↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

272/350

後日談.汗をかいたので

 アステルの前でニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる5人の冒険者たち。その視線に晒されたアステルはと言うと


「ハァ……ハァ……ふぅ。うーん、初めはアリかもとか思いましたが、レイさんに比べると物足りませんね。レイさん、さぁ!」


 アステルは勝手に1人で納得して、俺に手を広げて何かを求めてくる……いや、意味がわからないから。さぁ、と言われても。アイアンクローをかませばいいのか?


 そう思っていると、すっかり無視された男たちが、怒りに顔を赤く染めて、アステルの肩を掴む。


「おい、俺たちを無視してんじゃねえよ! とっととついてこい、このアマが!」


 男たちの1人が怒りのままにアステルの肩を掴むが、男はそのまま宙に舞い、地面に叩きつけられた。アステルが肩に掴まれた手を取って力任せに引き寄せて叩きつけたのだ。


「気安く触らないでください。私を触っても良いのはレイさんだけです」


 そう言って、殺気を放つアステルさん。ちょっとやり過ぎです! 一番殺気を当てられた男が気を失ってるじゃないですか!


 今のアステルは、先ほどまでの駄女神の雰囲気は無く、敵を視線で殺せるほど冷めた目で男たちを見ていた。そして俺の方を見ると


「いや〜ん! 怖かったですぅ〜! レイさ〜ん!」


 と、物凄く甘い声を出して抱き付いてきた。当然、突然雰囲気の変わったアステルをぽかーんとみる絡んできた男たち。周りの受付嬢や他の冒険者たちも呆けた顔で見ていた。だから


「レイさん〜……あぅっ! 痛いですぅ〜! ああ、頭が割れますぅ〜〜〜!」


 お望み通りアイアンクローをお見舞いしてやった……少しアステルを虐めるのが楽しくなってきている俺がいる。


 そんな風に騒いでいたら


「何を騒いでいるんだい、あんたたち!」


 地下の訓練場から1人の女性が出てきた。その瞬間、ギルドの中にいた人全員が立ち上がり、その女性に向かって頭を下げる。その女性が周りを見て、アステルを掴んでいる俺を見ると


「おや、レイじゃないか。何をしているんだい?」


 と、笑顔で話しかけてきてくれた。だから俺も


「こんにちは、師匠。少しアスナと依頼を受けに来たのです」


 俺の師匠、シルフィード・シックザールに笑顔で挨拶をする。師匠は3年前の大戦が終わった後は、カルディア学園の学園長を副学長に譲って、学園を辞めてしまったらしい。


 その後、他の国を見て回って復興の支援をして、落ち着いてからは、この王都で冒険者ギルドの顧問兼新人冒険者たちの指導を行っているそうだ。


 その恩恵を授かろうとこの冒険者ギルドには結構な人数の冒険者が登録されているらしい。理由は師匠の指導を受けられるのが、ギルドに登録して1ヶ月以内の冒険者のみだからだ。


 だから、初めて冒険者になろうとする人たちはこの都市に集まってここで登録するらしい。そして師匠に習いある程度冒険者としてやれるようになったら他の国、他の都市を目指すとか。


「アスナ? ……なるほど、そう言う事だね。それでこの騒ぎは?」


 師匠は俺の言ったアスナという名前に首を傾げるが、俺にアイアンクローをされているアステルを見て納得してくれたようだ。この騒ぎについては、職員さんに聞いて下さい。俺たちは悪くありません。


 そして、師匠は受付嬢から話を聞いて、職員に俺たちに絡んで来た冒険者を連れてくるように言って、訓練場に戻ってしまった。どうやら鍛え直すらしい。どんまい、絡んで来た人たち。


「……あっ、あぅぅ〜、あ、頭が〜、頭がクラクラしますっ〜……でも、空を飛んでいるようにふわふわしますぅ〜」


 あっ、やべ、アステルを握ったままだった。


 ◇◇◇


「ふぅ、楽しかったですね、ゴブリン退治!」


 俺の隣で物凄く嬉しそうにはしゃぐアステル。時刻はもう夕暮れにさしかかり、夜へとなろうとしている。


 師匠と出会った後は、俺たちは森に現れるゴブリン退治の依頼を受けて、森に出て来たゴブリンたちを片っ端から片付けていった。全部で100体ほどだろうか。少しやり過ぎた気もしない事は無いのだが、まあ、アステルが楽しそうなので良いとするか。


 俺たちがそのまま王宮に戻ると、丁度門のところで


「あっ、レイ、お帰り。外に出てたの?」


「おにぃ、お帰り」


 フェリスとハクが帰って来たようだ。2人は俺と同じように冒険者として活躍している。ランクはフェリスがAランクでハクがBランクだったかな。2人が行動しているのは、主に魔の大地だ。


 あそこはバロンの封印が無くなっても、残ったバロンの瘴気のせいか魔物が他の地域に比べて強いのだ。大進行のようなものは起きなくなったようだが、時折強力な魔物が魔の大地から出てくるので、それを倒しているそうだ。


「ただいま、フェリス、ハク」


 俺は2人の頭を撫でる。2人も気持ちよさそうに頭を擦り付けてくるので可愛い。俺の隣でそわそわと駄女神がしているが無視だ……ハァハァ言い始めたので仕方なく撫でる。


 4人で談笑しながら王宮に入り、俺は自分の部屋に戻る。俺の部屋はこの王宮で一番広く一番大きなベッドがある。理由は……夜の戦いのためだ。


「……汗かいたからお風呂に入りたいな」


 久しぶりの依頼ではしゃぎ過ぎたからか、汗をかいてしまったので、食事の前に風呂に入ろうか。多分もう入れるだろうし。無理だったら無理矢理湯船を作れば良いからな。


 俺は着替えと、毎日交換される入浴道具を片手に、お風呂場を目指す。この風呂場は3年前と変わらずに広々としているからな。ゆっくり休むには良いところだ。


 俺は鼻歌を歌いながらお風呂場に向かっていると、向かいから


「あっ、レイさん。レイさんもお風呂ですか?」


 と、ヘレンが歩いて来た。どうやらヘレンもお風呂に入るようだ。


「ああ、久しぶりに外で体を動かしたからな。汗をかいてしまって。ヘレンもか?」


「はい、今日の用務は終わりましたので、先にお風呂を頂こうかと思いまして……もしよろしければご一緒に……」


 俺はヘレンが言葉を言い終える前にヘレンの開いた右手を掴む。宰相として頑張ってくれているヘレンを労うかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
3年。主人公がいない間、それでも!って皆が頑張った痕跡が見れて良いですね、後日談。感謝。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。