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閑話 猫族の侍女

 みなさん、おはようございます。レイ様の専属の侍女をさせていただいていますクロエと申します。


 私がランウォーカー家に仕えるのも早くも2年が経とうとしております。


 私が仕えているレイヴェルト・ランウォーカー様も1年前に生まれてからも、すくすくと成長しております。

 毎日が驚きの日々で、あの時あのまま冒険者を続けていましたら、この様な日常を送る事もなかったのでしょう。


 少し昔の話をさせていただくと、私は孤児院の出身地のただの平民でした。


 もともと私にも両親がおったらしく、父は人族で、母が猫族の獣人の夫婦だったみたいです。この世界では、異種族間での結婚も少なくではありますがされており、子供も生む事ができます。


 生まれてくる子供はどちらかの種族になります。そして生まれた私は母と同じ猫族の獣人になりました。


 しかし今から15年前の私が2歳の時に、この辺境伯領で10数年間に一度起こる魔物の大行進が起きたのです。その大行進には両親2人とも参加をしてそのまま戻って来ませんでした。


 家族が両親しかおらず、親戚がいなかった私は孤児院の院長に引き取ってもらったみたいです。あの頃は両親がいなくなった悲しみがいっぱいであったのと幼かった事もあり、余り覚えておりません。


 物心ついた頃には、幼少組のまとめ役となっていました。5歳から10歳の子たちは孤児院の先生が教えてくれる勉強にしたり、孤児院の手伝いをして、10歳以上の子は内職をしたり、外に稼ぎに行ったりとしています。


 私自身が感情を余り表に出す事が無かったせいなのか、少し大人びて見られてしまうので、いろいろと任せやすかったのかも知れません。


 そんなこんな子供の世話をして、勉強してと、とうとう働ける歳の10歳になりました。働くと言っても色々あります。


 私は色々とある中から冒険者の仕事を選びました。幸い私は猫族という事もあり体を動かす事は得意で、その上この辺境伯領では魔物の退治や薬草の入手などと、依頼には事欠かないという理由で選びました。


 院長先生は余り乗り気ではありませんでしたが、最終的には応援してくれると、折れてくれました。院長先生には感謝の言葉しか有りません。


 冒険者の方の中には私と同じ孤児院の出身の方もおり、その方から冒険者のイロハを教えて頂いたりとして日々のお金を稼いでおりました。


 それから4年ほど冒険者として活動していたある日、私が生まれてから2度目の大行進がやって来ました。


 今回の大行進は前回の時の倍近く魔物がいて、かなり熾烈な戦いとなりました。


 その戦いには領主軍だけでなく冒険者ももちろん強制参加になり、私もその中の1人です。


 その時にお会いしたのが、辺境伯領の後継のジーク様と奥様のエリス様でした。


 ジーク様は現領主様の補佐で副官として軍の指揮を行い、エリス様は魔法師として、魔法師軍団の団長をしておりました。私は前衛部隊として配属される予定でしたが、冒険者の中の女性で平均以上の実力のあった私はエリス様の護衛役に抜擢されました。


 その際に、エリス様とは色々な話をなさいました。はじめは貴族という事で恐縮していましたが、エリス様本人が気さくな方だった事と、本人から友達になりたいと言われたことにより前よりは柔らかくなったのではないかと思います。

 さすがに友達になって欲しいと言われた時はびっくりしましたが。


「エリス様。余り護衛で平民の私とそんなに親しくされない方がよろしいかと思います。平民の私なんかと親しくされていては周りに何言われるか」


「そんなの周りの連中に言わせておけばいいのよ。私はもうあなたと友達なんだから!」


「えっ! 友達ですか⁉︎」


「そうよ。今回の大行進が始まって一週間程だけど毎日色々な話をクロエとして、一緒に戦っているのだから。いわば戦友よ!クロエは私と友達はイヤ?」



「いえ! そんなことありません! とても嬉しいです!」


 この言葉を聞いた時、あまりの嬉しさに泣きそうになりましたが、なんとか我慢する事ができました。寝る時に枕に顔を埋めて喜んでいたことを他の護衛の方に見られた時はとても恥ずかしかったですが。


 そのような話をしてから何日かしてからようやく、魔物の大行進が終わりました。


 今回の大行進は以前の倍近くの数だったという事もあり被害もかなりのものでした。一番の被害はジーク様のお父上の前領主様が傷が元で亡くなってしまった事です。そしてそのあとをジーク様が引継ぎまして、辺境伯領の立て直しに心血を注いでおりました。エリス様もその補佐としてお手伝いをしておりましたので、大行進が終わって以降私はエリス様と会う事はありませんでした。


 大行進が終わった事により、私も冒険者の仕事に戻りました。治安を守る軍も減ってしまったので、軍からは魔物や盗賊の討伐の依頼が沢山あり、積極的に受けていきました。間接的にでもエリス様たちのお助けになればと思います。


 大行進から1年ほど経ったある日、その日は冒険者の仕事も終わり孤児院に帰っておりました。


 孤児院の前まで行くと、そこには綺麗な立派な馬車が置かれていました。誰か貴族の方でもいらしているのかと思い孤児院に入っていくとそこには、院長先生とエリス様がいらっしゃいました。


 さすがの私もその事にはびっくりしました。


「エリス様! なぜこのような場所に!」


「あら! クロエ久しぶり! 元気にしてた?」


「はい。元気にはしておりましたが、どうされたのですか?」


「今日はクロエにお願いがあってきたの」


「私にお願いですか?」


 私に何かできるようなことがあるのでしょうか?


「そうよ! お願いというのはね、来年に生まれてくる私の子供の専属の侍女になって欲しいのよ」


 そう言いながらも自分のお腹を愛おしそうに触るエリス様。


「お子様がお生まれになるのですね! おめでとうございます! しかし私のような侍女の仕事をした事のない冒険者がエリス様のお子様の侍女に相応しくありません」


 そういうと、エリス様は頬をプクッと膨らませてしまいました。可愛いのですが、そのような顔をされても私には相応しくないと思いますよ。


「え〜。でもクロエなら信頼できるし、何かあった時には護衛としても頼りになるし。侍女の仕事なら今から覚えていけば大丈夫よ!」


 信頼されているのは嬉しいのですが……


「お願い! 生まれてくる私の子供のためと思って!」


 うっ! そのように言われればお受けするしかないじゃないですか!


「わかりました! 侍女の仕事お受けさせていただきます。しかし本当に侍女の仕事はわからないのですがよろしいのですか?」


「やった〜! ありがとうクロエ! 侍女の仕事は大丈夫よ。うちの超ベテランの侍女長にみっちり教えるように言ってあるから!」


 それはそれでなんとも言えませんが……


 それから直ぐに、辺境伯家の侍女用のお屋敷の方へ引っ越す事になり、その日から私の生活は変わりました。引っ越しが終わり直ぐに侍女長にお会いしましたが、中々厳しいお方でした。


「あなたがエリス様のお選びになられた方ですね。私は侍女長のアンと申します。将来生まれてくるお子様に相応しい侍女になっていただきますのでよろしくお願いいたします」


「はい。私の名前はクロエと申します。よろしくお願いいたします」


 その日から侍女長に侍女の仕事について一から勉強させていただきました。今思うと、とても厳しかったと思います。あの時は覚えるのに必死でしたから。


 そして侍女になってからあっという間に、待ち望んだ日がやってまいりました。


 朝食時にエリス様が産気づきまして、直ぐに助産婦を呼びに行ったりと、朝から大騒ぎでした。


 ジーク様は今回で4度目というのに落ち着きが無く、私もお手伝いをしたいのですが、経験が無いので何をすれば良いか分からずにあたふたしておりました。


 助産婦の方と侍女長のおかげでなんとか乗り切りましたが。


 侍女長に「あなたも慌てる事があるのですね」と笑われたのはここだけの話。


 生まれたのは元気な男の子でした。名前はレイヴェルト様と名付けられました。この方が、私のお仕えする方なのかと思っていたら、エリス様が


 「ほらクロエ! あなたが仕える事になるレイヴェルトよ。抱いてあげて」


 エリス様よりレイ様を抱かせていただいた時は、なんとも言えない幸福感に満たされました。そのときレイ様が「あい〜!」と笑顔を向けてくださったときは余りの嬉しさに涙が流れてしまいました。


 私はこの時、一生レイ様にお仕えするんだと心に誓いました。


 レイ様が生まれてから1年たった今は、とてもやんちゃな子になりました。


 ハイハイが出来るようになってからは色々なところに行くようになり、元気が良いのは良い事なのですが、書庫で本に埋もれているのを見た時は心臓が止まるかと思いました。


 私とエリス様の心配を他所にのほほんとしておりましたが、さすがにエリス様に泣かれたのは効いたのか神妙にうなづいていました。

 それからは書庫に行かないようになったので一安心です。


 最近の日課は私のシッポを触ろうとする事です。そんなに触りたいのか!というぐらい私のあとをつけてくるのですが、何とか躱します。

 触らしても良いのですが、あの一生懸命な姿を見せられると何とも言えない感情が芽生えてきます。


 私がシッポをフリフリするとレイ様も体をシッポに合わせてフリフリしてくださいます。その姿見るだけで表情が緩んでしまいそうになるのですが、何とか我慢します。


 そしてついに!レイ様が私の名前を呼んでくださいました!しかも私に話すのが初めてという!


 私はあまりにもびっくりして猛ダッシュでエリス様にご報告しに行きました、2人でキャアキャア言いながらはしゃいでいました。今思えば少しはしたなかったかもしれません。


 そしてレイ様が喋った事により、ステータスの取得の日がやってまいりました。ジーク様とエリス様の才能溢れるお二人のお子様なのでレイ様も素晴らしい才能をお持ちなのでしょう。


 万が一無かったとしても、私は一生レイ様にお仕えいたしますからね! これからもよろしくお願いいたします。レイ様!

クロエの話をいれさせていただきました!

時系列的に言えばレイが喋った日ですね。

今日は本編の方をもう1話更新したいと思います。


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