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129.学園の迷宮(1)

「……俺に護衛のお願いですか?」


「ええ。シーリアの王子が来るまでまだ日があるでしょう? それまでで良いのよ。私もそれまでには戻るつもりだし」


 太陽が沈むのが早くなり、夜の時間が長くなった11月中旬。後2週間程で冬休みに入る学園も、穏やかな雰囲気が漂っている。


 以前屋敷に行った時から1週間が経とうとしている。マルコも既に王都を発った。俺たちも出発前に会いに行って見送った。


 アラベラ義姉さんは王都に残るみたいだった。というよりかはマルコが残らせたに近いな。アラベラ義姉さんは悲しそうにマルコが乗る馬車を見ていた。


 あの人も戦場には連れて行きたく無かったのだろう。その気持ちはわかるから何も言えなかった。


 少しモヤモヤとした日々を過ごし今日、授業が終わり、さあ帰ろうかとしているところに、教室にエアリスがやって来て呼び出されたのだ。生徒会室に。


 そしてさっきの会話に戻る。


「でも何で俺なんです? 護衛でした王宮の近衛兵や他にもいるはずですが?」


「国の兵士を私的に使う訳には行かないでしょ? それに今回は完璧なプライベートだしね」


「それなら生徒会の方達で冬休みに行かれては?」


「この学園であなた以上の実力者がいないでしょ? まあ他のみんなは中々認めてないようだけど」


 そう言いチラッと右側を見る。そこには眼鏡をかけた男、ブルックル・ケルミリーが立っていた。この学園の生徒会は生徒会長をトップとして、副会長2名、会計、書記、庶務が複数人ずついる。全員で20人ほどの会となっている。


 生徒会に入れるのは原則として2年生からとなっており、ここにいるのは俺以外全て上級生。その上、エアリスとマリーナ会長と数人以外は、俺に殺意に近い視線を送って来る。……何かしたかな?


「会長! やはりこんな男に頼らずとも我々だけで行いましょう! 英雄とチヤホヤされても邪魔なだけです!」


「ブルックル! レイを侮辱するなら私が許さないわよ。レイの実力も知らないで!」


 そのブルックル副会長が、俺の事を批判すると反対側にいたエアリスがキレる。そして2人は睨み合う。そんなに仲悪いのかよ。


「ブルックル。これは決定事項です。彼にはついて来てもらいます。メンバーは私、ブルックル、エアリス、ミルクルにベルグ。それにレイ、あなたを入れて6人で行くわ。

 学園長もこの時期は殆ど生徒会の仕事も無いだろうから構わないと許可を貰ったわ。残りのメンバーには残ってもらう事になるけど他の業務よろしくね」


「「「はい!」」」


 なんか気が付けば決まっているんだが……。


「そう言えば、何をするのでしょうか?」


 俺は目的を知らなかったので尋ねると


「それはね……」


 ◇◇◇


「生徒会だけが挑めるダンジョンね〜」


 翌日、以前対抗戦で使用した特別迷宮の前へとやって来た。この学園の創始者の1人が作った迷宮だが、遊び心で生徒会だけが挑めるダンジョンというのを作ったらしい。年に一度、この年末の時期に挑めるらしい。


 年に一度の理由は魔力の関係らしい。まあ、迷宮作り出して、中に魔物を出現させる魔力、万が一の時に俺たちを転移させる魔力とかなりの量が必要になるらしく、魔力が溜まるのが年末との事。魔物も様々らしいし。


「でもどうやって魔物を出現させているのだろう?」


「それは魔力で形を作ってるのさ」


「師匠」


 俺が1人でつぶやいていると、後ろから師匠がやって来た。


「あの変人はなんだかんだ言っても子供のことは考えていたからね。万が一の事があれば魔力の供給を止めれば良いと考えて、それなら魔力で全て作れば良いと考えたのさ。それがこの迷宮。まあ、その分一回入るのにかなりの魔力が必要になるけどね」


 まああまり詳しい事はわからないけど、と師匠は笑う。というかさっきの口ぶりだと師匠とその創始者が知り合いって事か。


 そんな風に師匠と話していたら


「早かったのねレイ」


 生徒会のメンバーがやって来た。後ろにはエアリス、ブルックル、ミルクルという弓を担いだ緑髪のエルフの女子とベルグという男子がついて来る。ブルックル副会長は俺を睨んでいるが。


「来たねマリーナ。覚悟はいいかい?」


「もちろんです。私たちの代はクリアしてみせます」


 毎年行われるこの特別迷宮だが、ここ数年はクリアしていないらしい。最後にクリアしたのは3年前のアレクシアの代との事。流石だな。


「アレクシアの時のボスはたしかエレメントゴーレムだったかね? 属性は炎で」


 それはまた厄介なモンスターだな。たしかAランクのモンスターで3メートル近くのある巨体に頑丈な体。それに様々な属性が付いているんだっけ。属性によって対処がそれぞれ違うため面倒な魔物だ。まあ、アレクシアなら切ってしまうか。


「それでは準備はいいかい? まあ、死んでも戻って来られるから気軽にやって来るといい。それじゃあ手を繋いで」


 それはそうだけど、あまり言わないでほしい。勿論死ぬ気は無いが。俺たちは対抗戦の時と同じようにバラバラにならないように手を繋ごうとした。ただ


「……マリーナ会長?」


 右手はエアリスが握っている。これは良いのだが、左手をマリーナ会長が握っているのだ。そして


「か、会長! 何故その男と握っているのですか! せめてエアリスとミルクルと握って下さい!」


 とブルックル副会長が怒るのだ。まあ、今回ばかりブルックル副会長に同意だが。


「別に誰と握ろうが良いじゃ無いの。さあ行くわよ」


 だけどマリーナ会長は特段気にした様子もなく、そのまま俺たちは迷宮へと入って行ったのだ。先行きが不安だ。

これはマリーナとのフラグではありません。

フラグではありません。

重要な事なので2度言いました。(笑)


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