後日談.新婚旅行?編 神域へと
「ここが、女神クリーナ様を奉る本神殿になります。私が司教にお願いしますので、後について来て下さい」
アルベリーが先頭に立ち、そう言ってくる。神殿に向かうのは俺とアステル、それからハクだ。残りのみんなは、アルベリーの部下の兵士に連れられて、宿の方に案内された。
宿と言っても、王宮で過ごしたく無いアルベリーが城壁の近くに建てた屋敷らしいが。部屋が多いので、そこで住んで欲しいと言われたので、こちらも了承したのだ。特段断る理由もなかったしな。
神殿に入ると、時間的な問題なのか、この国の人は無信仰者なのかはわからないが、人がいなかった。いたのは、神殿の中を掃除する顎に白ひげを蓄えた男性だけだ。
「ガインさん、お久しぶりです」
「おや、これはアルベルティーヌ様、本神殿に来られるなんて珍しいですね。いつもは外の方の神殿におられるのに」
「今日は少し用があってここに参ったのです。少し失礼します」
アルベリーは、ここの司教らしき人物、ガインにそれだけ伝えると神殿のさらに奥へと進んで行く。そのアルベリーの行動に、ガインは苦虫を潰したような顔をする。
あまり良い関係とは言えなさそうだ。まあ、司教の格好もここに住む住民と変わらず豪華だったのは、そういう事なのだろう。
町娘のような格好しているこの国の王女であるアルベリーと、貴族と言われてもわからないほどの服を着ているガインを比べたら。
「この奥に、クリーナ様の御神体があります。そこでなら、落ち着いて話す事が出来ると思います。でも、本当にクリーナ様とお話しする事が出来るのですか?」
「まあ、そればっかりはやって見ないとわからないな。アステルが話しかければ反応するはずなのだが」
俺はアステルの方を見るが「多分ですけどねー」としか言わない。こればかりは試さないとわからないそうだ。取り敢えず進むと、他の空間に比べて神々しい雰囲気のある扉に辿り着いた。ただ、神竜の扉に立った時程の威圧感は無い。
「開けます」
先頭に立つアルベリーが扉に手をかけて開ける。中はどうなっているのかと思ったが、女神クリーナを模った御神体があるだけ。
特にお供えなどをされているわけでもなく、その御神体ですら埃をかぶっているのが現状だ。あの司教、この状態のまま放っているな。
「……これは酷すぎます」
当然、女神クリーナを信仰するアルベリーは、この現状に怒りをあらわにする。同じ神として許せないのか、普段怒る事のないアステルですら怒っている。
「……先にここを掃除しよう。これはあまりにも酷過ぎる」
俺はアイテムリングから掃除用の布と大きな石を取り出す。石を土魔法で形変えて、水が漏れないバケツの様にして、そこに水魔法で水を入れる。
アステル、ハク、アルベリーに布を渡して、それぞれ掃除をしていく。うわぁ、汚いな。本当に全く掃除していないのだろう。所々に蜘蛛の巣も張ってあるし。
御神体が置かれた部屋はあまり広くなかったので、みんなで手分けしたら30分ほどで終わった。
掃除する前とは見違えるほどに綺麗になった。どれだけ掃除してないんだよ、と思ってしまう。でも、これで落ち着いて話す事が出来るだろう。
「アステル、そろそろやろうか。いけそうか?」
「やってみましょう」
アステルは、女神クリーナの御神体の前に立ち、普段は抑えている神力を発動する。普段はダメダメな感じなのだが、この時ばかりは本当に女神なのだ、と感じてしまう。まあ、普段からこんな感じだと肩が凝ってしまいそうだけど。
「うーん、クリーナの力が弱まっているのか、中々繋がりませんね。レイさん、手伝ってもらえないでしょうか。こちらから無理矢理繋げようと思います」
「わかった」
俺はアステルに言われるまま隣に立つと、アステルは右手を出してくる。それは、手を繋げと言っているのか。手を繋ぐとアステルの表情がニヨニヨとする。
この顔を見ていると、手を繋ぐ必要があったのか疑問に思ってしまうが、アステルの柔らかい手を握っていると、そんな考えも無くなってしまう。
俺はその体勢のまま神格化を発動する。俺とアステルの力でこの空間を擬似的な神域へと変える。そして無理矢理、女神クリーナのいる空間へと繋げる。
「おにぃ、かっこいい」
「えっ、えっ、ええっ?」
後ろでは、純粋に褒めてくれるハクと、突然の事に驚くアルベリーの声が響く。それに気にする暇もなく俺はアステルと力を合わせる。
少しずつ女神クリーナの元へと空間が繋がって行く。そしてそれに合わせて周りの景色も変わって行く。
アステルのところに呼ばれた時の様な、周りが真っ黒な空間だが、あの時と違うのは、この空間が崩れかけている事だ。
「まさか、無理矢理入ってくるなんて。レディーの部屋に押し入るなんて酷い男ね」
そんな時、後ろから物凄く妖艶な声が聞こえてきた。みんなが振り向くとそこには、黒髪を地面につくほど伸ばしており、黒のタイトドレスを着た、とんでもない美女が立っていた。彼女が女神クリーナか。
「ふふ、アステルの神力を探知して呼んだのだけど、まさか、本人が来るとはね」
アステルが来たのが予想外だったのか、首を横に振るクリーナ。そこに
「ふふーん、私結婚したんですよ。羨ましいでしょ〜」
と、ドヤ顔で自分の左手薬指に光る指輪を見せつけるアステル。クリーナは「べ、別に」とか、言うが、アステルは「ほれほれ」と、うざいぐらい見せつける。
このままでは、全く話が進まないので、アステルの頭を掴み黙らせる。涙目なのに恍惚とした表情を見せるアステルに、若干クリーナも引いているが、このまま話を進めさせてもらおう。さて、どんな話が聞けるか。




