戦士の帝国(6)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
その時、森の暗闇の中からあいつの声が聞こえてきた。
「そう。いつぞやのですよ。あなたにひどいことをされた女兵士、それが彼女です。わかったらE・Cさん。もうその辺で、弱い者いじめはやめてくれませんか? 僕が相手になりますから」
(どこだ? 気配が読めん)
「あれ? わからないんですか? 僕の居場所が…………ここですよ、ここ。もうわかりますよね? 孤独なお山の大将さん」
その声と共に青龍の目の下の紋章が、E・Cの背後に浮かび上がった。
自分の背後をとる敵がいる。その事実に彼はこれ以上ない高揚感を覚えた。
「……ふっ、この私の背後をとるとは、素晴らしいスキルの持ち主のようだな。そうか、まだいたのか。半ば諦めかけていた本物の戦士という奴が」
E・Cはそう言うと、後ろ蹴りをしたが、そんな挨拶代わりの攻撃に当たる青龍ではない。もちろん余裕で回避した。
「やるなBoy. 名は?」
「死獣神のエースキラー、イカレた殺し屋こと青龍です。E・Cさん。その命、貰い受けます」
青龍は律儀にそう名乗り、ドラコスラッシャーで彼がこれまで何千もの敵を殺してきた愛刀であるダガーナイフを断った。
にもかかわらず、E・Cは悔しそうにしておらず、むしろ不気味なほど嬉しそうな笑みを浮かべている。
「ほう。我が愛刀を断つか……なるほど。その奇妙なswordが貴様の武器なのだな? ふっふっふ……Good! 貴様こそ我が国の脅威と呼ぶに相応しいっ! 実のところ退屈していたのだ。建国以来、程度の低い客しか来なかったのでな。その点、貴様は実にいい! 合格だ! 侵略者らしく、これから思う存分侵攻に励むといい」
「それはどうも。では遠慮なくあなたを輪切りにします。今ここで」
「ふはははは! それはどうかな? 私は皇帝だぞ? 侵略者が来たのなら、その魔の手から国を守り迎撃するのは当然のことだと思うが?」
楽しそうにそう言う彼の言葉を、青龍はすぐには理解できなかったが、普段とは違う妙な重みをドラコスラッシャーに感じ、目視したことで、ようやくわかった。
先端に安全ピンが外された手榴弾が2個も付いている。さっきダガーナイフを切った時に引っかけられていたのだ。
知らぬ間に仕掛けられていた危険物に驚く青龍を見たE・Cは、得意気に拳銃で手榴弾を撃ち抜き爆発させると、渓を抱きかかえて高笑いしながら逃走した。
爆発の中心にいた青龍はまず助からない。誰しもそう思うだろうが、爆煙と爆風がおさまった戦いの場の中心にさっきまで無かった巨大な布が残っており、その下から無傷の2人が出てきた。
「ふぅ……助かった~」
翔馬が事前に青龍に渡していた折り畳み式の防火マント。それを爆発寸前に展開していたことによってドラコスラッシャーだけを犠牲にして、爆発から身を守ることができたのである。
おかげで助かった青龍は、E・Cの強さに舌を巻きながら防火マントを畳み、バッグから予備のドラコスラッシャーを取り出して装備すると、
「では、僕は行きます。武石中佐もさらわれたことですし。あなたは帰った方がいいですよ。このまま行っても手に負えませんし、死にますよ」
と、アレックスに帰るよう促して、先へと進もうとした。
だが、その言葉が、散々プライドを傷付けられた兵士の心に火を付けた。
「Shut up! 誰が帰るかクソガキがぁっ! 私を誰だと思っている!? 私はグリーンベレーのアレックス曹長だぁっ! おのれE・Cめ。この屈辱、100万倍にして返してくれる! 行くぞクソガキッ!」
八つ当たり気味にそう怒鳴ったアレックスは、E・Cに踏まれた帽子を再び被って士気を奮い立たせると、やれやれといった感じの青龍を連れて、E・Cのアジトへと向かった。
全てはE・Cを倒すため。さらわれた渓を助け出すため。そして、E・Cが保有するあれと呼ばれる物を奪還するために、2人は樹海の中を邁進する…………
ようやくこの一件も折り返しに入りました。長いとお思いかもしれませんが、もうしばらくお付き合いください。




