閑話 魔神の器(1)
「待て! くそっ、お前、こっちを回れ!」
「わかりました!」
はぁ、はぁ。くそっ、しつけえサツだぜ。こっちは楽しんでたのに! 俺は路地裏を何度も曲がりながら、サツから逃げる。そして路地から飛び出すと
「ブブブゥゥゥゥゥーーーー!」
と大きな音が鳴らされる。俺が慌ててそっちを見ると車が……
ドォン!
俺は何メートルも吹き飛ばされ地面を転がる。俺はそのまま気を失った。
◇◇◇
俺の名前は黒野真央。どこにでもいる30歳のフリーターだ。子供の頃のあだ名はマオウ。まさおって呼ぶよりも呼びやすいからだ。
昔から苦手な事は無かったが、得意な事も無かった、ごく平凡な人間。中学、高校と普通に過ごして大学も通った。友だちは人並みにはいたし、彼女も大学で初めて出来た。
だけど、就活には失敗した。何十という会社を受けても、全部がお祈りの手紙ばかり。受ける会社が3桁になる頃にはお祈りの手紙を見ると吐きがもようすぐらいだ。
それからはもう就職は諦めた。すると周りから友だちは減っていった。みんな就活して決まって、そっちで新しくグループを作っていくからだ。もちろんそいつらの中でも大学の時の奴らとつるんでいる奴はいる。
だけど、俺みたいな失敗した奴とはここで終わりってわけ。大学で出来た彼女とも、大学を卒業した後も就職出来てない奴とは付き合えないと言われ別れた。
それからは毎日代わり映えのないバイトをするだけ。バイト先のコンビニの店長からは、就職失敗した俺を蔑んだ目で見てきて、先輩の年下は俺を見下して来る。
そんな面白くもない日々のささやかな楽しみが、コンビニに買い物に来る女性を視姦する事だ。胸の大きな奴。足の長い奴。大きなお尻の奴。そんな女性を眺めるのが楽しみだった。
ただ、俺の欲望はそれだけでは収まらなかった。見ているだけじゃあ物足りなくなってきたのだ。家に帰ってから今日の記録を思い出して抜くのだが、日に日に気持ちはモヤモヤする一方。
そして、そのモヤモヤが爆発して、俺はやってしまった。夜道を歩く女性を襲ったのだ。俺は必死になり過ぎて、どうなったのか覚えていない。
ただ、女性を襲って、路地裏に連れ込んだのは覚えている。その後どうやって家まで帰って来たかは覚えていない、その日は、心臓が鳴り響いて眠る事が出来なかった。
一睡も眠れないまま、バイトに向かう途中に、昨日の道を通ると、警察がいた。俺は心臓が破裂するかと思ったが、どうやら俺とバレていないらしい。そのまま緊張したままバイトに向かった。
それからは、俺は何度も繰り返した。場所を変えては女性を襲う。その興奮が俺を楽しませた。回数を重ねていく事に俺も慣れて来て、楽しむ余裕が出来たからな。
女性の泣き叫ぶ顔。顔を叩くと黙って怯える姿。中に出す時の最後の抵抗。全てが興奮した。
だけど、それも長くは続かずバレてしまったってわけだ。また今日も女性を襲っていたら、巡回中の警官が2人やって来て、見つかってしまった。最近強姦事件が増えたから見回りが増えていたみたいだ。
俺は直様逃げた。逃げ切れない事はわかっていたが、逃げるしか無かった。そして車に轢かれて……
◇◇◇
「……ここはどこだ?」
目を覚ますと、辺りは見覚えの無い空間。真っ暗な空間にところどころに火が灯されて微かに見える。洞窟の様な石の壁だ。俺は体を動かすと、奇妙な事に気がついた。体が痛く無いのだ。あの時確かに車に轢かれたはずなのに。そう思い体を動かしていると
「目が覚めましたか」
と声がする。俺はドキッとして声のする方を見ると、銀髪の長髪に片眼鏡を右目に付ける男性が立っていた。しかも、肌の色が紫って人間じゃ無いのか?
「ようこそいらっしゃいました。魔神の加護を持ちし者よ。私の名はアゼルと申します。宜しくお願い致します」
そう言い右手を胸元に礼をして来る男、アゼル。意味がわからずに困惑としていると、頭を上げたアゼルが説明してくれる。
この世界は俺からしたら元の世界とは別の異世界ってやつらしい。アニメとかでよくあるやつか? 俺はあまりアニメとか見ないから詳しくは無いが。
他にはこの世界は魔法があったり、多種族がいたりと色々な事を教えてくれる。俺がこの世界に転移した理由は、魔神と魔力の波長が合ったからと言う。意味があまりわからなかったが、生きていたのだから良しとしよう。
「それでは、ステータスと言ってください。すると自分の能力が見られます」
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黒野 真央 30歳 男 レベル1
職業:異世界人
体力:750
魔力:2000
筋力:670
敏捷:400
物耐:460
魔耐:790
称号:異世界から召喚された者 魔神の加護 魔神の器 精豪 言霊使い
スキル:異世界言語レベルー 闇魔法レベル5 観察眼レベル3
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というのが出て来た。まるでゲームみたいだな。意識して見て見ると能力がわかるらしい。
魔神の加護:魔神の加護を持つ。この加護を持つものは死んでも生き返る事が出来る。復活した際は能力値が全て十分の一となる。時間が経つと元の数値に戻っていく。
魔神の器:魔神の力が受け入れやすくなる。
精豪:何度やっても衰えない。(体力に依存)
言霊使い:発言する言葉に魔力を込めて言うと、相手が意思に関係なく従う。レベル差、命令する内容により消費魔力量が増える。
異世界言語:異世界の言葉がわかる。
闇魔法:闇属性の魔法が使用出来る。
観察眼:人や物の情報が視れるようになる。レベル差が開きすぎると、? と表示される。レベルが上がると視れる情報が増える。
本当にゲームみたいだな。俺は試しにアゼルを観察眼で見てみよう。目に力を入れて見ると、おっ!
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アゼル ?歳 男 レベル?
職業:?
体力:?
魔力:?
筋力:?
敏捷:?
物耐:?
魔耐:?
称号:?
スキル:?
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……物の見事に全てが? だった。全くわからないなんて。
「確認は終えましたか? それでは主よ。参りましょう」
どうやら見ていたのはバレていた様だ。それからこの洞窟を出ていく。アゼルに色々と聞いていくうちに、ワクワクして来た。だって俺は魔人族のリーダーって言うんだぜ?
しかも、誰とでもヤリ放題。車に轢かれた時はもう終わりだと思ったが、くく、俺にも運が回って来たな!
◇◇◇
「召喚できたのか?」
「ええ。頭が悪そうな男で、なんでも信じましたよ。女を好きにして良いと言ったら喜んでましたし」
「そうか」
「後、ドロテアがそろそろ目覚めそうです。これで私たちも4人目。ようやく半分です」
「魔神バロン様の復活も……」
時期は男爵領のゴブリン大発生の時期です。
次話は戦争の後ぐらいになります。
よろしくお願いします!




