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228.魔神大戦 千眼樹

「ギィヤやヤヤァァァァァァ!」


「ひぅっ!」


 断末魔のような聞くのが辛いほどの声を上げる黒い玉。周りの兵士たちも呆然とその黒い玉を見て固まっている。


 私もあの黒い玉を見ていると、何だか気持ち悪くなる。理由はわからない。だけど、あの血走った目に聞くものを震えさすような断末魔の叫び声。体の震えが止まらない。


 そう思って見ていたら、黒い玉に異変が出始めた。先ほどまでは、まん丸なまま空中に浮いていたのだけど、突然黒い玉の表面がボコボコと動き始めたのだ。


 それを見て警戒する兵士たち。私も麻里もすぐに動けるように構える。あの黒い玉が何万といた魔物を吸収したのならただ事では無いはず。


 S級は全て倒したけど、他にもSに近いAランクなどもいたし、亜種もいた。あれがただの黒い玉なわけがない。そしてその黒い玉は動き始めた。


「ギャアアアアアアアアア!」


 黒い玉が先ほどとまでは違う叫び声をした瞬間、黒い玉の下の部分から黒い蔓のようなものが大量に伸び始めたのだ。黒い玉からとめどなく伸び続ける黒い蔓。その蔓は次々と地面に突き刺さる。


 蔓は地面に刺さるものと、蔓同士巻き付いていくものがある。そして今度は側面側や上からも蔓が出始めた。上下左右から伸び続ける黒い蔓が、次々と地面に刺さるか、蔓同士巻きついてどんどん形を変えて行く。


 そして出来たのが、巨大な木だった。高さは100メートルほどだろうか。高層ビルぐらいの高さになる。太さはとんでも無い太さ。そんな真っ黒な木が生えてしまった。そして次の瞬間


 ギョロ!


 黒い木の所々から先ほどと同じ血走った目が見開かれた。……き、気持ち悪い。


「千眼樹……私オリジナル……その上魔神様の力も入っているハイブリッド」


 その木の魔物ーー千眼樹の上に降り立つ七魔将の1人、リリス。そのリリスが指を動かした瞬間、黒い蔓はリリスまでにも巻き付いてしまった。


「こ、攻撃開始!」


 そこに、オッバーマン大統領が攻撃の指示を出す。そ、そうだ、こんな見ている場合じゃ無い。何もして来ないうちに攻撃して倒さないと!


 他の兵士たちもそう思ったのだろう。次々と魔法を放ち始める。次々と魔法は当たるのだけど、千眼樹の表面を少し削るだけ。直ぐに新しい蔓が巻きついて直してしまう。


『ちっ、面倒だ! 竜王の咆哮(ドラゴニクスロア)!』


 普通の魔法では削れないと思ったのでしょう。アニマさんは竜王の咆哮を放つ。千眼樹はそれを避けること無くそのまま受けて、砂煙が舞い上がります。兵士たちからおおぉ! と歓声が上がります。これでどうなったのでしょうか?


「……無駄……その程度では……倒せない」


 だけど、聞こえてきたのは、千眼樹の倒れる音では無くて、抑揚のないけど、自信のこもった声だった。煙の中からブウォン! と何かが振るわれて姿を現したのは、竜王の咆哮で3割ほど吹き飛んだ千眼樹だった。


 普通ならそれほどの傷を敵に負わせたら喜ぶところなのだけど、相手はその感覚があるのかわからない木。その上、中心部分から新しい黒い蔓が伸びてきて、吹き飛んだ無くなった場所を修復するかのように新しく巻きついて行く。


「これは本当に面倒だね」


 ドロテアさんも、苦笑いをするしかないようだ。そこに


「ドロちゃん……今戻るなら……私が魔神様に取りなってあげる……どうする?」


 千眼樹の中心部分に上半身だけ女性の体が出てくる。あれは……吸収されたリリス。千眼樹とは一体化したように、下半身の部分は千眼樹に埋まっている。


「馬鹿なことを言わないでよ。私はもう戻らないわ。私はこちら側で戦うと決めたのだから」


 ドロテアさんは、リリスの問いにもキッパリと断った。リリスは「そう」と一言言うと、ドロテアさんを睨みつけてくる。


「なら、ドロちゃんは敵……面倒だけど、殺す」


 リリスがそう言った瞬間、動き始める千眼樹。ギョロリと千眼樹の目が全てこちらを見る。そして、リリスが腕を振ると、一気に伸びてくる黒い蔓。


「魔法師隊、障壁を張りなさい!」


 ヒラー副大統領の指示で、魔法師たちは一気に障壁を張る。障壁に弾かれる黒い蔓だけど、直ぐに攻撃をしてくる。なんて数なの? 数百という数の蔓が砦な向かって幾重にも叩き付けられる。


「ぐにゅゅぅぅ……」


 麻里も私も障壁の発動に混ざっているけど、物凄い力。何とか耐えているけど、このままだと確実に押される。


「……耐えた……それならこれはどう?」


 リリスは私たちが蔓の攻撃に耐えた事が不満なよう。そして振り下ろしていた蔓を捻り1つの束へと変える。ま、まさか……


「ままま、まずい! まずいよ! 麻里、ここを離れるよ!」


「えっ? あっ、う、うん!」


 私はマリの手を引っ張って砦の上を走る。オッバーマン大統領も気が付いたのか砦の上にいる兵士たちに逃げるように指示を出す。


 砦の上の兵士たちも逃げるけど


「潰れろ」


 一気に振り下ろされる巨大な蔓の束。それは一本の鞭のようにしなりながら砦へと振り下ろされる。蔓が振り下ろされた箇所は粉々となり、ただの瓦礫となってしまった。そして、私たちも


「ふわぁっ!?」


「きゃあっ!?」


 蔓が振り下ろされた衝撃で砦から吹き飛ばされた。こ、このままじゃ落下して死んじゃう!? どどど、どうすれば!?


「ままま、麻里! 私たちの体をう、浮かせて!」


「わ、わかった! ……何の魔法唱えればいいの!?」


 そんなこと聞かれても! その間にも地面は近づいてくる。どどど、どうしよう!? そう思った時


「ふわぁっ! か、体が浮いた?」


 私と麻里の体は空中で浮いたのだ。麻里が魔法を成功させたのかと思ったけど、麻里も顔をきょとんとさせていたので、違うのだろう。それなら誰が? と思ったけど、直ぐに誰かはわかった。それは


『無事だったかお主ら』


「アニマさん!」


 風の属性王、アニマさんが魔法で助けてくれたのだ。他の砦から投げ出された兵士たちも同じように空中で浮いている。よ、よかったぁ。


 そのまま、私たちはアニマさんの背中に乗せてもらう。背中にはドロテアさんも乗っていた。


「さて、面倒な事になったわよ」


「ドロテアさんはあれが何か知っているのですか?」


「あれは、リリスのレベル9の闇魔法『融合』で新しく作られた魔物よ。あれはさっきまでいた数万の魔物を全て混ぜ合わせてリリスが新しく作ったのよ」


 だから、あれ程いた魔物たちが消えてしまったのですね。


「それで、あれを倒すにはどうすれば?」


「……カナ、私の腕を治してちょうだい。本気でいくわ」

……みなさん、お気づきかも知れませんが、2月中に終わらすのは無理そうです。(笑)

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