大陸激突編 話を聞いて
「さて、やるかね」
俺は目の前に立つ真っ白の人型に向けてガラドルクを向ける。俺は初めから全力で行くため、神格化を発動し、戦神の武器庫も出し惜しみなく発動する。
真っ白の人型はそれを見ても構える事なく立っているが、俺はそれが油断ではなく、構えなくてもいい事を知っているため、その姿を見て気を抜く事はしない。
俺は背後にいくつもの武器を作り、掃射する。1つ1つがかなりの力を持つ神器になっている武器を遠慮なく放つが、人型はそれを素手で打ち払う。これでも1つ放つ度に地面が大きく抉れたりする程の威力なんだがな。
人型は威力なんて感じてないかのように真っ直ぐと俺に向かって来た。とてつもない速さで攻める人型に、ガラドルクを突き出す。人型は左手でガラドルクを弾き、右足で蹴りを放ってくる。
それをガラドルクで防ぎ、人型の頭上に武器を作り落とす。人型は武器を避けるために後ろに飛ぶが、俺はそれを追い、ガラドルクを何度も突き放つ。
それをひょいひょいと避ける人型は、隙をつくように殴りかかってくる。ガラドルクを受けてもビクともしない頑丈な体に。俺以上の反応速度に身体能力。中々手強い……まあ、そう設定したのは俺なのだが。
目の前で俺の攻撃に怯む事なく迫ってくる真っ白な人型は、俺が神格化をして作った擬似的な神域でのみ作ることの出来る、仮想敵だ。
俺が今まで戦ってきた敵や、前世の漫画やラノベにいたようなキャラクターの力をつぎ込んだ相手で、俺の訓練相手になってもらっている。色々な力を入れ過ぎたせいか、腕は伸びるわ、手のひらに球体を作ってぶつけてくるわ、かなり強い。俺が作ったのに俺の想像以上の事をしてくるから何気に面白い。
そんな人型と戦い始めて時間で1時間ほどだろうか。真っ白の人型とやりあっていると、この世界に誰かが入って来たのがわかった。そこで、人型を消して入口の方を見ると
「お疲れ様です、お兄様」
と、ニコニコと笑みを浮かべたフィーリアが来ていた。手にはタオルと飲み物を持って。そのフィーリアの周りにはキラキラと光る色とりどりの球体が浮かんでいる。
あれは可視化された精霊たちだ。バロンとの戦いの時にフィーリアは、瀕死の重傷を負った。それを助けるために精霊王が彼女に力を分け与えてくれたと聞いている。
そのため、精霊王は殆どの力を失い、代わりにフィーリアが精霊王の力を受け継いだらしい。そのせいか、昔以上に精霊に好かれるようになり、普段は今みたいにフィーリアの周りに集まって来るようなのだ。
本来は契約しない限り目に見えない精霊なのだが、精霊王の力を持つフィーリアの近くにいるせいか、他の皆にも見えるようになっている。子供たちからは大人気である。
俺はそんなフィーリアからタオルと飲み物を受け取り礼を言う。フィーリアは嬉しそうに微笑んでくれて、その場に簡易的ではあるが椅子と机を土魔法で作ってくれた。
「お兄様、聞きましたよ? アステルお姉様のお話。迷わずに即答したそうでは無いですか」
「ん? そりゃあ、大切な妻が困っているのなら当たり前だろ?」
俺が不思議に思う事なく答えると、フィーリアはやれやれと苦笑いをする。なんだよ?
「ふふ、何でもありませんよー。それよりも、これからどうされるのです? 私もルールは聞きましたが」
フィーリアはこてんと首を傾けながら尋ねてくる。これからなー。ルールといっても2ヶ月後までに大陸を代表するメンバーを決めとけってだけなんだよな。
メンバーの人数は10人。その中から試合ごとに人数を決めて戦うらしい。試合ごとにってなると複数回試合がある事になる。まあ、7大陸あるから、7チーム総当たりとはならないのだろう。
そしてネックなのがこの10人のメンバーというのだ。この大陸の神であるアステルは参加出来ない。これは他の大陸も同じだ。
その中でまずは俺、そして師匠が出る事に。自惚れているつもりはないが、この大陸の中だと俺はトップになるほどだろう。師匠も言わずもがな。
そして残り8人をどうするか。何人かは目星をつけているため、2ヶ月の間に会いに行き頼むつもりだ。
問題は妻たちをどうするかだ。正直言うと妻たちの実力はそこら辺の人人たちより断然高い。オールマイティーのアレクシア、魔法特化のフィーリア、剣の腕は俺に並ぶエアリス、防御面では最強の盾を持つキャロに回復特化の香奈、獣化を覚えたフェリスに、特別な訓練を受けているハク。竜であるエクラと中々メンバーが揃っている。
マーリンや麻里、ミルアもそれぞれかなりの実力者だ。俺の妻で戦う能力が低いのってクロナとヘレンにプリシアぐらいではないだろうか? まあ、3人は戦闘面以外では物凄くお世話になっているのだが。
俺の妻たちが仲良くいてくれているのはこの3人がいてくれているからだと俺は思っている。
ただ、俺の勝手な気持ちではあるが、妻たちには出て欲しくないと思っている。まあ、俺のわがままだな。多分だがエアリス辺りは出るって言いそうだし。
「実力次第では私たちも出るつもりですよ、お兄様?」
そんな事を考えていると、フィーリアに釘を刺されてしまった。そうなると、1ヶ月以内にメンバーを集めて、もう1ヶ月は特訓につぎ込むしか無いよな。フィーリアたちなら実力がなければ本当に出てきそうだ。
取り敢えずアステルと相談しながらになるな。他の大陸の事やそこに住む人たちの事も知りたいし。神であるアステルなら少しは知っているだろう。
それから、俺たちは訓練場、俺が作った擬似神域から出て、皆が待つ食堂へと向かう。唯一の家族が皆全員揃う機会だから、少しはこの事について話し合う事になるだろう。そこで言ってみるか。猛反発をくらいそうだが。




