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120.帰って来た後

「……なんだこれ」


 授業の合間の昼休み。久しぶりの授業も終え、何とか昼休みになり、みんなで食堂に来たのだが。


「ほら、ダグリスあ〜ん!」


「あ〜ん」


「もう、ダグリスが動くからほっぺにソースがついちゃったじゃない」


「ならレーネが取ってくれよ。ほら」


「もう、仕方ないわね。……ペロ」


 来たのだが、ダグリスとレーネがラブラブ過ぎてうざい。いや、ギスギスしているよりかは良いんだ。


 ボロボロになって帰って来たダグリスを見たときは焦ったけど、仲直りはできたみたいだし。上手くいったんだと思ったけど……上手くいき過ぎじゃないか? 頰についたソースを拭って舐めるなんて今までしなかっただろ……。


 俺の横では未だに顔を真っ赤にしているケイトがいて前の席にはエマが座っている。俺の前には我関せずとエレアがむしゃむしゃ昼食を食べてるし。ケイトの俺とは逆の方にはバードンが、向かい側にはシズクが座っているが、2人ともどこか気まずそうだ。


「ほら、今度はレーネがあ〜ん」


「あ、あ〜ん。ふふ、恥ずかしいわねこれ」


「もう、可愛いなぁ〜、レーネは!」


 う、うぜぇ〜。食堂にいる周りの生徒たちもこっちを見てコソコソと話しているし。物凄く注目されているんだけど。そんなとき


 チョンチョン


 ん? 誰かが俺をつついた? 誰かに背中をつつかれたと思い、振り返ってみるとそこには


「なんでハクがここにいるんだ?」


 本来なら学園長室にいる筈のハクが、そこに立っていたのだ。眠そうな瞳にメイド服。手には何故かくまさんのぬいぐるみを持っている。副学長があげたのか?


「部屋、いない。お腹すいた。気配、見つけた」


 ……うぅん? 部屋には誰もいなくて、お腹が空いたので学園長室を出て来たのか。それで俺の気配を見つけたから来たと。


「師匠や副学長はどっか行ったのか?」


 俺が2人のことを尋ねても、ハクは首をふるふると振るだけ。知らないのか。しかし、あの2人が無断でどこかに行くとは思えないし。何かあったのだろうか。


 そんな風に考え事をしていると再び服を引っ張られる。


「お腹すいた」


「ああ、悪かったよ。何か取りに行こうか」


 そう言い俺が立ち上がろうとすると


「誰っスかその子?」


 とケイトが尋ねてくる。エマやシズクたちもこちらを見て、自分たちの世界に入っていたダグリスやレーネまでもこちらを見てくる。エレアだけ黙々と食べているが。


「ん? ちょっと師匠から預かるように言われているんだよ。お腹空いてるみたいだから何か取ってくるよ」


 そして席から立った俺はハクに左手を差し出す。ハクは意味がわからずに首を傾げているが。


「ほら、人が多いから逸れないように手を繋いで行こう」


 食堂の中には全校生の3分の2ほどがいる。この中で逸れるとなかなか見つけられないだろう。ハクは年齢はわからないけど、見た目は8歳ほどの少女だ。身長も130程しかない。


「……ん」


 ハクも意味がわかったのかおずおずと右手を差し出す。よし、今度はナイフを持っていないな。そんなハクの手を握り俺たちは売店まで行ったのだった。周りのヒソヒソとした声は無視だ。……幼女趣味って言った奴だけ殴ってやる。


 ◇◇◇


「結局師匠たち帰って来なかったな」


「ん」


 今は放課後になり、門の前に立っている。ダグリスとレーネはアルマと話し合う為家に帰ったし、他のみんなもそれぞれに用があるらしく解散となった。


 そのため、特段やる事のない俺とハクは再び学園長室に向かったのだが、やっぱり誰もいなかったのだ。そして今に至る。


「仕方ない。師匠には明日会うとして、今日は帰ろうか」


「ん」


 ハクを家に連れて行ってプリシアたちを紹介しないといけないし、ハクの寝床の準備もある。そういえば生活必需品も買わないとな。しかし、女の子が必要なものはわからないし。どうしようか。そんな事を考えていると


「あら、レイじゃない。もう帰り?」


 校内からアレクシアとキャロが歩いて来た。アレクシアはわかるが、なぜキャロがいるんだ? そしてハクは知らない2人が来たので俺の後ろに隠れてしまった。


「ああ、ちょっと買い物してから帰ろうと思っていたところだ。2人はどうして?」


「キャロラインが学園を見て見たいて言うから案内してたのよ。教皇国とはまた違うから」


「そうなのか。ところでアレクシアさんや。俺に何か言う事は無いのかな?」


 俺は笑顔のままアレクシアへ近づく。だけど隣にいるキャロが俺を見て少し怯えているので、多分目は笑ってないのだろう。


「な、なんのことかしら?」


「劇」


 ビクッ!


「俺の情報」


 ビクビクッ!


「さあ、何か言う事は無いかな?」


「あ〜、私ちょっと用事を思い出したから、また後でね!!!!」


「あっ! 逃げるなアレクシア! 晩飯はどうするんだ!」


「食べる〜!」


 全く。せめて俺に一言断りを入れてくれたらよかったのに。


「ふふ、アレクシア姉さんも嬉しかったのよ。愛しの人の劇ができるって聞いて。みんな喜んだもの」


「それでも、一言あれば俺だって渋るかもしれないけど許可ぐらい……って、なんでキャロがそんなに詳しく知っているんだ? もしかして」


 俺はジトっとキャロを見る。キャロは俺に見られてそわそわとしていたが、観念したのか


「……テヘ」


 ぺろっと舌を出して誤魔化そうとした。可愛いんだけど! 可愛いんだけども! はぁ、もういいや。これ以上言っても仕方ない。多分なんだかんだ言っても劇は出来ただろうし。


「……次からは一言相談してくれよな」


「うんっ!」


 ……甘いなぁ俺は。女性陣の輝く笑顔には勝てないや。


「それで、その子は誰なの?」


 劇の話が終わったとわかったキャロは、俺の後ろに隠れるハクの事を聞いてくる。心なし目が細まった気がするが……気のせいか?


「ああ、この子のは師匠から預けられたんだ。ちょっと訳ありの子で詳しくは家で話すが、みんなに女の子としての生き方を教えて欲しいんだ」


「訳ありの子ね。わかったわ。私の名前はキャロラインよ。よろしくね」


 キャロは一瞬訝しげな視線で俺を見るが、納得したのかハクの目線までしゃがみ微笑みながら挨拶をする。ハクは俺の後ろから出ようとしない。人見知りなのだろうか。それとも挨拶の仕方がわからないのだろうか。


「ハク。この人はこれから一緒に住むお姉ちゃんだ。挨拶しようか」


 俺はハクの頭を撫でながらそう言う。ハクは、おずおずと俺の背から出て来て


「私、ハク」


 そう言って頭を下げて再び俺の背に戻った。いきなりナイフを突きつけられた俺の時に比べて、格段に良くなっているぞ。


「そうハクちゃんね。よろしくね」


 キャロはそんなハクの頭を撫でようとするけど、さすがにそこまでは許してくれないらしい。キャロの手を避けるように俺の背に隠れてしまった。キャロは行き場の失った手を空中に漂わせながら、悲しそうな目で俺を見てくる。……どんまい。


「ぐすっ、それでこれからどうするの。もう帰る?」


「いや、これからハクに必要な物を買いに行こうかと思っていたんだけど、女の子の必要な物がわからなくて困っていたんだ」


「なら、私が選んであげる! ハクちゃん、可愛いお洋服買おうね!」


 そう言い頭を撫でようとするキャロ。しかし、シュッ! と俺の後ろに隠れるハク。もう少し仲良くなってからだな。俺は頭をかきながら


「キャロは用事は無いのか?」


 と尋ねる。すると


「あるわよ。大事な用事が」


 と言い俺の腕を抱き締めるキャロ。……当たるお胸様がないのは言わないでおこう。


「なに?」


「……いや、なんでもありません」


 なんでわかったんだ? こういうのはヘレンも何故か直ぐに気がつくし。


「まあ良いわ。今からハクちゃんのお買い物とレイとのデートっていう大事な用事に行きましょ!」


 そして俺の腕を引っ張るキャロ。確かに大事だな。


「ハクも行こうか」


「ん」


 こうして俺たちは店が立ち並ぶ商店街へと向かった。


明日の投稿には最恐の化け物が登場します!(笑)

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