9.困難は突然やってくる
今日も姉のエアリスと剣術の特訓だ。勝てはしないけどなかなかいい勝負はしているじゃないかと思う事も多々あったりして。
「はぁ!」
エアリスに向かって剣を切りつける俺。それをエアリスは剣で逸らしながら突っ込んでくる。そのまま、剣で突いてくるのを俺はしゃがんで避ける。その瞬間、目の前に綺麗な足が……えっ?そして俺は吹っ飛んだ……
「バカね、レイは。色々な攻撃を考えて避けないと。さっきのだって頭の中にあったらレイだったらちゃんと避けられたわ」
そう言って頭を撫でてくるエアリス。最初の頃は恥ずかしかったが、慣れてしまった。そうしてると、先生が
「まあまあ、エアリスだって、素直に避けている時があったじゃないか。イノシシみたいに突進してきては投げとばしての連続だったし。レイも落ち込む事はないよ。何事も経験だからね。生きている内は次の糧にすれば良いんだよ」
「もう! お母様ったら! その事はレイに言わないでください! 姉弟子としての顔が潰れてしまいます!」
そう言いながら髪の色と同じ様に真っ赤になるエアリス。普段はキリッとしていて、男子より女子にモテる姉だったが、こういう表情を見ているとやっぱり普通の女の子なんだなと思ったりする。最近は体も成長してるし。
「ははは! ありがとうございます、先生。姉上もそんな事ぐらいで先輩としての株は下がりませんよ。とても尊敬しているので!」
そういうとエアリスは先ほど以上に顔を真っ赤にしてしまった。どうしたんだろう?
「そ、そう? レイがそういうなら気にしないでおきましょう。お母様! 先ほどの話は他言無用ですからね!」
「わかった、わかった。そう怒るなエアリス。レイに見られているぞ」
と、意地悪そうな顔でエアリスを見る先生。
「もう! お母様ったら!」
と怒るエアリス。
そんな2人を見ていると、急に街の鐘がカーン、カーンと鳴り出した。
俺とエアリスはこの鐘の意味がわからなかったが、先生だけはとても厳しい顔をしていた。
「まさか! この鐘の音は!」
「先生? この鐘の音は何なのですか?」
「お母様?」
「そうか。2人とも知らなかったのだな。この鐘の音は、大行進の兆しを迎えた時に鳴らす鐘の音だ。多分、物見部隊が魔の大地より出てくる魔物の大軍を見たのだろう」
そう話してると屋敷からジーク、エリス、クロエ。2人で手を繋いでいるフィーリアとクロナがやってきた。
「エイリーン。鐘の音は聞こえたな?」
「ああ、聞こえた。という事はやっぱり……」
「ああ、先ほどの先見部隊からの連絡で数は1万近くいるみたいだ。先頭はゴブリンやウルフ、キャタピラーなどの低レベルな魔物たちだが今回はオーク種が多い。一番後ろにはオークキングを筆頭にオークジェネラル、オークマジシャンが見られている……」
「オークキングだと! Aランクの魔物じゃないか!それにオークジェネラル、オークマジシャンとは……」
この世界の魔物にはランクがあって一番弱いランクでEランク。一番高いランクでSランクになる。
「オークキングなどは俺たちが相手しなければならないだろう。ギルなどもいるがキング相手だと厳しいだろうしな」
ギルというのは領主軍の隊長をしている人だ。今年で30後半になるベテランだ。
ちなみにエイリーンのステータスはこんな感じた。
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エイリーン・ランウォーカー 29歳 女 レベル42
職業:辺境伯夫人(第3夫人)
体力:3460
魔力:2270
筋力:2580
敏捷:2920
物耐:2450
魔耐:1870
称号:灼熱の魔剣士
スキル:剣術レベル 7 火魔法レベル6 生活魔法レベル3 礼儀作法レベル3 身体強化レベル5 気配察知レベル4
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灼熱の魔剣士:火魔法を剣に付与しながら戦う剣士。剣術、火魔法ともにレベル6以上で習得。火魔法を剣に付与中は筋力・敏捷ステータス上昇、魔力消費減少、火魔法威力上昇
と、火魔法に関してはエリスより才能がある。
そう考え事をしていたらジークは
「今から俺と、エリスとエイリーンは門のところまで行って迎撃の準備をしなければならない。エアリスとレイは屋敷に残っていてくれ。クロエも頼む」
「父上! 私も行きますわ! 普通の兵士より役に立ちますわ!」
「ダメだ! エアリスは屋敷で待機だ」
「なぜですの!?」
「エアリスは魔物とはいえ生き物を殺した事はあるのか? 俺の聞いた限りでは無いようだが?」
「そ、それはまだですが……」
「このような争いでは、1分1秒躊躇するだけで沢山の被害が出る。俺はお前に死んでほしくないし、そうなって後悔もして欲しくない。エアリス、お前は才能はあるが、兵士と比べて実戦経験が少な過ぎる。わかったな?」
「はい、わかりました、父上……」
こんな落ち込んだ姉上は初めて見たな。そう考えていると父が俺を見てきた。
「レイ、万が一の事があればみんなを連れて逃げるんだ。これは代々領主が自分の子供に言っていることだから難しく考えなくていい。俺たちも負けるつもりは更々ないが、万が一ということもある。そうなったときの場合の保険みたいなものだ。わかったな?」
「わかりました、父上」
そういってジークはエリスとエイリーンを伴い魔の大地のある門の方へ向かった。
俺は不安に顔を曇らせている、フィーリアとクロナの手を握ってあげながら父たちの背中を見送るのだった。
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「召喚された勇者に婚約者を取られた男は、魔王として彼らを見返す!」