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屑屋と呼ばれた男 planetarian 外伝  作者: オーガスフロンティア
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第六夜 白鳥座の少年(5)

レイ親子を乗せた避難バスは、避難先が決らないまま、道の駅に到着した。

 僕達の乗った避難バスは、建物の入り口に横付けされた。


 僕達がバスから降りると、薄明りの中、他の避難バスが暗闇に消えていくのが見えた。他の降車場には既に降り立った人たちがいて、ざわざわと喋りながら建物の中へ入っていく。

 何月だったのか覚えていないけれども、外は寒かった。ジャンパーに発熱機が付いていたが、顔に当たる空気は冷たかった。

 戦争が始まるまでは、きっと賑やかであったろうその建物は、薄暗いオレンジ色の光で建物内が照らされていた。僕達親子は、手を取り合いながら、他の人達と一緒に建物に入って行く。

 棟内の棚には、おそらく商品が陳列され、多くの人達の目に触れ、手に取られたり、買われていったりしたのだろう。だが今は棚だけが何事もなかったように、少しの商品を載せたまま、感情を無くして立ち尽くしている。

 ⦅ご来場の皆様、道の駅サカイへ、ようこそいらっしゃいました。私は、当施設のAI、ローレンと申します。誠に申し訳ございませんが、ただいま政府から発令された緊急事態宣言下であり、通常営業ができない状態となっております。灯火管制が敷かれておりますので、照明を全灯することができません。皆さまの足元を照らすだけの最小限の照明となっており、皆さまに不自由を強いることをご理解いただきますよう、よろしくお願いします。⦆

 建物内に入ると、天井からAIのアナウンスが流れた。

 床には、食堂を案内する矢印形の電光掲示板が光っている。

「あのー、残っている商品をいただくことはできるのかしら。」

 母さんが天井に向かって呼びかけた。きっと、僕達に何か与えて不安を紛らわせようとしていたのだろう。

 ⦅大変申し訳ございませんが、通信状態が安定しておりませんので、決済システムが使用できない状態となっております。医薬品などは、ご自由にお取りいただいて構いませんので、必要なものがありましたら、お持ち帰りください。尚、他の避難者の皆様にも供給する義務がありますので、必要最小限にしていただくようご協力お願いします。⦆

 少し離れたところに、緑十字のマークが光っていて、その下の電光掲示板に〝医薬品〟との文字が点滅した。

 僕達は、棚に残っているおもちゃのような物や、キーホルダーなどの記念品を見たいと思った。

 薄暗くてよく見えなかったこともある。

「お母さん、見てもいい?」

 弟のユウが、たまらず聞いて来た。

「うん、いいよ。見るだけならいいと思うわ。」

 母さんは、ユウの手を取って、棚に残っているわずかな土産物を見せた。

 棚には車のおもちゃや、動物や恐竜の人形が置いてあった。

 きっと、戦争がなければ、家族でここを訪れて、弟は手に入れてはしゃいでいただろう。

 弟は、母さんに抱きかかえられて、しばらくじっと見ていたが、

「今度来たら、僕、恐竜が欲しい!」

 と、言った。

「そうね、今度また来ようね。」

 母さんはそう言って、弟を諭した。

 弟も、なんとなく事情を察して、きっと子供なりに気を使っていたのだろう。

「もういいよ。」

 弟がそう言うと、母さんは、

「ごめんね。また来ようね。」

 と言って、抱きかかえた弟を降ろした。

 僕は、キーホルダーや、ペンダントがたくさんぶら下がったラックを静かに見つめていた。

 薄暗い明かりに、ガラスや反射する飾りテープが照らされて、わずかにキラキラと光っている。

「レイ君は、あれがいいの?」

「あ・・・、うん・・・、でも大丈夫だよ。」

 母さんに聞かれて、とっさに出た返事だった。

「そっか・・・、みんなでもっと早く来ればよかったね。でも今は我慢してね。」

 きっと母さんも辛かったに違いない。薄暗くて良く見えなかったけれども、母さんの目に涙がにじんでいたのが分かった。

「大丈夫だって。シェルターから帰ってきたら、みんなで買いに来られるよ。」

「そうね。また、みんなで来ようね。」

 僕達は、手に取ることのないお土産に触れることもできないまま、仕方なく棚から離れた。

 すると、

 ⦅大変申し訳ございません。お客様。またのお越しをお待ちしております。⦆

 と、AIが天井スピーカーから喋った。

 母さんは、

「そうね。じゃあ、恐竜のフィギアと、ガラスのキーホルダーを予約しておいていいかしら。迷惑を被ったんだから、それくらいはお願いしたいわ。」

 と、呼びかけた。

 ⦅承知いたしました。この度は、システムの通信障害により、ご迷惑をおかけしましたので、ご指定の商品につきましてはお客様のために確保しておきます。お客様は、つくば市にお住まいの、橘・スワン・ケイト様で間違いございませんか。⦆

「そうよ。私がケイト、それから息子のレイとユウよ。きちんと記録しておいてね。」

 ⦅かしこまりました。只今、ローレンが、当施設の予約商品に記録いたしました。尚、大変申し訳ございませんが、有効期限が1年間となっております。有効期限の前に、商品を受け取っていただくようお願いします。この度は、商品をご購入くださり、ありがとうございました。⦆

 ローレンは、それきり黙ってしまった。きっと、また出入口で新しい来場者に案内をしているところだろう。僕達は、そこから離れ、床に光る矢印に沿って奥の食堂に向かった。


いつもは、アニメのシーンを思い浮かべながら書いているのですが、ハリウッドのSF映画みたいになってきた気がします。

まあ、それもアリかな・・・と・・・。


ところでYouTube動画で、坂本龍一の戦場のメリークリスマスを聞いて、なんとなくそれっぽい感情が乗ってしまった気がしています。魂の演奏に、聞いてると涙が出そうになります。


と、思ったら、NHKスペシャル坂本龍一特集を撮り損ねたー!



・・・再放送予約しようっと。

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