当たり前の優しさ(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
「こ、こんなことしても、許しはしないよ」
恥ずかしそうに柚はそう言うが、龍もそこら辺はちゃんとわかっている。
彼女が仲間に入ってから約3ヶ月。その間、毎日のように命を狙われていれば、どんなに鈍くても流石にわかる。
それでも龍は、たとえ彼女から偽善と言われてもこれを作りたかったのだ。
部屋に飾られた1枚の写真。そこに映る幼き日の笑みを彼女自身に取り戻してほしかったから。
「写真って……また勝手に見たの!?」
「うん。悪いとは思ったけどね」
そう言って龍は、その写真が入れられた写真立てを手に取った。
どこかのテーマパークで撮られたであろうその写真には、まだ幼稚園か小学校低学年くらいの無邪気な柚と、彼女と同じぐらい黒い肌をした父と優しそうな母が穏やかな顔で映っていた。
「……その2人が、あなたのせいで死んだ私のパパとママよ」
「やっぱり、か。写真を見てもわかるよ。君は2人から愛されてたんだ……その……ごめん」
柚の親である闇と黒揚羽の顔を見て、罪悪感が高まった龍は、改めて彼女に謝罪した。
もちろん、それで許されるのなら彼女は復讐になど走っていない。柚の返事は初めから決まっていた。
「謝ってほしいわけじゃない。私は、あなたに死んでほしいの」
「けど、そうなったら君は、またあの時みたいに……」
「人の心配をしてるヒマがあったら、自分の身の心配でもしたら? ほんとに甘いね。龍君って」
冷たい口調でそう言うと、柚は鍋焼きうどんを息で冷ましながら、一気に平らげた。その驚異的な完食速度は、作った本人も目が飛び出そうになるほどだった。
「早っ!」
「私だって、もっとゆっくり味わいたかったよ。けど、あまりにもおいしかったから、つい……」
その言葉を聞いて、龍は確信した。
柚は学校でキャラを演じているが、自身の全てを偽り、演じているわけではない。食の好みや性欲など隠す必要がないものは、ちゃんと自分の個性として公表している、と。
そしてそれは、根っこにある優しさも。
自分の罪の重さを知り、深く謝罪する。
その姿勢は正しいでしょうが、今となっては正解など無いのかもしれません。




