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138.本当の理由

 うわぁ〜、すげぇイケメン。街で歩けば10人中12人は振り向く程のイケメンだ。


 その後ろには金髪の中に所々白髪が混じった執事服を着た老年の男性と、紫色の髪、紫色の鋭い眼光で俺を見てくる綺麗な女性が立っている。服装からして侍女っぽいが、放たれる威圧感は武人のそれだ。


「お待たせいたしました、ナノール国王。今回はこの様な機会を頂いて感謝しております」


「何、気にする事はない。わしは場を設けただけだからな。それでは紹介からだな。エイリーン夫人、エアリス嬢、こちらがシーリア王国の第2王子であるミストガルト・シーリア王子だ。

 ミストガルト王子、知っていると思うが、エアリス・ランウォーカー嬢に、当主のジークハルト・ランウォーカー辺境伯の代理として来てくれているエイリーン・ランウォーカー夫人だ。それと辺境伯の息子であるレイヴェルト・ランウォーカーに娘のアレクシアだ」


 俺たちはそれぞれ頭を下げる。


「よろしくお願いする。俺の名前は紹介にあった通りミストガルト・シーリアだ。ミストと呼んでくれ、エアリス嬢」


「よろしくお願いします、ミスト様。それで早速なのですが……」


「ああ、もう隠すのも後々申し訳ないから先に言っておこう」


 そう言いながら立つミストガルト王子。なんだ?


「今回の話は無かった事にして欲しい」


 ……何言っているんだこの王子は? 意味がわからん。本人はわざわざ遠くのシーリア王国からやって来ているのに、自分からやめて欲しいとは。どういう事だ? 王様も困惑の表情を浮かべているし。


「……ミストガルト王子よ。どういう事か説明して欲しいのだが。今回はそちらがエアリス嬢と婚約がしたいからと言ったのでこの場を設けたのだが、それを取り消して欲しいとは?」


「はい。正直に話しますと、私は兄であり第1王子であるキルミス・シーリアから命を狙われています」


「なっ!」


 その言葉にシーリア国側以外は驚きの声を上げる。まさか、そんな言葉が出て来るとは思わなかったからだ。だけど、そんな事他国の人間に言ってもいいのか?


「それはどういう事なのだ?」


「自分で言うのも何ですが、昔から私と兄上は色々と比べられて来て、事ある毎に私の方が才能があると言われて来ました。しかし、私には王位が興味なかったので、父上に進言し王位から降ろしていただきました。しかし、兄上はそれでも不安だったのでしょう。裏で暗殺者を雇って私を殺そうとしたのです」


 それは何て言うか。確かにいくら弟が王位を降りたとしても、周りの貴族が黙ってはいないだろう。それ程弟のミストガルト王子に才能があるのならば。


 しかし、兄の方も短絡過ぎるだろう。いくら不安だからと言っても、いきなり暗殺者を仕向けるなんて。


「何とか暗殺者を追い返しましたが、これ以上シーリア王国にいるのは危険だと思い何とかして出る方法を考えたのです。けれども、普通に国を出ようとすれば必ず兄上に止められます。1度ナノールに来た時はその最中でした」


「その時逃げようとは思わなかったのか?」


「その時は側に兄上の側近がいましたし、後ろにいる侍女のクラリエもシーリアに残っていた状況でした」


 そうか、だから……。


「それで、その時に見たエアリス嬢を使って婚約の話を出したのか」


「……はい。結婚を考えている相手に会いに行きたいと言えば、兄上も駄目とは言えなかったようで。後ろのセルズチャンとクラリエも、俺が小さい時から付いてくれている2人です。2人も俺の将来の相手を見たいと言えば許可が出ました」


 そして、ミストガルト王子は立ったままエアリスの方を見て


「エアリス嬢。本当に申し訳ない! もしかしたら期待させてしまったかも知れない。エイリーン夫人もだ。エアリス嬢をこんな手に使ってしまってすまなかった! 俺にできる事は出来る限りの事をする。何とか結婚相手も探そう。俺の事を殴ってくれても良い!」


 そう言いながら頭を下げるミストガルト王子。本来なら王子が頭を下げてはいけないし、俺たちも止めるのだが、今回だけは無理だ。


 ミストガルト王子の事情もわかるし助けてあげたいと思う気持ちもある。だけどその事で、エアリスを少しでも利用した事に腹が立つし、それ以前に他国にその話をする前に、自国で解決しやがれって思う。


 エアリスとエイリーン先生は困惑とした表情を浮かべている。


「ええっと、頭を上げて下さい。ミストガルト王子の事情はわかりましたので」


 エアリスがそう言うとミストガルト王子は恐る恐る頭を上げる。


「私の方も言わないといけない事がありまして、本当は今回の婚約は断るつもりだったんです」


「えっ?」


「私には好きな人がいて……」


 そう言いエアリスは俺の方をチラチラと見る。すると、ミストガルト王子は何を思ったのか笑顔になり


「そうか! それは良かった! いやぁ〜、もし、本気で婚約を考えていたらどう断ろうかと考えていたんだ。いや、良かった良かった!」


 と、とんでも無い事を言い出す。それを聞いた俺はもう我慢の限界だった。こいつふざけた事抜かしやがって。


「ミスト様、幾ら何でもそれは……っ!」


 後ろに立っている侍女のクラリエさんがミストガルト王子を注意しようとした時に、俺は魔力を放出した。


「え?」


「てめぇ、ふざけんなよ。女の結婚を何だと思ったんだよ! なめてんじゃねぇぞ!」


 俺ももう我慢の限界だ。よくもまぁ、ヘラヘラと本人の目の前でそんな事が言えたもんだ。


「これはっ! 坊っちゃま! すぐに下がって……」


「レイッ! 落ち着いて!」


 横でアレクシアが俺の手を掴むが、今回ばかりは無理だ。そして、俺はアレクシアの掴んだ手を振り払って一歩出ようとした時


「レイ! やめなさい!」


 とエアリスの怒鳴る声が聞こえる。……そうだ。1番被害を受けた本人より怒ってどうするんだ。俺は魔力の放出を止め、深呼吸する。すーはー、すーはー。……よし。少し落ち着いた。


「済まないエアリス。1番怒りたいのはエアリスなのにな。アレクシアもごめん。止めてくれようとしてくれたのに、手を振り払って」


「私は良いのよ。レイの気持ちはわかるし」


「私もありがと。私のために怒ってくれて。嬉しかったわ」


 そう言い微笑んでくれるアレクシアとエアリス。俺はそのまま


「陛下。突然申し訳ありませんでした。申し訳ないのですが、このままここにいれば我慢出来そうに無いので先に失礼します」


「……ああ、わざわざすまなかったな」


 本来なら王様がいる中で、王様より先に退出するなんてあり得ないのだが、これ以上は俺自身が我慢出来そうにない。さっきはエアリスが止めてくれたが、次は多分止められない。王様もわかってくれたのだろう。許可をくれた。


 俺はそのまま扉へ向かう。後ろでシーリア側から視線を感じるが無視だ。顔を見るだけで腹が立つ。そのまま無視して部屋を出る。


 家に帰ったらフェリスをもふもふさせてもらおう。エクラもいっぱいうりうりしてあげよう。みんな抱き締めてあげよう。そうでもしないと爆発してしまう。……帰ろ。

評価等よろしくお願いいたします!


本日新しく「黒髪の王」というのを更新しました。良かったら見て下さい。

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