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159.参加

 ランウォーカー辺境伯領

 屋敷


 ふぅ〜。何とか間に合った。俺は腕の中にいるクロナを見ながらそう思う。あの野郎。人の婚約者に手を出しやがって。ただじゃ、済まさねえからな。そう思っていると


「……レ、レイ様なのですか?」


 とクロナが聞いてくる。おっと、あんな野郎の事よりクロナの事を見てあげなくては。左腕に切り傷があって血がまだ流れている。結構深く刺されているな。普通のヒールでは治らないだろう。


「クロナ、ちょっとヒンヤリするが我慢してくれな。ハイヒーリング」


 クロナの傷口に手を当て回復魔法で傷を治す。傷はみるみるうちに塞がって、クロナの綺麗な肌に戻った。


 そして俺がクロナをお姫様抱っこの状態から降ろす。クロナは「あっ」と少し悲しそうな顔をするが、そんな事は御構い無しに、クロナを抱き締める。


「ごめんなクロナ。クロナには辛い思いばかりさせて」


 今思えば、4年前の時もクロナが被害にあった。あの時も俺は気が付かず、クロナに辛い思いをさせてしまった。今回も、ギリギリ間に合ったから良かったものの、もし間に合っていなかったら、体だけでなく、心にも深い傷を残していただろう。


「大丈夫です、レイ様。だって、辛い目にあったとしても、このように、必ずレイ様が私を助けてくれますから!」


 そう言い、花が咲いたような笑顔で俺を見上げてくるクロナ。俺はそんなクロナが愛しく思い、思いっきり抱き締めてしまった。


「わ、わぁ! レイ様〜! 苦しいですぅ〜」


 クロナはそう言うが、俺の胸元へ頭をグリグリと押し付けてくる。俺はそんなクロナの頭を撫でてあげる。


「レイ様。クロナを助けて頂きありがとうございます」


 そこへクロエが他の侍女たちを連れてやって来た。周りの侍女たちは見た事ない人ばかりだな。みんな俺の顔を知らない為か、物凄く見てくる。


 ……ん。クロエが抱き抱えている赤ん坊。誰かに似ているような。銀髪の髪に、将来は美人になるであろう顔つきをしている。


「クロエ。その赤ん坊って」


「はい、この方は……」


「私とお兄様の妹です」


 俺がクロエに、おおよその予想はついたが取り敢えず誰なのか聞こうとしたら、横からそう言う声が聞こえた。


 声の聞こえた方を見ると、4年前より、背や髪が伸び、少し大人びた雰囲気を出すフィーリアがそこにいた。


「フィーリア。大きくなったな」


 俺がワシャワシャとフィーリアの頭を撫でてあげると


「お、お兄様! み、みなさんの前で恥ずかしいですから!」


 と顔を赤く染めて抗議してくる。しかし、エリスに似て来て美人になって来たな。これは社交界にでも出たらモテモテになるだろう。すると


「おい、てめぇ! フィーリア……様に何気安く触ったんだ!」


 とフィーリアの後ろにいた騎士服を着たフィーリアと同い年ぐらいの男の子が俺にそう言ってくる。そう言えば俺の事を知らない人もいるのか。そう思ったので挨拶しようとしたら


「ドライ。あなた殺しますよ?」


 と、俺の胸元の位置から物凄く冷たい声が聞こえて来た。一度も聞いた事のないとても冷たい声なので、一体誰がそんな声を出したのかと思ったが、俺が言葉を発する前に、クロナが俺から離れていき、さっき俺に威嚇して来た少年、ドライの元へ行く。そして


「ぐへぇっ!」


 クロナが腰の入った右ストレートでドライの顔面を殴り飛ばす。クロナ、なんか強くなっていない? そう思えるほど、綺麗な右ストレートだった。そして


「みなさんも覚えておいてください! この方は旦那様とエリス奥様のご長男で、フィーリア様とクリシア様のお兄様で、わ、私の婚約者のレイヴェルト・ランウォーカー様です!」


 みんなに聞こえるようにクロナが紹介してくれた。ただ自分の婚約者っていう時だけ少し恥ずかしがっていたのか、噛んでしまったな。そんなところも可愛いのだけれど。


 そして、その事を聞いた侍女たちは俺に頭を下げる。いや、そんな事されたら困るから! そして


「あなた様が、フィーリア様のお兄様であられるのですね! 私はフィーリア様の護衛を任されております、ミルミと申します! よろしくお願いします!」


 フィーリアの後ろにいた騎士服を着た女の子がそう挨拶してくる。この子たちはフィーリアの護衛だったのか。そう言えばフィーリアの手紙にも書いてあったな。さっき殴り飛ばされたのがドライで、女の子がミルミ、最後の1人はグミンだろう。


「ああ、よろしくな。それからフィーリアをいつも守ってくれてありがとう」


 俺がそう言ってミルミの頭を撫でると、ミルミは嬉しそうにする。それを見ていたフィーリアは


「むむっ。ミルミたちが褒められたりするのは嬉しいのですが、頭を撫でている時間が私より長い気がします!」


 ……どこに嫉妬しているだよ、全く。俺は苦笑いしながら、周りを見る。他に傷を負っている人はいないな。兵士は全員死んでしまっている。間に合わなくてすまない。


 ここはもう大丈夫そうだな。ジークたちの方にはあの人たち(・・・・・)が行っているから少し遅れても大丈夫だろう。


「クロエ。このままみんなを避難させてくれ。俺は母上たちの元へ行く」


「……お兄様」


「……レイ様」


「フィーリアもクロナもそんな悲しそうな顔をするな。終わったら戻ってくるから」


 俺が2人の頭を撫でてあげると、悲しそうな顔をしていた2人が、笑う。やっぱり笑顔が1番だな。俺はみんなから離れて屋敷の正面へ行こうとしたところ


「でめぇ! ぶっごろじてやる!」


 と顔を血塗れにした男がやってきた。そう言えば殴り飛ばしていたな。すっかり忘れていた。殴った衝撃で歯が折れたのだろう。よく聞き取れない。その男は槍を構えて俺に向かってくる。


 後ろからフィーリアたちが叫ぶが、大丈夫だよと微笑んであげる。それだけで静かになってくれる。


「死ねぇ!」


 男は槍を突き出してくるが、俺は左側を横に逸らして避ける。そのまま突き出された槍を掴んで、掴んだ左手に力を入れて逆に突く。


 男が突き出した槍を突き返した事により、石突きが男の腹を深く抉る。不意をつかれた男はその場に蹲って胃の中の物を吐き出す。


 だけど、そんなものを待っている時間はない。それにこいつはクロナに酷い事をしたんだ。手加減なんて出来るわけもない。


 俺は男から奪った槍の石突きで、顔面を打ち上げる。男は「ぐひゃあ!」と奇妙な声を上げ、鼻の骨は折れたようで血がダラダラと流れる。


 俺は男の腕を掴み無理矢理立たせる。男は顔の痛みに呻く事しか出来なく涙を流しているが、今日の俺には見えない。


 俺は左腕に魔力を集め


「ぶっ飛べよ」


 男の顔を思いっきり左腕で殴り飛ばす。男は何か喚いていたが、聞こえなかったので無視だ。さっき突き破った壁を通り過ぎて、正面側の壁も突き破ったであろう音もする。俺も行くか。


「みんな気をつけてな」


 俺は一度みんなの方を見て言う。みんなも頷いてくれたので大丈夫だろう。エリスやジークには何か言われるかもしれないが、俺も自分の故郷を守るために参加させてもらおう。


 あっ、この槍は切られたロウガの代わりに使わせてもらおう。


 ◇◇◇


 私たちはお兄様が屋敷の玄関の方へ行く後ろ姿を見送る事しか出来ませんでした。か、カッコ良すぎますよ、お兄様! クロナなんか目がハートになってお兄様の後ろ姿を、穴が空くぐらい見ていましたし。


「す、凄いですねフィーリア様のお兄様。あの侵入者があんなにあっさりと」


 横に立っていたミルミも驚きの声を上げます。ふふん! 当然です! だって私のお兄様ですから!

レイがどうやって来たかは、後の話で出て来ます。


評価等よろしくお願いします!

「黒髪の王」もよろしくお願いします!

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