227.魔神大戦 融合
イールノルト連邦共和国 大金山
香奈視点
「エリアヒール!」
私は怪我した人たちを問答無用に治していく。だけど、当然治療出来る魔法師は敵からしたら厄介なわけで、物凄く狙われる。
特に私は、本来は後衛にいるはずの回復魔法師。後ろに怪我をした人が運ばれれば、その人を治療する役なのだけど、バリバリ前線で働いている。理由はこうした方が怪我をしたら直ぐに治療出来ると思ったから。
前の戦争では、運ばれてくる人は殆どが作戦本部に近かった人だけ。前線の方で戦っていた人はほとんど帰って来られず、怪我をして動けなくても放置されていた。
帰って来られたとしても、かなりの重症で治すのに時間がかかってしまい間に合わなかったりする事もあった。
私はあの時ほど無力を感じた事は無かった。女神の力を持っていても役に立たなくて、ただ死んでいく人を見るだけ。
それが嫌で、私は同じ女神の力を持っているキャロちゃんに魔法を習った。キャロちゃんの障壁は加護の能力だけど、あれに近い事なら魔法でも出来ると聞いたから。
そして、その力を使って私は前線でも治療に専念できる。まあ、空飛べる魔物たちが物凄く私を狙って来るけど。
でも、それも、気にしていない。だって私には私を守ってくれる大切な親友がいるんだもん!
「カナミンには触れさせないよっ!」
私の親友、麻里は自分の周りにかなりの数の魔法を発動させ、それを魔物たちに向かって放つ。1つ1つは初級魔法だけど、それがかなりの数の降りかかってくれば、魔物もひとたまりもない。
「カナミン、大丈夫?」
「うん、麻里が守ってくれているから平気だよ。それより、他に怪我人は?」
「今の所は軽症な人ばかりみたい。その人たちは他の魔法師の人に治してもらっているよ」
「そうなの。大統領やドロテアさんたちは?」
「……」
ちょっと、目を逸らさないでよ! 私もその気持ちはわかるけど!
私は戦場の方に視線を向けるとそこでは
「ふはははっ! どうした! お前の筋肉はそんなものか!」
と、笑いながらギガンテスと殴り合っているオッバーマン大統領の姿があった。自分の体より大きなギガンテスの拳に、オッバーマン大統領は自分の拳をぶつけて逸らす。
そして、ギガンテスが地面を殴っている間に、足下までオッバーマン大統領は走って行き、人間でいう弁慶の泣き所を思いっきり殴っていた。
ギガンテスも、その部分は痛いのか、それともオッバーマン大統領の一撃が強いのかはわからないけど、痛みにバランスを崩して倒れる。
地面を揺らすほどの質量を誇るギガンテスが倒れれば、周りの小さい魔物たちも巻き込まれる。うわぁ、ギガンテスの体にぺっちゃんこになったよ。
そんな事は御構い無しにと、オッバーマン大統領はギガンテスの顔に駆け寄り
「ふんらぁっ!」
気合の一撃を顔に叩き込む。ギガンテスの顔面はその1発で減り込んで、顔の穴という穴から血が吹き出る。……エグい。
ドロテアさんは、土魔法で、地面をデコボコに隆起させて走り辛くさせて、フェンリルの速さを奪います。その上、土魔法の中に火魔法も混ぜているのか、フェンリルが足を付けた場所がたまに爆発します。毎回では無いのだけど、時折踏んでしまうので、フェンリルもかなり走り辛そう。足は血塗れだし。
フェンリルの鳴き方も次第に、クゥーン、クゥーン、と弱々しい鳴き声になってきた。だけど、ドロテアさんは当然手加減する訳もなく、再び地面に手をつける。すると、地面から円錐の形で盛り上がって来たのだ。
本来なら素早いスピードで避けるフェンリルだけど、今は走りづらく隆起した地面に、幾度と無く受けた火魔法の爆発の痛みによって動きが鈍い。何とか跳んで逃げようとするけど、再び
ドガァン!
「ギャウン!?」
地面が爆発する。そのせいでバランスを崩して横倒れになる。そこに円錐に盛り上がる土がフェンリルに迫り、串刺しに。
本当ならフェンリルが売りとする俊敏さや強度な爪で切り裂いたりするのだけど、横倒れになってしまえば、早くも動けないし、切り裂く事もできない。ただ、柔らかい脇腹に突き刺さるのを待つだけだった。
アニマさんは水のブレスを吐いてくるヤマタノオロチの攻撃を余裕で避けていた。それに合わせてサンダーバードがアニマさんに向けて落雷を落とすけど、アニマさんは体に纏っている風の防壁で逸らしてします。
そして、そのままサンダーバードへ飛んで行き首の骨を噛み砕いてしまった。そのままヤマタノオロチに向かって急降下。ヤマタノオロチは水のブレスを放つけど、風の防壁で弾いてしまう。
アニマさんはヤマタノオロチの背後に周り、首が全て繋がっている胴体を踏み潰してしまった。……ヤマタノオロチの内臓が潰れて撒き散らす。グロい。
だけど、これで、S級の魔物は全部倒した! さすがにもう増えないでしょ!
「……はぁ。全部やられちゃった。……本当に面倒。闇魔法、融合発動」
私がこれならイケるかも、と思って少し油断した瞬間、魔物たちがいる中心辺りの空中に真っ黒い玉が出現した。何あれ?
「ちっ! 全員、何かに掴まれ! 吸い込まれるぞ!」
私がぼーっとその黒い玉を見ていたら、ドロテアさんが砦にいる私たちに向かってそう叫ぶ。アニマさんも、かなりの速度で砦まで戻って来て、砦を囲うように風の防壁が発動する。
「い、一体何が?」
隣で麻里も突然の事に驚きの声をあげるけど私にもわからない。そして、風の防壁が無くなると、そこには、先ほどまで引き締め合っていた魔物の姿が無くなっていた。
唯一残ったのが空中に浮かぶ黒い玉のみ。一体何が起きたの? 砦の兵士たちは魔物が消えた事に喜び始めたけど、明らかにおかし過ぎる。先ほどまであんないっぱいいた魔物たちが消えるなんて。
オッバーマン大統領たちも真剣な表情を崩さない。みんなが見るのは黒い玉。やっぱりあれが原因? そう思って黒い玉を見ていたら、
「ヒィッ!?」
隣で麻里が悲鳴をあげる。まわりの喜んでいた兵士たちも絶句する。でも、それも仕方ないと思う。私も叫ばなかったのが不思議なくらいだもの。だって、あの黒玉は、中心部分に突然目が現れて、それを皮切りに黒い玉全体に目が現れたのだもの。黒い部分がほとんど見えないくらい目で埋まってしまった。
そして
「ギィヤヤヤァァァァァァ!!!!」
まるで断末魔のような叫び声をあげるのだった。




