷信じみた噂は町中にすぐに広がり、私のラボの前にはたくさんの人が押し寄せた。私は、その人々から『対価』として「珍しい石」や「高純度の酒精」を交換した。
だが、私の本当の目的が単なる「石鹸売り」なわけがない。
それには別の目的がある。
私はそれらを持ちシンの元へと行く。
(零、、麻酔薬を作るための材料は集まった?)
彼の視線がそう問いかけてくる。そこで私は交換した珍しい石やエタノールを見せた。
「ああ、これでシンの言う『麻酔薬』が作れる。麻酔は爆発のような目に見える牙ではなく、目に見えず相手を次々と倒していく、『静かで不可視な牙』だ。」
私はシンの医学的知見に基づき、鉱石から抽出した成分をエタノールに溶解、精製を繰り返していく。五歳の私がフラスコを振り、ゼロ歳の彼がその色の変化を厳しく「観測」する。大人が見れば奇妙な光景だろうが、ここで行われているのは、この世界の常識を『数百年先取りした』化学合成だ。
(……完成だ。これ一滴で、あのガスト・ウルフのような大型種も、数分は『標本』に変えられるはずだよ)
シンは満足げに瞳を細めた。
工学者の私が「投射手段」を考え、医学者の彼が「薬液」を設計する。
魔法が使えない私たちが、魔法を操る強者たちを『解体』するための準備は整った。
だが、その時。
窓の外、街を見下ろす遠くの山嶺で、不気味な青白い光が揺れた。
街から「絶望」が消え、人々が活気付き始めた。それは魔族にとって、管理下の家畜が勝手な行動を始めたのと同じことなのだろう。
「……計算通りだ。おびき寄せて、まとめてデバッグしてやるよ」
私は完成したばかりの麻酔薬の小瓶を握りしめ、闇の中で静かに笑った。
石鹸がもたらした平和は、あくまで猛毒を隠すための『泡』に過ぎない。
ご覧いただきありがとうございます。
おかげさまで、累計121PVを突破いたしました!
数ある作品の中から、『一ノ瀬零』と『シン』の物語を見つけて読んでくださり、本当にありがとうございます。
最初は一人だった零ですが、前世の相棒であるシン(マギル)と合流し、いよいよ「工学×医学」の本格的な攻略が始まります。
石鹸で街を救い、裏では魔族を狩るための牙を研ぐ……二人の快進撃をこれからも描いていきますので、応援していただけると嬉しいです!




