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113.帰還

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「我々を匿っていただき有難うございます、グルタス陛下」


「なぁ〜に。同じ国の貴族ではないか。そう畏まることもない。レリガス、この者たちに部屋を用意してやれ」


「畏まりました、グルタス様」


 グルタスの側近であるレリガスに連れて行かれるマングス男爵。いや、もう男爵ではなかったか。


「グルタス様。なぜ今王国から追われているマングス男爵を匿うのですか?」


 俺は不思議に思ったため尋ねると、グルタスは俺の方を見て鼻で笑う。


「奴は滅多にいない闇魔法の使い手だからな。何か利用価値があると思い匿うだけだ。いざとなれば切り捨ててレイモンドに差し渡しても良いだろう。それで学園内はどうなっている?」


「……はい。私の指示に従う者が仲間を集めております」


「そうか。ならお前はそのまま続けろ。くっくっく、帝国側も出兵の準備が整ったとの情報が入った。奴らがランウォーカー領へ攻め込むとすれば年明けになるだろう。それに合わせて我らも動き出す。それまでに準備しておけ。成功すればお前の母親も助けてやろう」


「……わかりました」


 ……俺は表情を変えないまま部屋を出る。そのままとある部屋へと向かう。入り口には2人の兵士が立っており厳重に監視されているが、俺が近づくと、兵士たちは、チラッと見ただけで特に気にした様子はない。


 そして部屋に入ると中にはベッドに眠る女性と、その女性の身の回りの世話をする侍女がいる。この侍女は前からベッドに眠る母上の侍女で、一緒に連れてこられた。


「あっ、ティグリス様、お疲れ様です」


「ああ、お疲れ様、マーサ。母上の容態は?」


「……今日も熱が収まらず寝たきりの状態です」


 そう言い顔を俯かせるマーサ。母上はある日突然病に罹り倒れた。父上が何人もの医者を呼び診察させたが、どの医者もわからないと匙を投げた。


 その原因不明の病に侵され、母上の容態は日に日に悪くなる一方だった。そんな中、途方に暮れていた俺たちの元に、グルタスがやって来たのだ。


 グルタスは父上の従兄弟になる。現王のレイモンド陛下とグルタスの父上である前王と、俺の祖父が兄弟だからだ。しかしここの所は全くと言っていいほど接点はなかった。


 そんなグルタスがこの時に限ってやって来たのかと言うと、母上の治療をするためだと言う。この時に気がつくべきだったのだが、既にこの時から俺たちは嵌められていたのだろう。


 グルタスが連れて来た魔法師、エインズと言う男の治療により、母上の容態は以前に比べて良くはなったたが、今治療できるものがこの男しかいなかった。


 そのため父上はグルタスに従っている。エインズの治療を受けさせる条件が、グルタスの指示を聞く事だったからだ。


 本来ならこの事はすぐにでもレイモンド陛下にお話ししなければならない。この男が出す指示は、この国を揺るがす事件に発展するから。……だけど、俺も父上も母上を見殺しにする事は出来なかった。貴族としては失格なんだろうがな。


「……ティグリス様、大丈夫ですか?」


 俺が顔を俯かせていると、マーサが心配そうに顔を覗いてくる。彼女は何も知らない。母上のためにここまで来てくれた彼女を巻き込むわけにはいかない。


「ちょっと疲れただけだよ。それじゃあ母上の事を頼むよ」


「はい、お任せ下さい」


 そのまま俺は部屋を出る。……母上を治療する手段さえ見つかれば、あんな男の指示を聞く必要はないのに。最悪の場合になれば、俺の命に代えてもあの男を殺す。それがこの事態を招いた俺の責任だ。俺はそんな事を思いながら部屋へと戻った。


 ◇◇◇


「キュルル!」


 馬車の窓から見える景色にはしゃぐエクラ。普段とは違う景色が嬉しいのかな?


「わわっ! 暴れちゃダメだよエクラちゃん!」


 それを抱えるメイちゃんも大変そうだ。窓から見える王都の風景も珍しいのだろう。今は楽しませておこう。


 俺たちがマングス男爵領を出て2週間が経とうとしていた。アレクシアが帰って来てから、予定通りに代官がやって来たので、家令のベントンさんが引き継ぐのを見届けてから出発したのだ。


 その時について来たのは、王都に呼ばれているケンヌス子爵と、ダグリスに恋をしているアルマと、男爵領を追放された男爵夫人たち親子だ。


 盗賊から助け出した女性たちは、男爵領に残って新しい生活をするか、子爵領で働きを探すために残った。何人かの女性は、兵士たちと良い関係になったりとしていたので良かったと思う。


 男爵夫人たちは、王様が密かに生活出来るように手配してくれているらしい。これは、後からやって来た代官に聞いた話だが。


 まあ、今回は男爵が全て悪いからな。夫人は病気で寝込んでいて関わってなかった訳だし。表向きは裁かなければいけなかったし、あのまま領地に残っても、良いことは無かっただろうとの王様の配慮もある。


 ベントンさんも代官への引き継ぎが終わったら夫人の後を追いかけるらしい。夫人も嬉しそうだったのでこれで良かったのだろう。


 そんな事もありながら俺たちは男爵領を出た。この2週間はゴブリンに襲われる事もなく順調に進み、先程から王都が見える距離までやって来た。……当分ゴブリンは見たくないからな。


 馬車はケンヌス子爵が8人乗りと少し大きめの馬車を用意してくれて、馬車の中は俺とメイちゃんに、メイちゃんに抱えられるエクラ、アレクシアにヘレンにエアリス、フェリスにプリシアとロイが座っている。


 馬車に乗る時に、誰が俺の隣に座るかで一悶着あったが、俺の指示でロイとメイちゃんを座らせた。みんなはブーブーと怒っていたが、馬車に乗る度に喧嘩するくらいならこっちの方が良いだろう。結局は狭い馬車の中で一緒になるのだから。それを女性陣に言ったら、女心がわかっていないと怒られたが。


 初めて王都に来たプリシアとメイちゃんにロイとエクラはかなりはしゃいでいる。……そんなにはしゃいだら窓から落ちるぞエクラ。


 窓から落ちそうになったエクラをメイちゃんが掴み、メイちゃんまで落ちそうになるという事故はあったが、無事に王宮へ辿り着いた。


 アレクシアの話では、帰って来たらそのまま王宮へ来て欲しいと言われていたらしい。兵士たちも話に聞いていたのか、御者と一言二言かわしたらすんなりと通してくれた。まあ、通行証みたいなものを見せていたが。


「……なんか周りの様子、おかしくないか?」


 王宮の中に入ると、なぜか兵士たちに馬車の窓を閉めるように言われ、そのまま揺られる俺たち。今まで馬車で来たことはあるが、そんな事一度も言われたことは無かったので疑問に思ってしまう。


「あら、そう?」


 だけどアレクシアたちは特に気にした様子もなく普通にしている。いや、少し笑っているから事情を知っているのかな? 


 しかも、普段なら既に着いて停まっているはずなのに、まだ馬車は動いている。


「キュルゥ〜」


 エクラは窓から見える景色を隠されたので少し不機嫌だ。プリシアたちも不思議に思っているのか首を傾げている。


 その後も馬車に揺られる事数分。さすがにおかしいと思い始め、馬車から降りようかと思った時に、ようやく馬車が止まった。そして外から開けられ、兵士に降りるように促される。


「ほら降りるわよ」


 アレクシアが微笑みながら俺の手を握り一緒に降りるとそこには……。

今日か明日に登場人物を更新しようと思います。


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