4.家の中と初会話
俺が生まれてからもうすぐで1年が経とうとしている。この1年で俺がしたことと言えば、体の運動と発声練習だな。
体の運動といえばラジオ体操を1日朝、昼、晩と行った。端から見れば、手足をバタバタさせてるだけなんだけど。でも、そのおかげで、3ヶ月ほど前から首も据わりハイハイが出来るようになった。
それからの行動範囲はかなり広くなった。
俺の今いる部屋は二階にあり、隣の部屋はエリスの部屋で反対側が書庫になっている。
俺の部屋には基本クロエか、エリスがいるのだが、たまに2人ともいない時があるので、その時を見計らって部屋を出たりする。
そして家の中をいろいろと見回っている。
まあ、すぐに2人のどちらかに見つかってしまうけれど。その後は抱っこをしてもらい指差す方へ連れて行ってもらう。
この家の中を探検して一番ビックリしたのは一階と二階の繋げる階段の中心部分に装飾されていたドラゴンの首だ。頭だけで2m近くあるんじゃないかと思えるほどの大きさだった。
あのときは流石に転生して精神が少し大人な俺でも赤ん坊の体に引っ張られ、大泣きした。もちろん下もちびった。
クロエには「あらあら」と苦笑いされながらもおしめを替えられるのは少し慣れてきた俺でも恥ずかしかった。
書庫の方は本が沢山あって危ないので入り口から見るだけとエリスに言われているので、クロエは入れさせてくれない。
何故なら、勝手に書庫に入って本の束を勝手に触り崩してしまったからだ。
本を崩しだけならクロエとなら入ってもよさそうだが、問題はその崩した本が全て俺の上に落ちたことが問題だった。
その落下した音でエリスとクロエが書庫に入ってきて本に埋もれている俺を見た時は、それはもう凄かった。
エリスは見たことないほど大泣きして、俺の上に乗っている本をもの凄い勢いで退けていき、クロエは普段のクールな表情ではなくかなり焦った顔をしていた。
その上ネコミミはふにゃぁと、シッポも微動だにしないぐらい萎れてしまっていた。
そのあと、クロエが「私の不注意で、レイ様を危険な目にあってしまいました。この私の命をもって償わせてくだい」と言われた時は流石に焦った。
クロエの件も何とか説得したあとは2人からの説教タイムだった。
2人に涙目で一人で書庫に行かないと、説得されたらもう守るしかないよな。
でも今になって思うと、よくあんな分厚い本が落ちてきたのに殆ど傷が無く無事だったものだ。
この世界では結構運が良いようだ。
発声練習に関しては、結構順調だったりする。
ついこの前に言葉らしい言葉を発声出来るようになったからそろそろお披露目しようかなと思っているところだ。
っと、ちょうどいいタイミングで
ノックが聞こえてきた。
よし!今から入ってきた人に話しかけてみよう!
「レイ様、失礼致します」
お! クロエか!
一番の話し相手には相応しい相手だ。
「あい〜! クロエ〜!!」
おっと、まだ「は」がしっかりと発音できていないな。要練習だな。 ん? クロエから反応が返ってこないぞ。クロエの方を見てみるとネコミミとシッポが、そんなに立つのか! ってぐらい立っている。シッポはブワッ! となっているし。
それから数十秒したらクロエが猛ダッシュで部屋を出て行った。
どうしたんだろうか?急な用事でも思い出したのだろうか?
そんな事を思いながら数分ぐらい待っていると
急に廊下をもの凄い音を立てながら走る音が聞こえた。
な、なんだ⁉︎ 何かあったのか?
すると、扉がもの凄い勢いで開けられ、入ってきたの母親のエリスだった。
「レイちゃん! 喋ったって言うのは本当なの⁉︎」
あ〜、クロエが急に出て行ったのは、エリスに報告しに行くためだったのか。
「さあ! 私の事をママと呼んでちょうだい!」
必死の形相でそう言ってくるので、まあ、結局は喋るんだし良いかなとか思いながらも
「ママ〜、だいちゅき〜」と笑顔で応えてやったぜ!
そうするとズキュン、ズキュン! と謎の音が2
回聞こえたような気がした。
エリスとその後に入ってきたのクロエの方をみると、こっちがビックリするぐらい、デレっとした顔になっていた。
目尻がそんなに下がるのか! ってぐらい下がって、クロエの方はそれに加え、ネコミミがピクピク、シッポはピンピンになっている。なんか可愛い。
「もうー! レイちゃんったら! 大好きだなんて! 可愛いんだから! 私が一番じゃ無かったのは残念だけど、全然許しちゃう!!」
物凄く喜んで俺を抱きかかえてくれるエリスの後ろでクロエが「私が一番。フフフ」とか言っているのは聞かなかった事にしておこう。
エリスも喜び過ぎて聞こえていないみたいだし。
2人の美女にキャアキャア言われていると、
父のジークも入ってきた。
「レイが喋ったと言うのは本当か!」
「ええ本当よ! 私なんて大好きって言われたんだから!」
その話を聞いたジークは少し羨ましそうな顔をしながらも真面目な顔に戻った。
「では、話せるぐらい成長したという事は、そろそろ連れて行っても大丈夫そうだな」
「ええ、そうね」
なんだ? 喋っただけなのに何処かに行く事になっているぞ。
「あなたはいつ空いているの?」
「俺は、来週の光の日はなんとか開けれると思う」
「じゃあ、来週の光の日に行きましょう!」
何処に行くんだろうか?
因みにこの世界は一週間は6日で火、水、風、土、闇、光の魔法の基本属性にちなんで曜日が付けられている。一ヶ月30日で一年十二ヶ月の360日となる。
光の日と言うのは、前世でいう日曜日のことだ。
「レイ。来週の光の日に俺とエリスとクロエとで神殿に行き、ステータスを貰いに行くぞ」
なんと! そんな重要なイベントが一週間後に行われるのか!
後で聞いた話だと、ステータスの取得は大体1歳前後で貰うらしい。
ステータスの取得には体力・魔力を使うので、ハイハイが出来るぐらい体力が付いて、喋れるくらい成長していないといけないらしい。
昔、早く英才教育を始めたい貴族が生まれたばかりの赤ん坊を神殿に連れて行き、無理矢理ステータスの取得させた結果、その赤ん坊は体力、魔力が枯渇し亡くなったという話があったみたいだ。
それからは大体1歳前後で見てもらうようにしようとしてから亡くなった子はいなくなったとのこと。
ってかやばいな。俺の才能が中の中ってばれてしまう。少し憂鬱になってきた。
「ああー! 楽しみだな! レイはどんな才能を持っているのか!」
「そうですね! なんて言ったって貴方の息子なんですから!」
「いやいや! エリスが頑張って生んでくれたからだよ!」
「あなた」
「エリス」
いやいや、子供の前でラブラブな雰囲気を作らないでくださいって前にも言いませんでしたか?
いやあの時は生まれて間もなかったからいってないか。
はぁ、そんなに期待しないでくださいよー。俺は物凄く普通な男の子なんですから。
そんな事を考えていると俺をエリスから
抱きかかえてくれたクロエが
「フフフ、楽しみですね! レイ様!」
と、かなり楽しみにしてそうだった。
こんなに俺の事を大事に思ってくれる人達を落胆させるのは心許ないが、仕方ないか。流石にどうしようもないからな。
あーー!! 本当に憂鬱だーーー!
もう、クロエの幸福空間で不貞寝しよ。
ついにステータスにいきます!