戦士の帝国(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
午前6時頃。龍と渓を乗せたヘリコプターが富士樹海の入口に到着。森林を移動するのに必要な装備と武器等を持った2人は、ヘリコプターを見送り気を引き締めると、敵地と化した富士樹海に足を踏み入れた。
進むこと数分。鬱蒼とした樹林の中を歩く龍は、まるで遠足でもしているかのように、初めての光景に興味津々になっていた。
そんな彼に対し渓は全くの正反対で、打倒E・Cだけを見据えていた。
そのため、のん気な龍が不安を感じてるように見えた彼女は、
(やはり素人ね。開始早々状況に混乱している。いくら戦闘力が高くても、あらゆる環境に適応できないようじゃダメ……こうなったら、本当に背中を預けるのに相応しい相手かどうか、私が試してあげる)
と、考え、龍に一切目もくれず、早足で樹海を移動した。ついてこれないようならそれまで。自分1人ででも任務を遂行するという決意を持って……
早足での移動開始から6時間後。自らが課した試験の結果に、呼吸が荒くなるほど体力を消耗した渓は驚きを隠せなかった。
お互いに何十㎏もの荷物を背負っているのに、気遣う余裕を見せる龍が遥か前方にいたからである。
(……嘘っ……!?)
「どうやらバテたみたいですね。僕はまだ平気ですけど、ちょっと休憩しますか?」
彼の無尽蔵の体力を思い知った渓は、その提案を呑み、食事休憩をとることにした。
渓が持って来た荷物の中には2人分の食料にと、たくあんやハンバーグ等の缶詰や、フリーズドライの味噌汁等があり、思わぬ豪勢な食事に、龍は子供らしくはしゃぎ、舌鼓を打った。
その様子と化け物じみた殺し屋としてのスキルとのギャップに、渓が興味を示すのにそこまで時間はかからなかった。
「何か?」
「あ、いや。すまない。少し驚かされた。君はすごい。あれほどの体力を有しているとは思わなかった」
「あはは。軍の人にそこまで褒められると、なんか照れくさいです。でも、別にトレーニングとかはしていませんよ」
龍が半龍半人の子孫とは知らない渓は、軍人としての経験上、天性だけでこれだけの体力がつくとはにわかに信じ難く、そのタネを知ろうと質問しかけた。
龍が背負っている荷物の重さは30~40㎏ぐらい。
それを持って早足の渓を追い越すほどのスピードで樹海を進み、なおかつ気遣う余裕まであるあたり、龍の体力がどれほど底無しなのかわかると思います。




