『死』のための生(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
こうして翔馬とペガサスの仕事は終わったのだが、1つだけ大きな謎が残っていた。
それを解明するために、翔馬は彼女らが目覚める午前5時50分まで待つことにした。
「あ、おはよう。えーっと……」
「朋美です」
「そっかそっか」
「翔馬さん。どうして私の家に? キララに帰るように言われたのでは?」
そう尋ねられ翔馬は、残った疑問である多重人格になったきっかけを聞いた。
彼女が多重人格になったのは幼少期の頃、親に虐待されたことによる自己防衛からである。
繰り返される虐待の中で、その現実から逃れようとした朋美は、自身を守ってくれる存在として玄を、逆に守ってもらう存在として千代を、自分を愛してくれる人を求める存在として乙女を、そして、虐待者を殺す存在としてキララを生み出した。
特にキララの誕生は決定的で、4年前に彼女が生まれて真っ先に殺した相手は、朋美を苦しめ続けた両親で、それからも彼女を傷付ける者や虐待者を殺し続けていった。
そんな話すのも辛い過去だっただろうに、キララをサポートしてくれたお礼として語ってくれた朋美の心の強さに、翔馬は心から敬意を表した。
「ありがとう。話してくれて」
「礼を言うのは私達の方です。今まで色々な人にサポートを頼んできましたが、ここまで親しくなれた相手は翔馬さん達が初めてです。おかげで、とても充実した時間を過ごせれました」
そう言われて翔馬は、彼女の心からの感謝を嬉しく思っていたが、
「またお願いすると思います。翔馬さん達は本当に頼りになりますし、お互い多重人格者ということで、苦しみを分かち合えると思いますから」
という言葉にひっかかり、ハンバーガーショップでの会話の時に呟いた内容を感づいた。
「ひょっとして、○○ドで話してた時にも似たようなこと言った?」
「あ、はい。『私と同じ境遇の人がいたんだ』と」
それを聞いた翔馬は、ばつが悪そうに頭をかき、4日間もイチャイチャしていた手前、申し訳なく思いつつも、自分は多重人格者ではないと彼女の考えを否定した。
朋美はあくまで多重人格者。1つの肉体に5人分の人格を有した1つの魂を持つ者。
対して翔馬は、1つの肉体に自分とペガサスとウルフィスという狼の悪魔を内包した存在。
一見どちらも似ているが、多重人格者は死ねば他の人格ごと死ぬが、ある意味取り憑かれているに等しい翔馬の場合、彼が死んでも、ペガサスらはその瞬間、翔馬から排出されて生き残ることができる。
そこが、多重人格者と異種族を内包した者との大きな違いである。
ウルフィスは翔馬が小学5年の時に覚醒した悪魔で、今後の作品にも登場するかもしれないペガサスの因縁の相手です。
残念ながら『死獣神』シリーズには一切出てきませんが。




