107.頑張ってくれる者、そして1ヶ月☆
俺は最近見ていなかったステータスを確認する。
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レイヴェルト・ランウォーカー 12歳 男 レベルー
職業:カルディア学園生徒
体力:3560
魔力:5200
筋力:2760
敏捷:3240
物耐:2140
魔耐:1730
称号:女神アステルの代行者 限界なき者 困難に見舞われし者 結びし者たち 天才魔法師 守り手 大行進を乗り越えし者 ハーレム製造機(ほぼ確定) 雷精霊に愛されし者(家出中) 水精霊に愛されし者(家出中) 光精霊に愛されし者 雷帝 剣聖の弟子 竜と歩みし者
スキル:槍術レベル8 剣術レベル6 格闘術レベル5 雷魔法レベル9 風魔法レベル8 水魔法レベル7 火魔法レベル5 土魔法レベル4 光魔法レベル8 闇魔法レベル4 空間魔法レベル2 生活魔法レベル6 頑強レベル7 身体強化レベル7 気配察知レベル7 魔力探知レベル5 礼儀作法レベル5 言語(大陸語)レベルー
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何か色々と変わっているが、魔力がかなり上がっている。修行で魔法を使いまくっているからかな? 称号も女神の観察対象から代行者に変わっているし。確かにお願いしますとは言われたが……。
他に変わった……え? 何だこの家出中って? そういえば、最近ヒカリンとマリリンを見ていないような。
偶にふらっとどこかに行く事があったし、呼んだら来ていたからあまり気にしていなかったが、この文字を見たら心配になる。
「ライトいるか!?」
「はい、ここに」
俺がライトを呼ぶと、俺の目の前に光が輝いてライトが現れって、眩し! 膝の上に乗っていたエクラも、あまりの眩しさに両足で目を塞いで「キュ〜イ〜」と悶えている。
「…….もう少し光の強さを抑えてくれると有り難いんだけど」
俺が睨みながらライトにそう言い、エクラも怒ったようにペシペシと俺の膝を叩く。
「はは、これは失礼しました。次からは気をつけましょう」
こいつ、絶対直す気無いだろ。……まあいい。それよりもヒカリンたちの事だ。
「ライト、ヒカリンたちがどこへ行ったか知っているか?」
「もちろん知っていますよ」
「なら「しかし、場所は言えません」え?」
俺がライトにヒカリンたちの場所を尋ねようとしたら被せるように拒否された。しかし
「どこに行ったかは言えませんが、誰の元へ行ったかは伝える事ができます」
とライトは言う。誰かのところへ行っているのか?
「誰のところへ行っているんだ?」
「彼女たちは今、精霊王の元で修行をしています。理由は貴方様のために、精霊としての格を上げるためです。それほど私が現れたのが悔しかったのでしょう。離れる前に私の元へ現れて「絶対に負けないの!」と言われましたよ」
そう苦笑いで伝えてくるライト。そうか。俺のために。
「お2人から伝言を預かっていますよ。「強くなってくるから待っていて」だそうです」
……やばい。涙出そう。今思えば家族のエアリスを除いてここにいる人たちの中で、1番付き合いが長いのはヒカリンなんだよな。俺のために。
「……2人は無事なんだよな?」
「何とも言えませんね。格を上げるというのはそれほど簡単な物では無いですし。ただ失敗しても消えるという事はありませんので」
そうライトは言うが、それでも不安だ。しかし、俺のために頑張ってくれている2人を待つのも俺の役目だろう。何処にいるかは教えてくれなさそうだし我慢するしか無いか。
「わかった。2人が帰るのを待とう。それからこの『竜と歩みし者』って言うのはエクラの事か?」
「キュルン?」
俺が膝の上に乗っているエクラに聞いてみるが、エクラは「何?」って感じで俺を見上げてくる。本人は知らないとばかりに見てくるので、とりあえず称号を見てみるか。
竜と歩みし者:竜と生涯を共にすると誓った者に現れる称号。竜と側にいるだけでステータスが上昇。
……これってもしかして。俺はアイテムリングからトュルークリスタルを取り出す。かなりの大きさなので少し場所をとるが、床に置く分は大丈夫だ。そして箱を開けると
「やっぱり」
箱に入っていたトュルークリスタルは青く輝いていた。箱の上に飛び回るエクラもトュルークリスタルの綺麗さに「キュルル〜」と鳴いていた。前世の小説でも、竜は光り物が好きだって書いてたくらいだ。多分エクラも好きなんだろう。
「エクラには指輪は……無理っぽいから腕輪だな。この指輪みたいなのを作ってあげるからな」
俺がトュルークリスタルをアイテムリングに戻したため、俺の膝まで戻ってきたエクラに指輪を見せる。エクラは喜びを体で表すように、羽をバサバサとさせて俺の膝の上で回る。このこの〜!
「キュルン!? キュルルン!」
俺が突然うりうりしたので最初は驚きの声を上げるが、かまってもらえて嬉しいのだろう、楽しそうに擦り寄ってくる。気がついたらライトは部屋からいなくなっていた。気を利かせてくれたのかな? それから俺とエクラは眠くなるまで戯れていたのだ。
1ヶ月後
「カオスボルテックス身体付与、武器付与!」
「ギィィィガァ!」
俺は、ハルバートを振り回してくるゴブリンキングへと突っ込む。ゴブリンキングがハルバートを横薙ぎで放ってくるのを俺は飛んで避け、ハルバートの上を走る。……漫画で偶に見るこれをやってみたかったんだ。
それに驚いたゴブリンキングはハルバートを振り回して俺を振り落とそうとするが、既に俺はそこにはいない。俺はゴブリンキングの懐まで入り込みロウガを振り払う。
一筋の黒い閃光が、ゴブリンキングの体を斜めへと走り抜く。そして、雷が落ちたような轟音。それとともに吹き飛ぶゴブリンキング。
ゴブリンキングは起きようとするが、ロウガによる斬撃と、その後にやってくる雷魔法による麻痺によって、体が動かせない。切り口から雷が入り込み中の肉は焼け焦げているしな。
「これで終わりだ」
そして俺はゴブリンキングの元へと近寄り、喉をロウガで貫く。少しの間ビクビクと動いていたが、最後には力尽きて動かなくなった。
「すげぇな、あの少年。Bランクのゴブリンキングを瞬殺だぜ」
「そりゃあ、アレクシア殿下を倒すほどだからな。噂によれば4年前の王都の事件もあの少年が防いだって話だ」
俺の後ろで兵士たちがコソコソと何かを話している。周りを見れば、ゴブリンの死体があっちこっちに落ちている。この洞窟だけで300ぐらいだったか。それでもゴブリンキングがいたのは驚きだ。このまま放置していれば、もっと増えていただろう。
「それじゃあ、皆さん帰りましょうか」
俺が兵士たちの方を見て言うと、兵士たちは直立不動となり「はい!」と大きい声で返事をする。何故か兵士たちから怯えられているんだよなぁ。普通に接しているつもりなんだが。
俺たちがマングス男爵領にやって来て1ヶ月が経とうとしていた。あの後俺たちは、ケンヌス子爵が連れてきてくれた軍を100人の5つに分け、マングス男爵領を見回っていた。
ケンヌス子爵は領地は息子に任せているから大丈夫と言って、マングス男爵領に残ってくれたので、アレクシアはヘレンと護衛にエアリスを付けて、今王都に帰っている。そろそろ帰ってくると思うが。
その間俺たちは、男爵領に現れるゴブリンたちを狩っていた。やっぱりマングス男爵はゴブリンたちを放置していたみたいで、森や洞窟とゴブリンたちが好みそうな場所に行くと、大量に現れる。中には犠牲になった村もあるくらいだ。
見たこと無いマングス男爵に憤りを感じながらも、ゴブリンたちを倒していたら気がついたら一月が経っていた。
学校の方はいいのかと言うと、アレクシアが師匠宛に事情を書いた手紙を出してくれて、その返事には「収まるまでは残ってていい」との返事が返ってきたので、俺たちは残っている。
ケンヌス子爵領に残っていたダグリスたちと、連れてきた女性たちもマングス男爵領に呼んだ。ダグリスたちはゴブリン狩りの手伝いで、女性たちは兵士たちの食事などの手伝いをしてくれた。
まだ男に怖がる人もいたが、ケンヌス子爵が兵士たちの規律を正してくれたおかげで、女性に酷いことをする兵士もいなかった。兵士たちが、偶に俺の方を見て怯えていたが何故だろうか? それだけが疑問に残る。
そして、ダグリスたちを呼んだ時に面白いことがあったのだが、ダグリスの横にひっつくように寄り添う女性がいたのだ。
俺たちが誰なのかと聞くと、その女性は前の村で被害に遭っていた女性らしく、偶にダグリスと話したりしていたそうだ。その間に女性がダグリスに少しずつ惹かれていって告白したそうだ。
ダグリスは他にも好きな人がいるからと言ったらしいが、それでもいいので側において欲しいと女性が言うので、無下には出来ないらしい。それからは四六時中一緒にいるとの事。
ダグリスに寄り添う女性と、困った様な、でも女性に引っ付いてもらって嬉しいダグリスに、不機嫌な表情を隠さないレーネ。俺は人の事を言えないの黙って見ているだけで、ケイトが呪詛を吐いていたのはいつも通りだろう。
そんな事を考えていると、領地まで帰ってきた様だ。大分元どおりになってきた門をくぐって中へ入ると
「おに〜ちゃ〜ん!」
と叫びながら右手をブンブンと振る少女、メイちゃんが走ってくる。左手には左足に女神の腕輪を付けたエクラが抱えられており、エクラも左足で振ってくれる。エクラが気がついたから門の近くで待っていたのだろう。
「ただいまメイちゃん、エクラ」
俺がそう言うとメイちゃんは腰に抱きつき顔を擦り付けてくる。エクラもメイちゃんの腕から出てきて俺の頭の上でぐでぇ〜と和む。
ゴブリンを見かける数も少しずつ減って来て、そろそろ王都に帰れるかな。俺はメイちゃんの頭を撫でながらそんな事を考えていた。
「キュイキュイ!」
……そんなに頭をパシパシ叩かなくても撫でてあげるから少し待ってなさい。
評価等よろしくお願いします!