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閑話 とある異世界人2

 俺たちがこの世界には召喚されてから1年と少しが経った。2ヶ月前に皇帝から戦争の話を聞かされた俺たちは、3つの班に分かれて実戦訓練をする事になった。実戦訓練と言っても、いきなり人を殺すんじゃなくて魔物相手なんだけどな。


 場所は魔の大地というところだ。この魔の大地は、今度戦争する国ナノール王国とレガリア帝国にある特殊な土地で、魔物が大量に出るらしい。


 3分の2ほどがナノール王国側にあるため、大行進とやらはレガリア帝国側では起こらないが、それでも脅威だ。昔この大地を通り抜けようと考えたらしいけど、軍の大半が通り抜けることが出来ず戦死したらしい。


 今回はその魔の大地の入り口から中盤付近で分かれて訓練をする。


 分かれる班は3つで、1つ目の班は、勇者の伊集院、魔法師の遠藤さん、弓兵の清水に帝国兵が数人、2つ目が班目、佐藤、田中の不良グループに帝国兵が数人、そして3つ目が俺に、香奈ちゃん、二階堂さん、獅童にSランク冒険者のガルガンテ・ケルシオスって言う30手前の金髪の男だ。この班には女神の加護持ちが2人いるから死なれては困るからだとよ。


 正直に言うとこのSランク冒険者のガルガンテが気に食わない。噂では、女とヤッては捨てて、ヤッては捨ててを繰り返す最低野郎らしい。そしてこの最低野郎についている異名は『悪魔』らしい。自分に相対した相手を、笑顔で嬲り殺していくからついた名らしい。


 そして今狙っているのは、俺の想い人の香奈ちゃんだ。香奈ちゃんに色々と言い寄るが、今は相手にされていないため、問題は起きていないが、いつ起きるかわからない。


 今の俺の実力じゃあ、まったく太刀打ちが出来ないため、どうやって守るか考え中だが、くそっ、全く良い案が浮かんでこねえ。そんな風に考え込んでいたら


「どうしたの、海堂くん?」


 と香奈ちゃんが俺を覗き込むように見てくる。うおっ! 目の前に急に天使の顔が!


「い、いや、だ、大丈夫だよ!」


 うぅぅ〜、情けねえ。同じ班になったのだから話したいとは思うのだけれど、香奈ちゃんの顔を見ると緊張してうまく話せねえ。


「ふふふ、大丈夫なら良いんだよ」


 そう言いまた前を向く香奈ちゃん。ああ、天使だ。


「カナちゃん。そんな役立たずの側じゃなくて僕の側にいた方が良いよ。どんな魔物が来ても僕が守ってあげるから」


 俺と香奈ちゃんが楽しくお話ししているところに、水を差すようにガルガンテが割り込んでくる。役立たずとは言ってくれるじゃねえかよ。


 俺はガルガンテの睨むが、ガルガンテはそんな俺を見て鼻で笑いやがる! くそっ! あのムカつく顔をぶん殴りたい。


「……ガルガンテさん、そんな言い方は無いんじゃ無いんですか? 海堂くんは役立たずなんかじゃありません。私たちの中でも伊集院くんや獅童くんの次に強いんですから」


 と香奈ちゃんが俺を擁護してくれる。やっぱり天使だ。そう、俺はこの1年ほどでそこそこの強さになった。俺の称号『耐えし者』は思っていた以上にチートだった。


 この『耐えし者』の説明にある相手の攻撃を受けて生きていれば、スキルを得るか経験値が手に入るというのは、別にダメージを受けなくても良かったということが訓練でわかった。


 例えば剣の訓練で、剣同士で打ち合うだけでも、受けた事になるのだ。それに気が付いてからは、色々な武器を試した。


 しかも、相手のスキルレベルが高い程、経験値の量が多いみたいで、騎士団長などや伊集院に相手をして貰ったら剣術がかなり上がって、俺の中で最高のレベル7になった。ちなみに伊集院の剣術レベルは8だ。ここら辺から全くレベルが上がらなくなってきたのだ。


 魔法も多分同じように出来るのだろうけど、高レベルの魔法は受けきる自信がなくてやっていない。今は低レベルの魔法を二階堂さんに撃ってもらって受けるか、地道に訓練をしているだけだ。


「くく、そのコウキですら僕に勝てないんだよ? それよりも弱い奴の側にいても危険なだけだよ」


 しかし、ガルガンテは聞く耳を持たずに、更に言ってくる。この野郎。


「おい、ガルガンテ。黙って聞いていりゃあ、言いたいこと言いやがって」


 そこに、今まで黙っていた獅童が入ってくる。二階堂さんは香奈ちゃんの側に立っている。


「ん? なんだい、リュウガ。前みたいに半殺しにされたいのかい?」


 そう言った瞬間ガルガンテから殺気が溢れ出す。こいつは別に帝国の人間じゃない。金で雇われているだけの冒険者だ。別に俺たちのことなどどうでも良いのだろう。


 ガルガンテの言っていることは、前にガルガンテに絡まれている侍女を獅童が助けたときのことだ。その時にガルガンテの怒りを買って、半殺しにされたと聞いた。香奈ちゃんがいなかったらヤバかったらしい。まあ、その後はその侍女とラブラブしているからこの野郎! と思うときはあるが。


 ガルガンテが腰に下げた剣に手をかける。獅童も魔導具である籠手を付けた両手を挙げ構える。くそっ、やるしか無いのか? しかしそこに


「グリュアァアアア!」


 と魔物がやってくる。あれはオーガか。昔ならビビったが今なら


「……運が良かったねリュウガ。さあ、とっとと倒しな。早く帰って女で遊びたいんでね」


 そう言い少し離れたところの木にもたれるガルガンテ。くそ、腹が立つ。俺がガルガンテを見ていると


「今は魔物が先だよ、海堂くん」


 とおれの天使(香奈ちゃん)が微笑みかけてくれる。よしゃあ、やる気出たぜ!


 それからは一方的だった。まあ、オーガが5体しかいなかったしな。香奈ちゃんがウォール系の魔法でオーガたちを分断させて、獅童が殴る。それに怯んだところに俺が剣で首を切り落とす。二階堂さんは分断されたオーガたちが、回り込んだりしない様に魔法で牽制する。これが俺たちのいつものパターンだ。


 その後も、オークやゴブリンなど様々の魔物と戦った。そして、夕暮れ近くになったので帰る事にした。


 帰る方法は転移魔法だ。レガリア帝国には、他の国にはない技術で転移魔法陣というのがある。本来なら空間魔法が使える人間に運んでもらわないといけないのだが、この魔法陣によって魔力を込めるだけで誰でも使える様になっている。


 メリットは少ない魔力量で転移が出来ることで、デメリットは決まった場所しか行けないことと、人数が1度に5人しか行けないことだ。少ないと言っても、1人の魔力量で1回ぐらいが限界だが。


 今回は魔の大地からの魔物を防ぐためにある砦から帝都に魔法陣までの移動になる。魔法陣のある部屋へ戻るとそこには


「お疲れ様でした勇者様たち」


 と、転移魔法陣担当の男の魔法師が挨拶をしてくれる。軽く挨拶をして、帝都に帰るとそこには


「お疲れ様でした」


 と頭を下げる綺麗な女性がいる。同じお疲れ様でも気分が違うな。名前はルシアーナ・レガリア。この国の第2皇女だ。頭を上げると茶髪の長髪がサラサラと揺れる。ルシアーナは獅童から順に挨拶をしてそして俺の元へ


「お疲れ様です、タクミ」


 と微笑んでくれる。この女性は俺の婚約者になる。皇帝が、この前にナノール王国との戦争を話した後に、俺と伊集院を呼び出した。その時にナノール王国に勝てば、伊集院に第1皇女のカタリナを、そして俺にはルシアーナを婚約者にすると言い出したのだ。


 なぜ、獅童ではなく俺なのかというと、女神の加護があるからだそうだ。これはルシアーナから聞いたことだが。女神の加護は誰もが持って生まれるものではないため、貴重な存在らしい。その人物を縛るためにルシアーナを使ったと自分で話す。


 それからは、俺とルシアーナは毎日話す仲になった。あれこれはまだしていないが、向こうも俺の事を悪い様には思っていないはずだ。たぶん。


「ただいま、ルシアーナ」


 俺が笑顔で言うと、少し怒った表情をする。何でだ?


「もう、私の事はルシィーと呼んで下さいと言ったはずです」


 ああ、その事か。


「ははは、ルシアーナが慣れていて忘れていたよ。ごめんよルシィー」


 俺がそう言うと笑顔で微笑んでくれる。この荒んだ心にこの笑顔は癒される。そんな風に和んでいると


「やあルシィーちゃん。今夜俺の部屋にどう?」


 とまたしてもガルガンテが話に入ってきた。こいつ何だよ。


「……私はタクミと婚約しているのですよ。行くわけないじゃないですか」


「くくく、つれないねぇ。俺の方がそこの役立たずより気持ち良くさせられるよ」


「か、関係ありません!」


 こいつ本当にいい加減にしろよ。


「まあ、今は我慢するよ。くく」


 そう言い去っていくガルガンテ。最後の言葉はどういう事だ? 俺とルシィーは顔を見合わせるが、全く意味がわからなかった。

名前に付いて色々とありがとうございます。今は考え中なのでまた決めたいと思います!


評価等よろしくお願いします!

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