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後日談.新婚旅行?編 別れ

 全員がしーんと静まる中、俺はアルベリーの肩を掴みながら続ける。


「アルベリー、この国の女王になるんだ。カレンデイーナの様にとは言わないが、この国はアルベリーが率いて行くべきだ。そうしなければこの国は終わりだ」


 俺が真剣に言っている事が伝わって、アルベリーは逡巡する。アルベリーももしかしたら考えた事があるのかもしれない。このままこの王が居座ったままでは駄目だと。


 当然、俺たちの話に割り込む奴らもいて


「おい、貴様っ! 何をふざけた事を言っている! そんな事冗談でも許されないぞ! 今なら頭を地につけて誠心誠意謝れば、陛下も許して下さる。さあ、早く!」


 貴族の1人がそんな事をのたまいながら俺の肩をつかんでくる。男は力一杯掴んで、頭を地に付けさせようとするが、そんな力ではビクともしない。


 俺が軽く押すと、貴族の男は尻餅をついてしまった。足腰も弱いなこいつ。俺はそのままアルベリーを見る。アルベリーはまだ迷っている様だ。


「確かにアルベリーには辛いだろう。こんな奴でもアルベリーの血の繋がった家族だ。でもここで決断しなければ……」


「わかっています!」


 俺の言葉に被せる様にアルベリーは叫ぶ。アルベリーは手が白くなるほど握り、歯も食いしばっている。今まで何度も何度も考えてきたのだろう。そして父たちが変わるのを待っていたのだろう。


「わかっています。もう、このままじゃ駄目な事は。だけど……だけど、それでも私は自分の最後の家族である父親や兄に手をかける事など……」


 それだけ言ってアルベリーは涙を流す。仕方ないよな。母や姉たちは戦って亡くなり、数少ない血の繋がりだ。だけど、このままじゃあこの国は確実に滅ぶ。それほどまでこの国は疲弊している。


 アルベリーたちが戦っても限界があるだろう。毎日毎日兵士が増えるわけでは無い。むしろ減って行くばかり。


「わかった。それなら……」


 俺はアレンと手を繋ぐヘレンとエレネと手を繋ぐマーリンに目線で合図する。2人もこれから俺のする事がわかったのだろう。2人の目と耳を塞いでくれる。


 これから血生臭い光景が広がるからな。まだ子供の2人には見せられない。


 俺は近くでニヤニヤとしている先ほど尻餅をついた貴族の男に向かって指を向ける。男は怪訝な顔をするが、次の瞬間


「がぁっ!?」


 男は額から血を流し倒れていった。俺が指先に魔力を集めて、男の頭を撃ち抜いたのだ。床に広がる血を見て、少しずつ現実とわかってきたのか、叫び出す周りの貴族たち。


 俺はそのままへたり込むアルベリーの兄の前へ行く。アルベリーの兄は下から俺を見上げ口をパクパクとさせて何かを言うが、俺はそのまま


「ま、まってぇ!」


 アルベリーの叫び声も聞かないまま、俺はアルベリーの兄の頭を撃ち抜く。アルベリーの兄も頭から血を流して、動かぬ骸となった。


「ままま、待て! 待つんだ! こここ、こんな事して無事で済むと思っているのか! この王宮には兵士たちが……」


「それがどうした? この王宮にいる兵士が何人いるかは知らないが、兵士たちが来る前に死ぬあなたが気にすることでは無い」


「なっ!?」


 俺は再び、驚きの声を上げる国王へと指を向ける。国王は後ずさりをして逃げようとするが、重たい体を床に擦り付けているだけだ。


 そして、俺が撃つ前に、アルベリーが自分の剣を抜き、俺に迫る。だけどそこにはアルベリーを阻む壁が現れる。キャロが障壁を発動したのだ。


 だけど、これは俺が始めた事なので、キャロの障壁に上書きする様に俺の障壁を発動する。その事に気がつくキャロには、はぁ〜、と溜め息を吐かれた。なぜ!?


「くっ! ど、どうして前に進めないのよ! や、やめて下さい! やめて下さい、レイ様!」


 アルベリーの悲痛な叫びを背に受けながら俺は……


 パァーン!


 王はそのまま後ろへと倒れて行く。王が着飾る豪華な服も、歩くのも憚れる程の床も赤く染まってゆく。既にこの部屋にいるのは、俺とアルベリーだけだった。


 アレクシアたちには、何も言わないままカレンデイーナのところへ転移させた。突然現れたらカレンデイーナは驚くだろうが、そこはフェリスたちが上手く話していると信じたい。


 アルベリーは障壁で進めなかった場所で座り込み、嗚咽を漏らしていた。


「アルベリー、俺の事は恨んでくれていい。俺がアルベリーの家族を殺したからな。だけど、この事で歩むのをやめないでほしい。この国を守れるのはアルベリーだけだからな。

 それでも立ち止まりそうになり、この国も危険になった時に、少しでも俺の事を覚えていたら、この前あげたネックレスを握りながら俺の名前を呼んで欲しい。一回きりだが、俺に届く様になっている。その時は絶対に助けに来るから」


 アルベリーには隠していた能力の1つだ。他のみんなにも同じ能力をつけた装飾品を上げている。俺の言葉に反応しないアルベリーだが、話は聞いてくれているだろう。


 俺はそのまま転移する。景色は一瞬で変わり、カレンディーナの部屋へと移動した。部屋の中にはみんなが揃っており、鎧を脱いだカレンディーナが座っている。みんな心配そうな顔で俺を見て来る。さて、どうするかね。

明日は休ませてもらいます。

お許しを。

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