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91.断ち切る者

 俺は吹き飛んだ魔族と、ガリアンさんを何度も見比べてしまう。


「……本当にあれがガルレイクなのですか?」


「ああ、私も半信半疑だったのだが、確かめたので間違いない」


 ガリアンさんはそう悲しそうに話す。何でも、俺たちが帰った後に、ガリアンさんとメリエスさんが話していたら、ガルレイクの私室のある2階から轟音がしたらしい。


 2人は何事かと思い2階に上がると、ガルレイクの部屋の扉が開いており、中を見ると、壁には大きな穴が空いていたらしい。


 それだけならまだ違うとも言えるのだが、壁を壊して暴れている魔族の首元を見ると見覚えのあるペンダントがつけられていたらしい。


 なんでも、ガリアンさんの息子で、ガルレイクの父親の形見のペンダントらしく、それを見たガリアンさんはガルレイクが変異したと確信したと。


 そこからは、暴れるガルレイクを止めるための兵士と、巻き込まれないように住民を避難させる兵士にわけ、ガリアンさんも参加して戦っていたらしい。それがさっきまでの事だ。


 メリエスさんは侍女たちと一緒に避難しているらしい。ガルレイクの事は伝えていないとの事。確かにあの優しそうな人だと聞いた瞬間倒れそうだしな。


「はぁ、はぁ、しかし助かったぞレイ君。あのままでは我々は死んでいただろう」


「いえ、間に合って良かったです。それで彼はどうするのですか?」


 俺が聞くとガリアンさんは歯を食いしばりながら答える。


「……やつはガルレイクではない。ハウテンブルク領で暴れる魔族だ」


 手から血がにじむほど握られている。


「わかりました。私が相手をしましょう。ガリアンさんは休んでいてください」


「しかし」


 そこから先を聞く前に俺はボルトでガリアンさんを気絶させる。自分の孫が殺されるところなんて見たくないだろう。孫の死に立ち会えなかった悲しみはあるかもしれないが、自分が殺した1人と、自責の念にかられるよりかはマシだと思う。まあ、俺が勝手にそう思っているだけだが。


「ガリアンさんを頼みます」


 俺がガリアンさんを支える兵士たちに言うと、兵士たちは頷く。そしてガリアンさんを抱えて離れていく。それと同時に、瓦礫からガルレイクが飛び出してくる。


「うわ、もう傷が治ってやがる。なんて再生能力だ。しかし、あれがガルレイクか。確かに面影が残っているが」


 ガルレイクは誰かを探すようにキョロキョロとし、俺を見つけると、


「ミヅゲダゾォ! オマエヲコロス! コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!」


 叫び始める。なんだよ。見境なしかと思えば、目的は俺かよ。しかし、ガルレイクは何故魔族の力を手に入れたんだ? そこで俺は4年前の魔剣を思い出す。レガリア帝国で作られていると言う魔剣。あれも似たようなものだったような。


 そんな事を考えていたら


「コロス!!!!」


 ガルレイクが飛び出してくる。昼間の時とは比べ物にならないくらいの速度だ。


「ちっ!」


 俺は殴りかかってくるガルレイクの拳を避ける。ガルレイクの腕が地面にめり込むと、地面が弾け飛ぶ。ギルガスよりは弱いが、昼間の時と比べると段違いの力だ。だけど、


「食らうかよっ!」


 俺はガルレイクの懐に入り、ロウガで攻撃する。ガルレイクは懐に入った俺を振り払うように腕を振り回すが、当たらない。


 左手で殴ってくるのをロウガで回転しながら逸らし、その回転の勢いのまま、突きの連打を与える。だが、ガルレイクはあまり効いた様子もなく、再び殴りかかってくる。しかも、傷つけたそばから治っていくんだからたまらない。


 迫り来る拳を弾いて、石突きでガルレイクの膝を殴り体勢を崩してから、魔力を纏わせた拳で殴ったり、ロウガでガルレイクの顎を打ち上げ、ガラ空きの脇腹に薙ぎ払いをして、吹き飛ばすがすぐに回復する。


「グフッ! コ、ゴロズゥゥゥ!」


「くそ、どうすればガルレイクを倒せるんだ? もう、頭を吹き飛ばすしかないのか?」


 今までの攻撃は正直言うと、ガルレイクを助けられないか模索していた。何か方法はないかと、致命傷は与えずに攻撃していたが、これ以上領地をめちゃくちゃにする訳にはいかない。もう、頭をやるしかと考えていた時に


『なら僕の力を使うと良いよ』


 頭に声が響いた。頭の上にいるヒカリンとマリリンがムッとした表情をする。そして目の前が光り輝くとそこにはヒカリンやマリリンと似たような体型の男の子が浮いていた。


「君は精霊か?」


「そうだよ。僕は光を司る精霊。その中でも、女神アステル様に近い場所にいたから、そんじょそこらの精霊とは力が違うよ」


 そう言いドヤ顔をする光精霊。頭の上でヒカリンやマリリンがぐぬぬと呻いている。怒るのはわかるが髪の毛を引っ張るのは止めて欲しい。


「女神アステルの近くにいたとはどういう事だ?」


「女神アステル様のお世話は僕たち精霊がしているんだよ。僕たちもアステル様に作られた存在だからね。僕はその中の1人だったんだよ。そして、この光景を見ていたアステル様が、君を助けてあげてと、僕を使わせたのさ。僕も君に興味があったから了承したわけさ」


 そうか、アステルの計らいか。


「その上、アステル様は僕に女神の力のほんの一部だけどくれたんだよ。あまり君に持たせすぎると、君の魂が耐えきれなくて壊れるからね。僕を介してなら使えるようになった。これが、アステル様が前に君に与えた追加の加護の2つのうちの1つさ」


 俺の意識に入ってきた時に言っていたやつか。あの後ステータスを見ても無かったからどうなったんだと思ったが、まさか精霊に付けるとは。しかも2つのうちの1つって事はもう1つあるのか。


「もう1つはもう発動しているはずだとアステル様が言っていたよ。さあ、これ以上は時間がないよ。契約しよう」


「わかった」


 俺は魔力を光精霊に渡しながら名前を考える。彼の名前は


「君の名前はライトだ!」


 俺がそう言った瞬間、ライトは光り輝いたため目を瞑ってしまう。遠くからはガルレイクの呻き声が聞こえる。


「我が名はライト。契約者レイ様の命に従い、死す時まで支えましょう」


 そして目を開けると、身長180センチほどで燕尾服を着た金髪のイケメンが立っていた。……誰だよお前。頭の上では、ヒカリンとマリリンが名前が普通だと、嘆いているし。お前たちも普通だよ。


 そしてガルレイクには光の縄が体中を縛り動けなくしている。


「少しの間ですが、動きを止めさせていただきました。私の力はそこの2人と同じで光魔法の1つ上が使えるようになり、アステル様から預かった加護、『断ち切る者』が使える様になります」


「『断ち切る者』?」


「はい。あらゆる呪いや加護、契約の類を断ち切る事が出来ます。しかしこれには条件があり、その契約がどの様な契約なのかわかっていないといけません。今回は私が見ていたのでわかりますが、彼は魔丸薬という薬を飲んで、魔族へと変異しました。あれは契約というよりかは呪いに近いものです」


 魔丸薬。また怪しいものを。


「わかった。どうすれば使える?」


「私に魔力を下されば、その槍に付与いたしましょう」


 ライトがそういうので、魔力を渡す。うおっ! かなりの魔力が吸い取られる。そして、ロウガが光り輝いていく。


「これで使えるでしょう。さあレイ様!」


「わかった。行くぞガルレイク」


 光の縄から解放されたガルレイクが俺に向かって走り出す。俺もガルレイクに向かい走り出し、迫り来る拳を避ける。弾いて弾いて弾く!


「コロス!!!!」


「うるせえよ! こんなくだらねえ力に頼ってんじゃねえよ! 穿てロウガ!」


 そして俺はガルレイクの両手を弾き返し、がら空きになった胸へとロウガを突き刺す。突き刺さった傷口から広がる様に光が広がっていき、ガルレイクの皮膚にヒビが入っていく。


「ガッ! ガアァアアアアア!」


「うおおおお!」


 俺はより力を入れ深く刺しこむ。そして


「ギャアアアア!」


 ガルレイクの叫び声と共に皮膚は砕け散る。砕けた後に残ったのは、気を失ったのか横たわるガルレイクの姿だった。


「こんなくだらない力に頼らず、自分の力で向かってこい。それなら幾らでも相手してやる」


 俺がそういうと、ガルレイクの首元にあるペンダントが光った様に見えた。その時、ガルレイクの両親にお礼を言われた気がした。

今回の投稿で閑話を合わせて100話になりました!自分の中では100話ぐらいで終わらせる予定だったのですが、書きたいと思って書いていたら、まだ話の3分の1ほどしか進んでいませんでした(笑)


これからも頑張って投稿していくのでよろしくお願いします!


評価等もよろしくお願いします!

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