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134.学園の迷宮(6)

本日2話目になります。前話をまだお読みでない方はそちらを先にお読みください。

 迫り来るオーガの大群の中、俺たちはマリーナ会長とミルクルさんを囲む様に立つ。ミルクルさんはわからないが、戦闘に自信の無いマリーナ会長から離れるのは危険だ。


「来たぞ!」


 俺たちを囲う様に周りから集まるオーガたちを見てブルックル副会長が声を上げる。


 ブルックル副会長は殴りかかって来るオーガの攻撃を盾で逸らし、その腕を剣で切りつける。しかし、オーガの筋肉が厚いのか、剣は肉を切る事が出来ずに浅く皮膚を切りつけただけになる。


 ブルックル副会長はそれを見て苦々しい表情を浮かべるが、腕に攻撃するのを止めて、関節や首などの柔らかい部分を攻撃していく。だが、オーガもそこを攻撃されるのは嫌なのだろう。防いでる様で中々攻撃が通らない様だ。


 ベルグさんは斧でオーガを叩き割る。しかし、ただでさえ大振りになる斧をオーガの固い皮膚を切るために何時もより大振りになって隙が出来てしまう。今は殴られない様にミルクルさんたちが援護しているがいつまで耐えれるか。


 エアリスは安心して見ていられる。今までと違いカゲロウに火魔法の武器付与をし、オーガたちを焼き切っていく。その上切り口から発火する能力は健在だ。こんな時にあれだが肉の焼けるいい匂いがする。


「ガァァアッ!」


 おっと俺も倒して行かないと。目の前で殴りかかって来るオーガを避け、足にロウガを引っ掛け転がす。そして喉にロウガを刺す。


 俺に集中する様に暴れるか。


「カオスボルテックス身体付与、武器付与」


 俺は黒雷を身に纏い、オーガの中を突き進む。みんなから少し突出する形にはなるが俺に注目して貰うならこれぐらいの方が良いだろう。


 俺が1人孤立した事で、四方八方からオーガたちが押し寄せる。後ろでみんなが叫ぶ声が聞こえるが、それだけ余裕が出来たと事だろう。


 俺はチラッとだけ後ろを見て、それからはオーガに集中する。目の前にいるオーガの懐に入り、ロウガを振るう。脇腹へメキッと減り込み、オーガは横にいた別のオーガを巻き込みながら飛んでいく。


 俺はそのまま気配察知に反応がある背後から迫って来るオーガを石突きを腹に突き刺す。石突きにも多めに魔力を集めていた為、石突きがズボッと腹に刺さる。だけどこれだけでオーガは倒れないので、突き刺さったまま俺はロウガを振り回す。


 即席のハンマーみたいだな。100キロ近くはある巨体を振り回すのは普段なら辛いが、今は身体強化をしているので何とかなる。


「ふんっ!」


 振り回した即席ハンマーにオーガたちはぶつかり、グシャっとエグい音がする。よし、これで10体程は蹴散らした。


 だけど周りを見れば、減った様には見えない。みんなも頑張って少しずつ倒していくが、少しずつ傷付けられ弱っていく。そして


「ぐはっ!」


 2体のオーガを相手していたブルックル副会長が片方に集中している間に、もう片方に隙を突かれて殴られてしまった。


 ブルックル副会長は辛うじて盾で防ぐが、オーガの腕力を逃がしきれずに、盾は砕け腕は折れてしまった。そしてそのまま殴り飛ばされたブルックル副会長は微動だにしない。


 ここから消えないという事は死んではないのだろうが、気を失っているのか。


「くそっ! ブルックル! てめぇらどけぇ!」


 ベルグさんがブルックル副会長を助けに行こうとするが、他のオーガたちが邪魔をして助けに行けない。ブルックル副会長も今は、マリーナ会長の火魔法やミルクルさんの弓矢でオーガたちを牽制しているおかげで無事だが、それも時間の問題だ。


 エアリスは、反対側を突破されない様に1人で踏ん張っている。そして俺に群がっていたオーガたちも、俺を相手するより向こうを相手にした方が良いと思ったのか移動し始める。


 このままじゃあ不味いな。エアリスはまだ大丈夫だろうが、他のみんなが……。


 仕方ない。話に聞いた時はこの迷宮では使わなくて良いだろうと思っていたが、師匠のイレギュラーのせいで、俺の自己満のせいでみんなを危険に晒す訳にはいかない。


 いくら死なないと言っても、それを味わえばその恐怖は無くならないだろうしな。俺は味わう暇も無く死んだけど。


 そう思い魔法を発動させようとした瞬間


「させないわ! それに私たちの力で耐えてやるんだから! フレル、やるわよ!」


『おう! 行くぜ姉御!』


 エアリスが誰かの名前を叫んだ瞬間、かなりの魔力がエアリスから吹き荒れる。赤色の魔力がエアリスを包む様に吹いている。周りのオーガたちもそれを見て止まってしまった。あれは……。


『火の精霊がいますね』


 とライトが教えてくれる。多分ライトは知っていたんだろうけど。精霊は契約している人の事はもちろん、他の精霊の事も話せないらしいからな。


 それにして俺にフィーリア、エアリスと何故こんなにも精霊に好かれるのだろうか? ライトはこれにも答えてくれない様だ。そう考えている間に


「燃やし尽くせ! 蛇炎ノ大太刀(ジャエンノオオタチ)!」


 エアリスが叫ぶと、吹き出る赤い魔力がカゲロウへと集まる。そしてカゲロウが燃え上がり刀身を創ってゆく。


 そして現れたのが刀身だけでも2メートルはあり、刃から柄まで全てが赤く染まる大太刀だ。見た目かなり重そうなのに、そんな雰囲気を感じさせない程軽々しく持っている。


「行くわよっ!」


 そう言いエアリスはオーガたちへ向かう。よく見ればエアリスも体全体に赤い魔力を纏っている。オーガたちもかなりの魔力を放出するエアリスが危険だと思ったのか、全員がエアリスへと向かう。


 しかし、エアリスはそんな事を気にした様子もなく、大太刀を振るう。まるで重さがない様に軽々と。多分魔力で創った大太刀だから、実際の重さはカゲロウの時と変わらないのだろう。


 ただ、切られた筈のオーガたちは気にした様子もなく、切る時にそのまま後ろへ通り過ぎて行くエアリスを後ろから襲おうと振り返る。……あっ!


 ドチャッ!


 振り返ろうとしたオーガはそのまま上半身(・・・)だけ地面に落ちる。下半身は切られた時のまま立ったままになっている。……切れ味が鋭過ぎて切られた事にも気付かないのか。


 そしてエアリスは次々と切り刻んで行く。オーガたちは気付かないまま切られ死んで行く。中には走ろうとして途中で上半身は落ち、下半身だけ走っているオーガもいた。


 流石にこのままでは不味いと思ったのか黒オーガが叫ぶ。それを聞いていた他のオーガたちはエアリスから距離を取り出した。かなり警戒している様だ。俺はその内に会長たちの下へ戻るとするか。


 エアリスは大太刀を肩に担ぎながらオーガたちを見る。


「このままじゃ、キリがないわね。次で終わらせるわ」


 そう言い大太刀を横に構える。オーガたちはエアリスから100メートル近くは離れている。そこから攻撃しても届かないだろう。昨日のオークキングみたいに斬撃でも飛ばすのだろうか? そんな事を思っていると


「みんなしゃがんで!」


 とエアリスが叫び出した。その瞬間エアリスの殺気が極限まで膨れ上がる。これはヤバイ気がする! 俺は直様、会長たちの下へ走り、ぼーとエアリスを見ていた会長たちをしゃがます。そして


「はぁっ!」


 エアリスが大太刀を横薙ぎに振るう。その瞬間、刀身が幾つにも分裂し大太刀が鞭みたいに伸びたではないか! 


 エアリスはそのまま回転する様に大太刀を回す。ガガガガッ! と何かを削る音を鳴らしながらもエアリスは大太刀を振るう。あれは魔力で伸びているのか。そしてエアリスの体が一周する様に回り、伸びていた刀身がガチンガチンッ! と元の大太刀へと戻ると


 ボトボトボトッ!


 と落ちる音がする。顔を上げて見てみると、そこには下半身だけが立っていた。向こうの壁にも斬撃の跡がある。あそこまで伸びたのか。


「……凄いわね」


 その光景を見たマリーナ会長はそう呟く。俺もそう思う。1番離れていたところにいた黒オーガも切られていた。ただ身長が大きかったのが幸いしてか、足だけが切られていた。黒オーガは倒れ込んでもがく様に動いている。


「うっ!」


 しかし、その時にエアリスが倒れる様に座り込む。あれは魔力枯渇か。俺は直様エアリスの下へ走り抱きかかえる。


「大丈夫か、エアリス?」


「……ええ。少し魔力を使い過ぎたみたい。それより、どうだった?」


「ああ、凄かったよ。カッコ良かった」


 俺が微笑みながらそう言うと、エアリスもにっこりと笑って良かったと言う。そして気を失ってしまった。無理も無いな。あれだけの魔力を使えば。後は……。


「手柄を取るようでエアリスには申し訳ないけど、あの這い蹲っている黒オーガを倒すか」


 俺はエアリスを背に背負いながら黒オーガの下へ歩く。黒オーガは俺を見上げながら何か言っているが、言葉は当然ながらわからない。俺はそのままロウガで黒オーガの頭を刺したのだった。


 起きているのは俺とマリーナ会長にベルグさんとミルクルさんだ。この広場の魔物を全て倒したためか奥へ行く扉が開く。


 そこにいくと中央に宝玉の乗った台が置いてあり、その台を中心とした魔法陣が描かれていた。転移用の魔法陣なのだろう。


「ようやくクリアね。みんなありがとう。私の我儘に付き合ってくれて」


 そう言うみんなを見回すマリーナ会長。俺に背負われているエアリス、ベルグさんに背負われているブルックル副会長は気を失ったままだが。


 そして行きと同じ様にみんなで手を繋ぎ魔力を込める。……となりのミルクルさんの息が荒いのは無視しよう。


 魔法陣は少しずつ光り輝きそして、行きと同じ様に突然足場が無くなったような浮遊感に見舞われ気がつくと学園に帰ってきた。


 そこにはニヤニヤと笑っている師匠が立っていた。……色々と言いたい事はあるが、今は無事に迷宮をクリアした事を喜ぼう。


 こうしてマリーナ会長の護衛は終了したのだった。

これで迷宮の話は終わります。

年末の王子の関係などの話をいれたら、やっと戦争です。


評価等よろしくお願いします!

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