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132.学園の迷宮(4)

本日2話目です。

前話をまだの方はそちらを先にお読みください。

 俺はロウガを構えオークキング亜種と対峙する。能力的には古竜に近いものがあるだろう。それ程の威圧感を感じる。


 そういえば、Sランクの魔物と戦うのは初めてだな。前の古竜は殆ど教皇が相手をしていたし、師匠への依頼もAランクが最高だった。まあSランクなんていう災害級がポンポン出てこられても困るんだが。1体で国が最優先で対処する程だからな。


 それに魔将の方が強いだろう。


「ま、考えても仕方ないか。倒すだけだ」


 オークキングも俺が敵だと認識したのだろう。俺の方を見て曲刀を構えたまま動かない。辺りを静寂が包む。耳が痛くなる程の静けさ。永遠に続く様な数秒が刻々と経つ。


「ゴクッ」


 誰かが喉を鳴らす音すら響く程。その瞬間


「グブラァァア!」


 オークキングが飛び出して来る。オークキングは曲刀を右上へ振り上げ下ろして来る。しかし


「身体強化、ライトニングボルテックス身体付与、武器付与」


 俺も同時に動き出す。魔法付与をそれぞれして、振り下ろされる曲刀をロウガで迎え撃つ。曲刀とぶつかった瞬間、ガキィィン! と辺りに鳴り響く金属音。それと同時に衝撃が洞窟の壁に傷を付ける。


「ブモォォ!?」


 オークキングは弾かれるとは思っていなかったのだろう。驚きの声を上げる。しかしそれも一瞬だ。直様弾かれた曲刀を手元に戻し、再び振り下ろして来る。俺はそれをロウガで弾く。


 何度も何度も打ち合う。ロウガで曲刀を弾き、懐に入ろうとするが、オークキングは直ぐに曲刀を戻し入られない様に振ってくる。それを何度も繰り返す。なかなか早いな。しかしこのままだと……。


 オークキングも痺れを切らしたのか、一旦距離を取る様に後ろに下がる。そして曲刀を肩に担ぐように構えを取る。何だ? 始めは疑問に思ったが、直ぐに理解した。何故なら曲刀に魔力が集まっていくのがわかったからだ。


「ブラァァアア!」


 曲刀を片手持ちから両手で持って、肩から斜めに思いっきり振り払う。その瞬間曲刀から魔力の斬撃が放たれる。地面を抉りながら突き進む斬撃は、俺目掛けて飛んでくる。


 避けるのは可能だが、後ろにはみんながいる。みんなが動けるようなら避けても良かったが


「仕方ない」


 俺はロウガにもう1つ武器付与をする。そして迫り来る斬撃目掛けて青白く輝くロウガを振る。


雷撃の滅槍(タケミカヅチ)


 オークキングの斬撃とロウガがぶつかった瞬間、雷鳴が轟き、雷の光が青白く光輝く。そのぶつかった勢いで、地面が抉れ、雷が地面にぶつかり煙が立つ。しかし、俺は煙が晴れるのを待たない。


「ブモモォ!?」


 俺は煙の中を突っ込んで、オークキングまで駆ける。オークキングもまさか煙の中を来るとは思わなかったのだろう。驚きの声を上げる。そしてそのまま俺は懐へ入り


「せいっ!」


 ロウガを横に薙ぎ払う。そのままオークキングの横腹へと減り込むように入りオークキングの体が浮く。


「グッ、ガァッ!」


 しかし、オークキングもそのままやられるばかりではない。俺は吹き飛ばそうとロウガをそのまま振ろうとしたが、オークキングは曲刀を俺目掛けて振り下ろしてきたのだ。そのため、振ろうとする動きを中断し避ける羽目となった。


 オークキングは、俺の放った攻撃の勢いを利用して宙を、くるん、と一回転して着地する。地味に器用だなこいつ。ただ、俺の事を憎しみのこもった目で見てくるが。オークキングの着ている鎧も少しへっこんだだけのようだ。


「ブルァアア!」


「なっ!」


 そして次に仕掛けて来た攻撃が、その場で洞窟の壁に跳躍して、次に壁を蹴り俺の方へ跳んできたのだ。さっきの一回転といい、意外と身軽だなこいつ。


「ちっ!」


 壁から跳んできたオークキングは曲刀で斬りかかって来る。俺はロウガで防御をするが、オークキングは地面に足をつけた瞬間、反対側の壁へと跳ぶ。それを何度も繰り返してくる。まるでスーパーボールみたいだな。


 俺は何度も受ける内に少しずつ切り傷が増えていく。オークキングの動きがもう少し速かったら斬られていたかもしれない。


「レイ!」


「くそっ! 動きが早すぎて狙えない!」


 後ろでエアリスとミルクルさんの声が聞こえる。チラッと見ると、マリーナ会長も魔法を撃とうと構えているが、やはりオークキングが跳び回るため、狙いがつけられないようだ。


 ブルックル副会長とベルグさんは、前衛なのでもう入れないと思っているのか悔しそうにしている。


 ……これ以上エアリスを心配させるわけにはいかないな。


「ゲイルストーム身体付与二重」


 俺は体に風魔法を付与し速度を上げる。ライトニングボルテックスとゲイルストームの二重付与でかなりの速度になるだろう。そしてオークキングが次に攻撃してきた時に


 ガキィィン!


 何度目かになるかわからないがオークキングの曲刀をロウガで防ぐ。オークキングは先程までと同じ様に地面に足をつけた瞬間次の壁へと跳ぶ。ここだっ!


 俺は壁に向かって跳んでいるため背を向けるオークキングを追う様に跳ぶ。


「ブゥ、ブッ!?」


 壁に足をつけ俺に跳ぼうとこっちを見たオークキングが驚きの声を上げる。何故ならオークキングの目の前に俺がいたからだ。


「おらぁっ!」


 俺はロウガを振り、オークキングの顔面を殴る。普通の槍ならこれで折れているが、魔力を吸収して硬くなる能力のあるロウガにはその兆しは全くない。


「ブラァッ」


 しなるように振られたロウガに、顔面を殴られ吹き飛ぶオークキング。今度は俺の番だ。先程のオークキングの動きを真似して壁を蹴る。オークキング目掛けて跳んだのだ。しかし速度は俺の方が断然速い。


 そして


「ブゥモァァアア!」


 オークキングの左手を穿ち抉り飛ばす。オークキングは痛みに泣き叫びながらも曲刀を回転しながら振るが、既にそこには俺はいない。オークキングと同じ様に別の壁へと跳んだからだ。


 次に穿つは曲刀を振り回す右手。次に左脇腹、右肩、右膝、そして最後は


「ブ、ブラァ……」


 もう立つ力もないオークキングの喉元へロウガを突き刺す。その勢いで首は胴から離れて飛んでいく。閉じ込める様に周りを跳び、槍で穿つから牢獄の槍で獄槍なんてね。


 洞窟の中で壁があるから出来たが、これが外で出来るようになったら少しは有利になるかな。……そうなると空中で跳び回る方法を考えないとな。


 しかし、跳び回るなんて慣れない事をしたせいか疲れた。取り敢えずみんなの元へ戻るか。


「レイ! 大丈夫なの!?」


 と思い振り返った瞬間、エアリスが俺の両腕を握ってくる。外傷は衝撃がとかによる切り傷しか無いのだが、両腕が痺れて感覚があまり無いのだ。


 まあ、あの巨体のオークキングの攻撃を真正面から何度も受けたのだ。しかも普通の攻撃ならいざ知らず、跳び回って体重がかなり乗っている攻撃を。今密かにヒールを使って治しているが、このまま黙っておこう。


「ああ、切り傷は幾つかあるけど特に大きい怪我はないかな。みんなは大丈夫か?」


「ええ、レイが1人で戦ってくれたおかげでね。次からは私も手伝うから1人で行かないでね」


 そう懇願するように上目遣いをするエアリス。それは承諾しかねるな。言ったら怒るから言わないけど。


 エアリスと一緒にみんなの元へ戻ると……何処か雰囲気がおかしい。なんだ? そんな事を思っていると


「すげぇじゃねえかレイ! あんな化け物相手に1人で倒しちまうなんてよ! 噂は嘘じゃねえって事か!」


 そう言い俺の背をバンバンと叩くベルグさん。ちょっ、痛いですって!


「……ありがとうレイ。あなたを連れてきて本当に良かったわ。あなたがいなければここで私たちは死んでいたわ」


 とお礼を言ってくるマリーナ会長。その事については少し考えた事があるが、話すべきか。


「レイ!」


 やっぱり話してみるかと決意して口を開こうとした瞬間、横からミルクルさんが俺の腕を取る。なんだ?


「レイ! 今すぐ私を抱いてくれ! あんな姿を見たら体が火照って仕方ない! もうビショビショなんだ! 直ぐにでも出来る!!!!」


 そう言い制服を脱ごうとするミルクルさん。ちょっ! 何言っているですかあなたは!? 俺は余りにも突然の事に驚いて目を見開いていると、側にいたエアリスがミルクルさんに怒る。しかしミルクルさんは知らんぷりだ。


 その間に俺はミルクルさんから離れる。このままだと食われる。性的な意味で。


「……今日はここで休みましょ」


 この光景を見てマリーナ会長はそう言う。声色に少し呆れ声が混じっているのは仕方ないだろう。


 マリーナ会長が呆れて、ベルグさんが大笑いして、ミルクルさんとエアリスが取っ組み合いの喧嘩をしてと、騒がしい中、1人だけ黙っていたのだった。

明日2話投稿してこの話は終わります!

フラグはもちろん立ちません!(笑)


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[良い点] ミルクルってキャラ年取ってる割に人を見る目がないのと キャラとして必要だったのか疑問です! 強いのが好きとかいいながら雰囲気とかで察せられないのはただのヤリマン枠過ぎる
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